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アンプから低く弦楽器達の音が響く。
いつもこのチューニング中に響く音が好きだ。
点検兼合宿なので流石に掃除して観光して飯食って終わりとはいかないし、次の週末は久しぶりのイベントだ。準備は怠りたくない。
別荘の一室に楽器を持ち込み、夕飯前に一度音を合わせる事にした。
大雅の親父さんも昔は音楽をやっていたそうで、別荘を建てた時に小さな防音室を趣味で作ったそうだ。
結局親父さんは余り使う事が無く、学生時代のお兄さん達が使い今は俺達が活用している。
「此処と那須の別荘にも防音室があってさ、母さんは防音室よりサウナ室が作りたかったって未だに文句言ってるよ。」
そんな事を大雅が話してたっけ。別荘を建てるってそんなもんなのかな??
「まぁ、来週のイベントだからこれで最終チェックね。そうは言ってもイベント決まってからマメに練習しているから僕的には不安材料はあんま無いんだけど。」
ギターを出しながら大雅が話し出す。そういえばこのバンドのリーダーって大雅なんだよね。突然旅人始めたりするから俺達以外の人達は忘れがちなんだけど。
「とりあえず練習もそうだけど、選曲を見直すが今日のやる事かな。バレンタイン受けしそうな。」
余談だけど、昨年大雅が不在時は雷華がリーダー代理を務めていた。通常でも相手との窓口を担ってる所為で今でも大半の人が雷華がリーダーと思われてる。
そんな雷華がピックアップしてきた数曲を意見を出し合いながら4人で選曲をするのが俺達の何時ものやり方。
曲と曲を演じて繋がりや纏まりを聴いてアレンジしたりして、今回みたいに冠が付くイベントだった場合は内容に添った物にしたいので自分達の楽曲以外にもコピー曲を入れたりもする。
俺のギターを繋げてるアンプの上でチャダがウキウキと俺達の楽曲に乗って踊り出してる。
最近気付いたのだが、チャダが音楽で踊り出したり「すき」と指定してきた曲は大衆受けが非常に良いのだ。
昔のヒット曲から俺達の楽曲も。ライブ定番曲はまるで知ってるかの様に練習中でも飛び跳ねていた。
何かを感じているのだろうか?チャダの様子も見ながら3曲目迄はスムーズに決まった。
「そういや大雅さぁ。」
バスドラムを軽く踏みながら尚典が思い出した様に声を上げる。
「どした。」
「大雅って彼女いたよねぇ。最近ソッチ方向で良い感じの話ってない?」
中々決まらない4曲目のヒントにしたくて尚典が投げかけたんだろうな。大雅は天井を見上げて少し考えてる様子を見せる。
「皆んなに聞きたかったんだけどさぁ。」
発言と共に大雅は俺達を見渡して
「カンボジアに居る時に彼女からSNS系統、全部ブロックされたんだけどさ。やっぱこれはフラれたって事?」
言わずもがな、間違いなくそうだと俺達3人とチャダまで深く頷いた。
先ず彼女、どれだけ放置していたんだよ。大雅の事だから何も言わずかフワッとした理由だけ言ってそのままに違いない。最近の彼女がどんな子か知らないけど気の毒な話だ。
そんな話のおかげか4曲目はラブソングと言うよりか応援メッセージが含まれた楽曲に選ばれた。
「このおんがく、とてもいいねえ!」
チャダからのお墨付きも戴けたので選曲はこれで間違いは無いであろう。ここで一息入れる事にした。
大雅は来る者は拒まず去る者も追わずタイプ。
実は本人余り気にしてない。




