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第97話 備えあれば患いなし

どうも、ヌマサンです!

今回はガレスを迎えた帝国軍がライオギ平野へ進出します!

はたして、どのような戦いとなるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第97話「備えあれば患いなし」をお楽しみください!

「ガレス様、一体どのような理由わけでこちらまで参られたのですか?」


「フッ、そりゃあ、ロベルティ王国の奴らが騒ぎ出したと聞きつけてな。皇帝の勅命で軍勢を率いて来たってわけだ。『この際、殲滅してしまえ』とも言っていたけどな」


「殲滅ですか……。それもそうですね。ガレス様の軍勢と併せれば、8万を超える大軍勢。ライオギ平野を黒く染めてしまうとしましょう」


「そうだな、それがいい」


 城門前で大いに笑うカルロッタとガレス。カルロッタは先ほど決めた作戦をガレスにも伝え、ガレスもカルロッタ本隊と共にライオギ平野に布陣する運びとなった。


 かくて、6万5千の大軍勢はライオギ平野に進出。言葉通り、山野を埋め尽くすかのような布陣でもって、マルグリットたちロベルティ王国軍と対峙した。


「マルグリット様!物見致しましたところ、敵の数およそ6万5千!」


「ご苦労だったねぇ。ゆっくり休みな」


「ハッ!」


 マルグリットは物見からの報告に、落ち着かない感情を抱いていた。敵は6万5千。味方はその半数、3万にも満たない。今、戦端が開かれれば、万に一つも勝ち目はない。


「はてさて、どうしたもんかねぇ……」


 頭を悩ませる彼女だが、最も厄介なのは敵陣営に皇帝の叔父であるガレスの旗が翻っていること。皇帝の親族が大軍を率いて参陣していることで、敵の士気が明らかに高まっている。


 士気の高いうえに、こちらの倍以上の数の敵を相手にするなど無謀この上ない。もはや、一刻も早く援軍が到着することを願うのみであった。


「申し上げます!ローラン様が8千の兵を率い、只今着陣なされました!」


 8千。この数を聞き、マルグリットは少しだけ、ほんの少しだけであるが、心休まる思いがした。これで、何とか敵の半数以上の数になったのだから。


「マルグリット殿、道中砦の方を見てきたが、完成間近といったところか」


「これはこれはローラン将軍。援軍、感謝するよ……!砦の方は、数日中には完成する予定さねぇ」


 陣頭で軽く言葉をかわし、本陣へと移動。本陣から敵の陣容を見渡してみると、壮観としか言いようもない光景が視界に飛び込んでくる。ローランも感嘆の息を漏らした次の瞬間には、ケラケラと笑っていた。


「ローラン将軍、一体何を笑っているのさ」


「いや、帝国も必死だなと思ってな!これだけの数をここで仕留められれば、後のことはたなごころにありってところだろう?」


 一体、目の前の緑髪の男は何をもって自信ありげに振る舞えるのか、マルグリットには皆目見当もつかなかった。


「マルグリット殿、ここに布陣している主な敵将は分かるか?」


「敵将かい?それなら分かるよ。西から順に、ガレス・フレーベル、カルロッタ・ダルトワ――それで、東の海岸付近にはジュリア・リーシェってところだね。それがどうかしたのかい?」


「いや、軍師レティシアから確認するように言われていてな。『ライオギ平野に布陣する将の中で、この紙に書いてある将軍の名がなければ、トラヴィス将軍に連絡して』ってさ」


「そうだったのかい。で、誰の名前がなかったんだい?」


 ローランが手にした紙をのぞき込んでみれば、2名の武将の名が消されずに残っていた。その2名とは、ローレンス・オニールとミルカ・オルトラーニ。


 それからはローランは言いつけ通り、早馬を出して2名の名が消されずに残った紙をトラヴィスの元へと送った。


「それで、聞きたかったんだけど、トラヴィス将軍はどこにいるんだい?こっちには来てないんだろ?」


「ああ、兄者は……あっちだ」


 ローランが親指を向けたのは西。それも、ハウズディナの丘方向を指していた。すなわち、トラヴィスはハウズディナの丘方面にいるということ。


「ヘキラトゥス山地を越えるまでは兄者と一緒だったんだ。それで、オレはこっちに。兄者は西へって具合に分かれたんだよ」


 さらに聞いてみれば、トラヴィス隊はおよそ1万6千。具体的な作戦内容まではローランも話さなかったが、口ぶりからしてすでに何らかの作戦行動が始まっていることを悟った。


