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side 2-1

大雅side

「これは大雅の物かしら?」


柄にも無くビクッとしてしまう。同時に菓子を食べるチャダも硬化したかの様に動きが止まった。

妊婦健診から帰宅してきた義姉が居間へと入って来た。

「ううん。太郎からの預かり物。」

「あら、良く見ると可愛いオブジェね。私もこんな感じの飾りを子供部屋に飾りたいわ。」

「じゃあ、太郎から何処で買って来たか聞いてみるね。」

「本当?ありがとう。」と姉は笑っていた。

既に正期産を迎え大きなお腹を抱える姉は妊婦特有の腰痛や逆流性胃炎に悩まされる毎日で大変そうだった。

人生初めて間近で母子の成長経過を見たけれど、ただただ人の体は凄いと思う毎日だった。

最近動くのも大変になってきた姉とは、こうやって他愛の無い話をする時間が多くなってきた。

よいしょと姉も正面のソファーに腰を掛ける。

「今朝から痛みがあるって言ってたけど、健診どうだった?」

「前駆陣痛だって。この痛みの間隔が短くなってきたら本陣痛になるかもって。いよいよかもしれないわ。」

「そうか。いよいよだね。」

「もう少し赤ちゃんの玩具を作ったり、部屋の片付けをしたかったな。でもお腹は重いし腰は痛いしで。」

3キロ程の赤子と羊水や胎盤を抱えてるんだ。辛くて当然だと思うが、旧俺の部屋は姉の手により可愛らしい部屋に変わってるので相当頑張ったに違いない。

「ああ、そう。このオブジェ…なんか…あれ!町中にあるお地蔵さんみたいな雰囲気を感じるわ。見守ってくれる優しい感じ。」

突然の姉の発言にマジマジと見る。確かに言われてみると、チャダってお地蔵さんに近いな。笑った顔なんか特にだ。

「きっとオブジェじゃ無くて、そういった神仏かも知れないわね。よし!拝んでおこうっと!」

この神仏、さっきまで滅茶苦茶ヨック◯ックのクッキー食べてたけどね。まぁ姉が言うならそれでも良いか。

南無南無と両手を合わせる姉を見てチャダを見る。

チャダ、顔が少し硬直しているな。我慢の限界かもしれない。そろそろこの場所から離脱してやらないといけないかもしれないな。

甲高く俺の携帯電話が鳴り響く。着信はベトナムの友人からだったので急いで出る。

そのまま席を外し廊下に出て差し当たりの無い会話と来日時に行こうとしている場所を聞きたいと話す事、数分。

電話を切った時に気が付いた。しまった。チャダ、姉さんと2人きりにしてしまった。

急いでドアノブに手を掛けると姉の声が聞こえてきた。


「………やっぱり不安ね。もう産まれるまで来てるんだけど、これからの事とか…子供だけじゃなくて旦那とか義両親とか。」

本当はいけないと思いつつも耳を澄ました。

「みんなが良くしてくれる分、プレッシャーにも感じるの。自分勝手で至極贅沢な思い込みって言われそうだけど、期待に添えた育児が出来るのか、旦那を支えてあげれるかとか。先の事なんか分からないのに考えてしまうの。これがマタニティブルーってやつかしら?」

隙間程度に扉を開けるとチャダに向けて姉は呟いていた。

「大雅はね、春休みだからって時間があれば色々してくれるのよ。本当に助かったわ。あの子は結構大胆な所がある子だけど良い弟よ。………いたたた…」

前屈みになった姉に駆け寄る。「まだ大丈夫」と言うけど、その表情は辛そうだった。

「あら、電話終わったの?」

「ベトナムの友達。秋に日本に来る事が決まったからって、連絡だったんだ。」

「あら、楽しみね。」

そんな会話を交わしながら、さりげなくチャダを掴んで羽織ってるシャツのポケットに回収した。

下に視線をやると、安堵した表情で此方を見上げている。本当ごめん、チャダ。

「……………ねぇ大雅。」

やや顔色が悪いまま姉がぽつりと続けて呟いた。

「あの………多分、破水したかも。」

蕪木家がバタバタしている間、此方もバタバタな…

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