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第96話 大事は小事より起こる

どうも、ヌマサンです!

今回は次の戦に向けて、ロベルティ王国と帝国がそれぞれ準備を進めていきます……!

はたして、お互いにどんな準備を進めていくのか。

それでは、第96話「大事は小事より起こる」をお楽しみください!

「よし、その木材はそこに運べ!おい、それはこっちだ!」


 木材と人とが密集する場所にて、1人の男の怒号が飛ぶ。ここはハウズディナの丘頂上。そんなところに木材を運び入れて何をしようというのか。それは、レティシアが進言していた砦を作ろうというのである。


 季節は晩冬。雪解けには早いが、ダルトワ領は大して雪が降るわけでもないため、気にせず砦作りに着工できている。


 そんな砦作りを請け負ったのはヴェルナー・タンデル。守りの戦に長けた武将として名高い彼が砦の構造を考え、一から設計したのである。そして、どうせ作るなら守りの硬い砦にしようと考えたわけだ。


 そんなヴェルナーが自ら6千5百の兵を引き連れてダルトワ領へ入った。しかし、ハウズディナの地はタンデル領へと続くヘキラトゥス山地の入口から西南西に徒歩で5日ほどの場所に位置する。


 敵地に6千5百だけで乗り込んだとなれば、危険という域を遥かに超えている。が、今回に限ってそれはない。なぜなら、ライオギ平野北部には2万を超えるロベルティ王国軍が駐留しているためである。


 内訳をいえば、マルグリット率いるサランジェ領の兵1万5千、アルベルトを大将とするラローズ領の兵6千6百。さらには、ルービン将軍に率いられた6千3百。あわせて2万7千9百。ざっと3万にも届こうかという数であった。


 マルグリット率いる部隊は南側に陣取り、敵からの攻撃に備える形。残るアルベルト隊とルービン隊はといえば、昨年のダルトワ領侵攻での激戦地に築かれたフェルネ砦を改修しているのである。そう、さらなる堅城へと。


 こちらの城の構造を考案したのは他ならぬレティシアであり、先のダルトワ領侵攻において激戦地となった2か所に砦を築くことが何を意味するか。それは他ならぬカルロッタたちへの挑戦であり、取り返しに来させようとしているのである。


 こうすれば、ナターシャも言っていた通り、短期決戦へと持ち込むことができる。後は、采配しだいになるが、勝ちさえすれば敵に大打撃を与えた上でヌティス城まで兵を進めることも可能になる。


 そう上手くいくかどうかはさておき、ひたすらライオギ平野で長期にわたる睨み合い――となる確率は少ない。


 さらに、先のエルマー、ハロルドの両名はそれぞれ任務についている。エルマーはヴェルナーの元で、砦作りのための人手集めに尽力しており、周囲の村から2千人ほど集めることに成功していた。


 それだけでなく、エルマーはハウズディナ周辺の地理にも詳しいため、どの道から順に整備していく必要があるかを理解しており、人員を一部分けてもらったうえで物資や人の移動がしやすいように道を整備する役割も担うなど大活躍であった。


 残るハロルドはといえば、マルグリット隊に所属し、ライオギ平野周辺の貴族たちの調略を勧めていた。このまま帝国に居ても増税に次ぐ増税で民が苦しみ、それが巡り巡って自分たちをも苦しめること。


 なにより、このままでは自分たちの所領が最前線になり続けて、荒廃してしまうということを強調したのである。これにより、1人、また1人とロベルティ王国側へと寝返る貴族が出始めていた。


 こうしたロベルティ王国側の砦作りや貴族の調略といった悪い情報はカルロッタの居城であるヌティス城にも達した。


「ローレンス、ロベルティ王国軍が領内で好き放題にしているみたいね」


「そうだね……。明らかに攻撃を誘っているんだけど、傍観を貫けばますます状況は悪くなる。難しいところだよ……」


「私は戦うかどうかはさておき、兵を進めて圧力はかけておくべきだと思うわ」


 ハウズディナの丘やライオギ平野の現状を早馬から聞き、どうするかを協議したうえでローレンスも出陣することに賛同の意を示した。


「なら、まずは軍議を開きましょう」


「ああ、それなら諸将に招集をかけるよ」


 こうして諸将を招集しての軍議となり、その場には主だった将が集結。まずはカルロッタの従弟であり、参謀でもあるローレンス。彼はもちろんのこと、カルロッタの妹のミルカといった一門衆。