「なら、アタシらはここで敵本隊の眼を釘付けにしておく必要があるってわけだね」


「ああ。そういうことだ!でもって、もう始めてる」


 ローランが次に指差した方。そこでは兵士たちが最前線で酒盛りをし、口々に帝国側の悪口を言い放っていた。それに耐えかねた帝国兵から矢が放たれては退き、しばらくすれば元の位置に戻って罵詈雑言を始める。


 実に馬鹿馬鹿しいやり口ではあるが、多少なりとも時間稼ぎにはなりそうであった。


 そうして数日が経過した頃。後方からフェルネ砦の改修が終わったと報告が。これを受け、マルグリットとローランが示し合わせた上で、ルービン率いるフォーセット領の兵6千3百を呼び寄せ、残るアルベルト隊6千6百にフェルネ砦の守備を任せた。


「ルービン将軍。アンタはジュリア・リーシェと戦って勝てる自信はあるかい?」


「ジュリア・リーシェ……ですか?あのユルゲンの娘の?」


 マルグリットは頷き、ルービンの言葉を無言のうちに肯定しながら、さらに言葉を続ける。ルービンは挑戦されているような心地がし、すぐに言い返した。『小娘一人斬れぬなら、将軍は名乗れない』と。


「よし、だったら6千3百の兵でジュリアの陣へ夜襲をかけてもらいたいのさ」


「任せておいてくれ。夜襲ついでにジュリアの首も引っ提げて帰ってくる」


 夜襲のオマケにジュリアの首を獲ると宣言。彼は栗色の髪を揺らして栗毛の馬にまたがると、翡翠色の大剣を担いで、その日の黄昏頃から葬列かと思うほど粛々と本営を離れ、東の街道沿いに布陣するジュリア隊へと向かっていった。


「マルグリット殿、上手くいったな」


「後はローラン殿しだいといったところだがねぇ?」


「ハハハッ、確かにな!さてと、オレもぼちぼち言ってくるとするか!」


 ポニーテールにまとめた緑髪をゆらゆらと揺らしながら、笑い声と共に彼も何かの支度に取り掛かるべく、マルグリットの陣を出た。ルービン隊がすべて出立した頃、後をつけるようにローランは4千の兵を率いて東へ移動を開始。


 後をつけられているとは露知らず、ルービンはジュリア隊の真北に到着。部下に火矢を用意させ、一斉に陣屋へ放ったものである。


 対して、ジュリアも陣屋で子供の頃から大好きな御伽話を読んでいると、外から異様な音と匂いが漂ってくる。これに驚いて薄氷色のサイドテールを小刻みに揺らしながら天幕から出てみれば、四方は火の海と化していた。


「これはどういうことですか!?兵士の火の不始末ですか!?」


「いえ、違います!て、敵襲です!北から!」


 辺りを走り回っている兵士から事情を聞き、ジュリアは慌てず消火にあたる部隊と敵を迎撃する部隊を編成。すぐさまそれぞれに対処にあたらせる。


 しかし、ジュリアの指揮で立て直したのはあくまでも南側の部隊のみ。火の勢いも比較的マシな方なのである。ならば、北はといえば。突然の出火、重なる敵襲。


 慌てて防戦に努めるも、何もかもが手遅れ。兵は四方へ離散する者が半数近く。抵抗した者はルービン隊により仕留められていく。


 だが、ジュリアが髪の色と同じ薄氷色の武骨な大剣を引っ提げて陣頭へやってくると、戦況はたちまち伯仲の様相をを呈する。


 ジュリアが率いて来た数はややルービンより少なかったが、何より戦で大事な勢いがあった。そこへ、四方八方へ逃げていた兵士たちが戻り始めることで、ルービン隊は押し返され、退散を余儀なくされるのであった。

第97話「備えあれば患いなし」はいかがでしたでしょうか?

今回はライオギ平野に帝国軍が集結。

さらに、ローランの口からすでにロベルティ王国軍では作戦が始まっていることも判明していました……!

はたして、どのような作戦が実行されているのか、楽しみにしていてもらえればと思います!

――次回「善は急げ」

更新は3日後、5/7(日)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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