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香ばしいソースの香りが広がった。
熱した鉄板にはやや不恰好なお好み焼きが並んでいる。
それぞれの協議の結果、鉄板焼き屋でランチと決まった。
「チャダ、こういうの、はじめてー!」
俺の腕に隠れる様にして湯気が踊るお好み焼きを眺めていた。
「一人暮らしだとホットプレートって使わなそうだから揃えなかったんだよな。」
「人数いる時はこういうのって良いよな。僕、買おっかな。」
「ソレ、何処置くの?」
「太郎んち。」
「ダメです。」
「たこ焼きプレートが付いてるのだったらたこパ出来るよ!」
「たださえ最近みんなの荷物が増えて、俺の部屋が狭くなってきてるんだよ。」
「焼肉プレート付いてるヤツなら…」
「ダメです。」
「たろう、やきにく、できないの?」
「焼肉はカーテンや家具に臭いがつくからね。ウチでは余りやりたく無いんだよね。」
焼き上がったお好み焼きを大雅と自分の皿へと切り分ける。
もう少し大雅と雷華の私物が減ったらホットプレートを導入しても良いかなぁとは思っている。焼肉じゃなくても複数人で食卓囲むなら便利だからだ。
「太郎はいつ帰る?」
「今日親父達が帰ってくるから、明日には帰る。母さんが居れば家の事はやってくれるし。俺が居る必要が無い。」
「じゃあ僕もついてって私物片付けよ。」
大雅、この後ホットプレート買うな。多分。
どうでもいい話を交わしながら大雅が豚玉と焼きそばを追加する。
「追加したけど、食べ切れる?」
「チャダもいるしイケるでしょ。それとも誰か呼ぶ?」
誰かと言われましても。たださえ友人が少ない俺には日曜の昼間という中途半端な時間に呼べる人間は居ない。
「太郎、賭けようぜ。」
スマートフォンを取り出して大雅は怪しい笑顔を見せた。
「今から雷華を呼び出すから、どれくらいで来るか賭けようぜ。」
また凄い事を言い出したな。大雅。
「らいか、くるのー?」
「今から昼飯誘うから、どれくらいで来るのか予想すんの。」
予定が無ければチャダが居るから間違い無く来るだろう。
雷華が住む所から此処まで電車を使って早くても20分程か。
出掛けていれば状況にもよるけど20分に+αされるか、もしくは来ない選択肢もあるよな。
「僕は在宅中でメール見て飛んでくる。30分って所かな。海老焼き賭けるわ。」
「俺は買物に出掛けててやや時間掛かる。1時間で、そうだな。たこせん賭ける。」
「えーと。チャダはね。」
君も加わるのかい。意味分かってるかな。
「わりとすぐくる。」
「よーし。出揃ったね。メール送るから今からスタートな。」
ポンとスマートフォン画面を押し、「送信しました」のメッセージが出現した。
追加でやってきた豚玉を合わせながら鉄板に広げて焼き始める。大雅がスマートフォンを見つつ
「あ。雷華これから来るって。そうこなきゃ!」
雷華のこのレスポンスの速さは自宅で暇していたかもな。
「いいにおいだねぇ。」
口の回りがソースだらけで新たに焼かれてる豚玉を見てるチャダ。うん。そうだね。君はまだイケるよね。
紙ナプキンでチャダの口を拭ってやると
「あ!らいかだ!」
その一声で俺と大雅はチャダが向いた方を見遣ると、確かに雷華本人が立っていた。
「え。気持ち悪。」
偉いどストレートな大雅の発言だが、まだ10分たってすら無いよ?早すぎるにも程がある。
「随分と早かったね。近くに来てたんだ?」
「ああ。この商店街に用があって来ていたから。そこの雑貨屋オリジナル商品の新作を買いに。」
あったね。雷華お気に入りの雑貨屋。
女子が好きそうな雑貨屋で、女の子にまみれて178センチの男性が買物する姿は浮いて見えたっけね。思い出したわ。
と、言う事は、チャダの予想が的中って事か。
「チャダ、アイスたべたいー!」
そして賭け事の意味も理解していたのね。
そのまま新たに明太もちチーズ焼きとソフトクリームが追加される事になった。
商店街裏道にある「ミニロップ」と言う雑貨屋はスタッフ制作のオリジナル商品が人気。
雷華が高校時代に太郎宅へ行く時に発見し、今でも時々通う。ミニロップでは(珍しさもあって)雷華は有名なお客様である。




