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「とりあえず分かった事は、熱を出せば太郎は戻ってくるのね。」
見た事が無い程の真剣な眼差しで一美ちゃんが呟いた。
「次は無いからな。不味いと思ったら動ける内に病院掛かって下さいよ。大人なんだから。」
「会わない内に随分辛辣な対応なのね。」
「当たり前の事を言ったまでです。」
「風邪ぶり返したら、太郎に冷たくされたから冷えたせいですって先生に言っておくわね。」
「……………恥だからやめて?」
翌朝。一美ちゃんの様子を見に部屋に向かったら、ベッドの中で何事も無かったかの様にスマートフォンを操る姿があった。顔色も戻っている。ひとまず安心した途端にこの発言だ。
「太郎は暫く居るの?」
「父さん達が帰って来るまでは居るよ。家片付けしたいし。」
一美ちゃんが心配ってのもある。日中は三久も学校へ行ってしまうので数日止まる事にした。
暦の上でも3月になり明後日には両親が帰国してくる。やるならこのタイミングしか無いだろう。
「一美ちゃんは先生に言われた通りに今日は安静。やって良い事は生徒さんに今日は休業するって連絡だけ。後は寝てる。」
「TVやネットもダメ?」
「適度になら。」
「太郎、色々とありがとうね。」
「……………早く治して。それと家ん中、片付けや掃除すっから煩くても少しは我慢してよ。」
「はぁい。」
姉の返事を確認して部屋を後にした。
キッチンに向かうと冷蔵庫前でオレンジジュースを取り出す三久と会った。「おはよー」と簡単に挨拶を交わす。
「話し声が聞こえたけど、一美ちゃんどうだった?」
「まぁ大丈夫…?かな?」
「何故、疑問系?」
「ありがとうって言われた。実はまだ熱があるかも。」
「まだ熱あるね。これから雪降るな。」
第三者から聞いたら「大袈裟だ」と揶揄されそうなんだが、一美ちゃんは家族には謝辞をほぼ使わない。人としてどうなんだ?と思えるレベルで口にしない。基本的に自分が正しいと言うやや困った思考の持ち主である故の行動なんだろう。
ただピアノ教室が繁盛しているって事は外の世界ではそれ相当に上手くやれてるのだろう。まぁ家の中くらいなら家族だし、別にそれでも構わないと俺は思ってる。
今朝もある食材で朝食を作り三久に食べさせてから送り出す。その様子を確認すると今日もポケットからスッとチャダが出てきた。
「もう、だいじょうぶ?」
「ああ。いいよ。俺達も朝飯食うか。」
「きょうは、ハムエッグだね。」
わくわくした表情で並ぶお皿の前を行ったり来たりしている。
「チャダ食べたら一旦部屋に戻るよ。着の身着の儘で来たから服の替えとかスマホの充電器とかが欲しい。」
「おっけい!」
そう言いながら器用にティースプーンで卵の黄身を崩しては食べている。食事と片付けを済ませて一美ちゃんに一時帰宅をする事を伝える。少しごねられたが1時間くらいで戻るのを約束すると解放して貰えた。
さて。今日で粗方片付けを終わらせたいな。そんな事を考えながら部屋へと戻った。
天上天下唯我独尊な一美ちゃん。素です。