 そして、昨年の戦いで戦死したユルゲンの遺児たち。ローレンスの妻であり、ユルゲンの娘ジュリア。彼女は無事に出産を終え、今回の戦で満を持しての戦場復帰である。


 昨年の戦では彼女の弟であるブルーノが代わりに出撃し、討ち死にする結果となっており、父と弟の無念を晴らしたいという想いが誰よりも強かった。そして、もう1人。


 ユルゲンの次男であり、ジュリアの弟。名をロベルト・リーシェという。今年15歳になったばかりの少年であるため、今回が初陣となる。意気込みは姉に匹敵するほどである。


 かくして、主だった将軍たちも集結した頃合いを見て、カルロッタは各々がどれだけの兵を連れてどこへ進出するのかという具体的な話に入った。


「ミルカとローレンスはハウズディナの丘頂上部に築かれた砦を陥落させてほしい。その後は丘を下って東へ。ライオギ平野で合流することにしようか。数はミルカが7千を率いて先行、後をローレンスが9千を率いて続いてほしい」


「分かりました!任せてください!」


「ああ、ミルカが暴走しないように見張っておくから安心してよ」


 暴走するのが前提であるかのような言われように、ミルカも眉をしかめる。そんなミルカを見てローレンスはクスクスと笑みをこぼしていた。


 ミルカの方が3つ年上なのだが、やり取りだけを見ればローレンスが兄のように思えてしまう。カルロッタはそんな2人のやり取りを見慣れた様子で、しばらく黙って見守るのであった。


 そして、2人のケンカが落ち着き始めたところで、次の指示へと移っていく。


 次はジュリアとロベルトに対してであり、ジュリアが1万を率いてライオギ平野の東、海岸沿いの街道を封鎖。ロベルトはジュリアの副将として共に行くように下知した。


 ジュリア隊がライオギ平野の東側から進んでくる敵を食い止める役割を担い、当のカルロッタ自身はライオギ平野の中央部に本営を置く運びとなった。その数、3万9千。


「総勢6万5千で敵の南進を食い止めることにするわ。どうかしら?異論があれば、今なら受け付けるわ」


「僕は特にないかな。敵が少ないうちに、動いておく方がいいのは間違いないだろうから」


「私も特にありません。カルロッタ様から与えられた役割を全うするのみです!」


 ローレンスやジュリアといった諸将から異論は出ず、当初の作戦で早速動くということで話はまとまった。


「もっ、申し上げます!ガレス様、1万6千の兵でご到着!」


 ガレスとは先帝ルドルフの遺児である若将軍。すなわち、現在の皇帝であるソフィアの叔父にあたるわけだが、年はソフィアの方が7つ上。ソフィアからしてみれば、年下の叔父にあたるため、扱いがややこしいと思われている。


 そんな金枝玉葉たるガレスが自ら1万6千という数を連れてヌティス城までやって来たというのだ。カルロッタたち諸将は大慌てで出迎えに走った。


「ガレス様!出迎えが遅くなり、大変申し訳……」


「ああ、そういうのはいい。堅苦しいのはやめてくれ」


「ですが……!」


「だから、やめろって。いいか、これは命令だ」


 ガレスは今年で19歳の若武者だが、父や祖父に似て体格が良く、カルロッタたち歴戦の猛者と比肩できるほどの迫力があった。ソフィアが勝ち気であるのに対し、ガレスは面倒見がよいから身分を問わず人から慕われる何かがある。


 そんな彼が急にヌティス城まで大軍を率いてやって来たのはどういうわけか。カルロッタは率直な問いを投げるのであった。

第96話「大事は小事より起こる」はいかがでしたでしょうか?

今回はロベルティ王国側がせっせと砦づくりと調略、帝国は兵を進めて威嚇するということになっていました……!

そして、カルロッタたちが北上するというタイミングでガレスが登場。

一体、ガレスの参戦で戦局はどう変わっていくのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!

――次回「備えあれば患いなし」

更新は3日後、5/4(木)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!

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