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第98話 善は急げ

どうも、ヌマサンです!

今回はルービン隊がジュリア隊を奇襲したところから始まります!

一体、どんな合戦模様となるか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

それでは、第98話「善は急げ」をお楽しみください!

「やむを得ん!一旦退くぞ!」


 馬上から采配の代わりに大剣を振るって指揮を執るルービン。さすがに形勢不利を悟り、戦場を離脱し始める。そんな彼らをやられっぱなしで見逃すほど帝国兵は甘くない。


「よし、行くぞ!やられっぱなしで終われるか!」


「おおっ!王国の奴らを逃がすな!追え!追え!」


 ジュリアの弟、ロベルトを先頭に千騎ほどが一塊になってルービン隊の追撃を開始する。そのことが本陣に伝わると。


「えっ、ロベルトが!?」


「はい、千ほどの兵と共に敵を猛追しております!」


「あのバカ、初陣で死ぬ気ですか!?」


 血気盛んな弟の無謀な行動を聞き、姉のジュリアは呆れたといった風にため息を漏らす。しかし、弟を見殺しにするわけにもいかない。彼女もまた、全軍を挙げてロベルトの後を追い始めるのであった。


「ルービン将軍、敵は小勢です!撃退してから退いた方がよいのでは!」


「いや、気にするな!あの程度の小勢、敵の一角に過ぎん!交戦している間に、残りの敵も追いついてくることだろう」


「なるほど……。もしや、敵はあえて小勢で追いかけて来ていて、我々が引き返して戦っている間に追いついてしまおうという腹ですか」


「恐らくな。敵の術中に陥って兵たちを無駄死にさせるわけにはいかん!ここは大人しく従ってくれ」


 冷静なルービンの言葉に、部下の武将も納得し、大人しく西北へ撤退するべく部隊をまとめるのに尽力。そうしてジュリアの陣とマルグリットのいる本営の中間地点辺りに差し掛かった時、南北の野から鬨の声が上がった。


「何だ、敵かっ!?」


 慌てて辺りを見回すルービンに、聞き慣れた大声が耳へと飛び込んできた。


「ルービン将軍、後は任せろ!釣れた敵はこちらで始末しておく!」


「おお、ローラン殿の部隊だったか……!ならば、お言葉に甘えて撤退させてもらおう。全軍、速度を上げろ!本営まで駆け抜けるのだ!」


 南北から響いた時の声は敵の伏兵などではなく、味方のローラン隊のものだと分かるなり、ルービンは兵たちに進軍速度を上げるよう指示。一気にマルグリットのいる本営へとひた走る。


