第99話 千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ
どうも、ヌマサンです!
今回は決戦前のロベルティ王国側の軍議になります。
はたして、どのような作戦でロベルティ王国側は動くつもりなのか……!
それでは、第99話「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ」をお楽しみください!
「ナターシャ、やっとの到着かい。ずいぶんと焦らしてくれるねぇ」
「フフッ、マルグリット。そういやみったらしく言うのはよしてください。こうして大軍を率いて来たのですから」
ナターシャ率いる2万3千がマルグリットたち先発隊とライオギ平野にて合流。これにより、兵たちの士気はうなぎ上り。そこへ――
「まっ、マリアナ様がここに!?」
「マルグリット殿、マリアナ様のご到着です。ぼさっとしていないで、出迎えに行きますよ」
驚くマルグリットの手を引き、ナターシャははるばるヘキラトゥス山地を越えて援軍に駆けつけた女王マリアナを出迎えた。
「マリアナ様、この度はご足労いただきまして――」
「ナターシャ。堅苦しい挨拶は抜きにしましょう?敵が眼前にいる以上、軍議を開く方が優先でしょうから」
マリアナの一言で、本営では女王マリアナ立会いの下で軍議が開催されることとなり、諸将らは一堂に会した。さらに、明日の軍事行動ということで、準備を急ぐ必要もある中で大至急行われることに。
「それじゃあ、レティシア。明日の作戦をみんなに伝えてくれますか?」
「うん、分かったよ」
すでに作戦の大筋はナターシャとレティシアとで話し合い、定まっている。あとは、諸将にも伝えた上で、意見を交換しながら細かい調整を進めるのみ。
そして、その作戦は2方面で行われる。一にハウズディナの丘南部。一にここ、ライオギ平野である。
ハウズディナの丘にはヴェルナーにより、頂上に砦が築かれている。さらには、ヘキラトゥス山地からハウズディナの丘までの道はエルマーにより整備を完了させたところ。
そうして戦の準備を終えたヴェルナーとエルマーは6千5百の兵と共にハウズディナ砦に籠城。敵が押し寄せるのを待ち構えていた。
ヴェルナーたちの援軍として向かうトラヴィスには、レティシアから作戦が伝えられている。曰く、『ハウズディナの丘南部に広がる草原にて左右から挟撃し敵を撃滅すべし』と。
ハウズディナの丘の南に広がる草原。ここは生えている草の背丈が大人一人分は隠せてしまうほどに高いため、騎兵を下馬させてしまえば敵からはまったく姿が見えない。
すなわち、トラヴィス隊1万3千は軍勢を2つに割り、左右から矢を射かけて敵が乱れたところを突撃。シンプルな作戦だが、これもまたタイミングが重要になってくる。
よって、トラヴィスの歴戦の猛者としての経験を遺憾なく発揮してもらうほかない。ともあれ、成功すれば寄せ手の敵は壊滅的な打撃を受けることは間違いなかった。
残るはライオギ平野の方である。こちらはレティシアのもつ霊魔紋の出番であった。天候を読むことのできる紋章を用い、ライオギ平野の気候を利用して帝国軍を迎え撃つ方針を打ち出した。
ライオギ平野の気候とは、午前中は南から北へと強風が吹き荒れ、午後になると風向きが北から南へと変わるというもの。
すなわち、風向きが北側に陣取るロベルティ王国側にとって不利な午前中は、ただひたすらに防御に徹する。風向きの変わる午後から一斉に反撃へと転じる。そんな内容の作戦であった。
レティシアの気候の説明に、しばらくライオギ平野に陣を構えているマルグリットは深くうなずき、「言われてみればそうだ」と言わんばかり。ともあれ、レティシアの方策に異論を唱える者はなく、この方針が採用ということとなった。
「レティシア、ちょっといいか?」
「リカルド殿、何か意見があるの?」
「ああ、その一大決戦の前に騎兵3千を借り受けたい。妙案がある」
「3千の騎兵で一体何をするつもり?」
リカルドはいつもの大声で返すのではなく、レティシアにのみ耳打ちして伝える形をとった。リカルドの耳打ちの内容を聞き、何を思ったかレティシアはニヤリと悪役さながらの笑みを浮かべていた。
