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三久はアイドルになりたいと中学時代迄は躍起になってた。
大なり小なり様々なオーディションを受けて、結構良い所までは行くのだが結果、いずれも掴み取る事が出来なかった。
高校進学すると色々な事がハッキリと見えてきたか、アイドルについて口にする事は減った気もする。まぁ俺も実家にいないから実の所は分からないんだけどさ。
「アイドル、もう良いのか?」
「流石にもう限界だよ〜。私より若い子がバンバン出てるし、そりゃあ憧れだけどアイドルも大変なんだよ?賞味期限がある職業なんだよ?お兄ちゃん興味無いから知らないでしょ?」
そうか。
何かを諦めるって辛い事なんだ。少し寂しそうな目の三久を見るとその辛さが此方まで伝わって来る。
まだ自分がやりたい事を選択出来るって幸せなんだな。俺は幸せな立場に居るんだな。
「話は聞かせて貰ったわ。」
ソファーで寝落ちしていた仁衣那ちゃんが涎を拭きながら起き上がってきた。
「あーしに相談してくれれば事務所に口聞きしてやんのに。」
「私は自分の力で勝ち取りたいの!みんなのコネを使ったって実力が共わなかったらそれまでだよ?みんなに悪いもん。」
「言ってる事は分かるけどよ、使える物は使わないと。」
「パパやママや仁衣那ちゃんはそんなの無くても自分達のやりたい事が出来てるじゃない!私が出来ないのが悔しいの!もうこの話は終わり!」
プイッとそっぽを向いたまま三久は進路用紙を通学鞄に突っ込んだ。三久は頑固だからな。暫く機嫌が悪いだろうな。
ぐううううぅ…
やや険悪な雰囲気の中、かなりデカい腹の虫が鳴り響いた。
「誰?お兄ちゃん?」
「お、太郎、腹減った?」
俺であるが俺じゃない。チャダだ。ポケットの定位置を覗くと此方も涎を拭きながら見上げていた。
片付け中も時々様子を見ていたけど、一緒にはいたけど会話を交わしたのは昼飯が最後だ。構って欲しい感で見上げている。
「俺、買物行って来るわ。夕飯何がいい?」
姉妹に献立を振ると「ハンバーグ」と「刺身」と共通点かすりもしないメニューを言い渡されたが買物カゴと一美ちゃんから食費を拝借して慌てて外へと出た。
「放置して悪かったな。」
「おなかがなっちやった…とめれなかったの…」
それ以前に腹の虫って止めれる物なの?俺には出来ないよ?
「みんなが居るからかまってやれなくて悪いね。」
「ううん。たろうんち、みんな、なかよしだね。」
「そうか?かなり自由勝手に全員生きてるけど?」
「たろうのはなしだと、もっとバチバチだとおもってた!」
一番の元凶である一美ちゃんが伏せてるからまあまあ普通に見えるだけなんだけどな。まぁ良いか。
近所の商店街までゆっくり歩いて行く。
いつの間にか流れる風は冷たさの中でも暖かさを感じる。
春が近いのだ。
人の事を偉そうに言えたものじゃ無いが、俺も三久も思い描いた場所に辿り着けたら良いな。
なんて、随分甘い事言ってんな。俺。
「所でチャダは何食べたい?」
「ショウロンポウ」
何故全員ジャンルが違うおかずを出して来るかな。
「小籠包は出来合いでいい?」
「もんだいない。」
夕焼けの長い影を見ながら商店街へと向かった。
三久の話も書きたいなぁ。