「ああん?敵か?」


「ロベルト将軍、どうやら敵の伏兵のようです!」


「チッ、さすがにこれ以上の追撃は無理か……」


 南北から降り注ぐ矢の雨に、ロベルトは追撃を断念。初陣での黒星を喫し、半数近い兵を失いながらも姉の本隊と合流することができたのだった。


 対して、ローランとしては思ったより追ってきた敵の数が少なかっただけでなく、思っていたよりも敵が早くに撤退を選択したことで思うように戦果が上がらなかった。


 そのことを残念に思いつつも、被害が大きくならないうちに撤退する辺りはローランも戦況を見極める確かな眼を持っていた。


 こうしてジュリア隊との間で決戦という事態にまでは発展せず、決戦とも小競り合いとも呼べない微妙な規模の戦いが二度起こっただけで、その晩の戦は終いと相成った。


「ローラン殿、今回は大した戦果が上がらなかったみたいだねぇ」


「……マルグリット殿か。今回は鬨の声を上げるのが早すぎたのが致命的だったな。せめて、ルービン隊の最後尾が通り過ぎるまで待てば良かったぜ」


「それに、オレにも伏兵がいることを事前に知らせてくれなかったのも悪い点だと思うぞ」


「だな、知らせたら嘘くさい撤退になると思って、あえて言わなかったんだが、今回は裏目に出ちまったってところか。悪かったな、次からはちゃんと伝えるようにする」


 本営ではマルグリット、ローラン、ルービンの3名で今回の戦の反省会のような事をしていたが、明らかにローラン側の不手際なのは誰もが認めるところであった。


 対する帝国軍の陣営では。ジュリア隊は一度、東の街道沿いの守備を解き、カルロッタのいる本隊と合流。そこで今回の戦の顛末を語った。


「なるほど。敵からの夜襲を受けたのね」


「はい。こちらも敵本営から距離があることから、油断してしまったことが一番の失態だと自覚しています」


「それについては以後、気を付けてくれればいいわ。私も全軍に、改めて敵襲には警戒するように通達しておくから」


 カルロッタはジュリアからの報告を聞きながら書き上げた軍令には、今言った内容が記されており、側近の者に各陣営で掲示するように指示を出していた。その手際の良さにジュリアは『さすがは名将カルロッタ様だ』と感嘆していた。


「それと、カルロッタ様。愚弟ロベルトの不始末についても、この場でお詫びを……」


「そうね。次負けた時にまとめて罰を受けてもらうわ。彼もこれに懲りて、むやみやたらに敵を追うことはしないでしょう」


「そうだと良いんですけど……」


「でも、損害が少ないうちに撤退を判断したのは良かったと思うわよ。悪い点と良い点、どちらも伝えておいてちょうだい」


 カルロッタはロベルトの追撃ついては一旦不問とする寛大な対応をみせた。何より、ロベルトは初陣なのだから、これから負けない戦とはどういうものかを学んでいけばいいと考えていた。


 ――後進を育てるのも自分の仕事。


 そう、総大将であるカルロッタは考えていた。自分も早31歳。5歳になる息子、エルネストを見ていて人を育てることの難しさは思い知らされている。しかし、上に立つ者が下の者を育てなくなれば、国は滅びの道へと向かってしまう。


 そうした思いから、ここ2,3年はカルロッタも配下の将兵の育成には力を入れていた。しかし、一朝一夕で成果が上がるわけではないため、まだまだ時が必要なのである。


 ともかく、ロベルトを始め、次代の帝国を担う者たちには自分たち以上の者たちでなければ、帝国を発展させてはいけないし、自分も身を退くことができないと本気で思っているのだ。


「……後進を育てるのも一苦労ですが、焦眉の急は眼前に迫りつつある敵の方ですか」


 大軍を率いる将として、人の上に立つ者として頭を悩ませるカルロッタの元へ、伝令兵が駆け込んでくる。


「何事ですか?」


「は、ハハッ!先ほど、敵の援軍2万3千が到着!敵の士気はうなぎ上り、その鬨の声に我が軍の兵らは動揺いたしております……!」


「それは由々しき大事。何としても鼓舞する必要がありそうね……。それで、援軍にやって来た大将は?」


「援軍を率いて来たのはナターシャ・ランドレス!他には、モレーノ・カスタルド、リカルド・セミュラ、レティシア・クローチェなどの将軍旗が翻っておりました!」


 敵軍の総大将であるナターシャ・ランドレスが自ら大軍を率いてやって来た。そのことに、カルロッタは強い警戒感を露わにした。他にも、先の戦でヌティス城下まで迫ったリカルドだけでなく、軍師であるレティシアも来ている。


 ――そうともなれば、いよいよ敵も本腰を入れてきたのは明らか。


「そういえば、ミルカとローレンスの方は上手くやっているのかしら?まったく連絡がないのが嫌な感じなのだけれど……」


 ハウズディナの丘頂上に築かれた砦を攻め落とすべく出陣したミルカとローレンスの方から数日にわたり報せがない。便りの無いのは良い便りとは言うが、さすがに心配せぬのは無理な話。


「……ここは無事だと信じて、私にできることをするしかないわね。ジュリアには、8千の兵を率いて東の街道の往来をもう一度封鎖するように伝えて!」


 かくして、カルロッタはナターシャの到着と同時に、決戦となることを想定して準備に取り掛かるのであった。

第98話「善は急げ」はいかがでしたでしょうか?

今回は小競り合いだけで、決戦には至らず。

とはいえ、いよいよ決戦が迫ってきているという空気感が伝わっていれば幸いです。

ともあれ、次回ではどのような戦いが繰り広げられるのか、楽しみにしていてもらえると嬉しいです!

――次回「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ」

更新は3日後、5/10(水)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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