「うん!それはいいね!面白い!マリアナ様。それにナターシャ。ちょっとリカルドに任せてみてもいいと思うよ!」
「私はマリアナ様に異存がなければ構いません」
「そうね。軍略に長けたレティシアが面白いというなら、私に反対する理由はないわ。リカルド、存分にやってみるといいわ」
こうして女王と軍務大臣からのお墨付きを得たリカルドはその日の夜分に、本営を発った。騎兵3千を率いて何をしようというのか。レティシア以外は知らないままである。
ともあれ、軍議では陣構えについても取り決められ、レティシアが広げた絵図には、敵の陣形が細かく記されていた。
帝国軍の陣形は鶴翼の陣形であり、東の右翼にはジュリア・リーシェ率いる8千。反対に西の左翼はガレス・フレーベルが布陣している。そうして中央にはカルロッタ本隊3万9千の大軍勢が五段構えの陣形で待ち構えている。
まずは、敵の右翼であるジュリア隊8千を誰が相手するかという話に。そこでは、ルービンが名乗りを上げたが、兵数で劣ることもあり、レティシアにより却下された。
ルービンの代わりに相手を任されたのは、ロベルティ王国譜代の将軍であるローラン・ハワードであった。彼の率いる兵の数も8千であることや戦慣れしていることから相手にとって不足はないと判断されたのである。
ルービンとしては、ローランが敵右翼の相手を任されたことに憤懣やるかたないといった様子であったが、レティシアもその思いに配慮して、ローラン隊の東に陣取るように命じた。
一応、ルービン隊5千4百はカルロッタ本隊と戦うことが主な役割であるが、ローラン隊が崩された時には代わりにジュリア隊とも戦わねばならない重要な役割でもある。
そんなルービン隊の東にはナターシャ率いる2万の大軍。その後ろには近衛兵で構成されたマリアナ率いる本隊8千。といっても、実際に近衛兵の指揮を執るのは隊長であるセシリア・ランドレスに他ならないため、セシリア隊と呼んでも差し支えはない。
さらに、ナターシャ隊の東隣にはアルベルト率いるラローズ領の兵たち6千6百が布陣。決戦では真正面のカルロッタ本隊との交戦。すなわち、カルロッタ本隊3万9千にはナターシャ隊、ルービン隊、アルベルト隊の総勢3万2千がぶつかることになる。
残るは西側。ガレス・フレーベル率いる1万6千を誰が相手するか。それは消去法的にマルグリット・サランジェ率いる1万5千であった。数的にやや劣るが、マルグリットの連れている部隊は精鋭揃い。決してガレス率いる帝国兵に劣るものではない。
しかし、皇帝ソフィアの叔父であるガレスは武勇に優れ、部隊を統率して戦うことに長けている。この2点はまさしく、父ルドルフの血を引いていると言えよう。
帝位は7つ年上の姪であるソフィアが継いだわけだが、人をまとめて統治を行なうこと、謀略を仕掛けることに関しては間違いなくガレスよりも上。ゆえにガレスも姪であるソフィアが帝位を継ぐことに異論はない。
とはいえ、ガレスは帝国の軍部から絶大な支持があることも確か。そんな軍部の者たちからは、『生まれるのがあと10年早ければ皇帝になれたものを……』と陰で言われているほど。
そんな帝国でも指折りの猛者であるガレス相手にマルグリット隊がどれだけ奮戦できるか。こればかりはナターシャたちにとっても未知数であり、東西の戦況いかんによっては大敗もあり得る。
ロベルティ王国軍中でも、このことが分かる者たちの間では空気が張り詰めている。そのような空気の中で、ナターシャたちロベルティ王国軍は帝国軍との決戦に勝利することができるのか。
……乞うご期待。
第99話「千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ」はいかがでしたでしょうか?
今回は誰が誰の相手をするといった話が最後でなされていました。
さらには、ガレス・フレーベルについての情報も出てきたわけですが……
一体、ライオギ平野での決戦のゆくえやいかに……!?
――次回「背に腹は代えられぬ」
更新は3日後、5/13(土)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




