第34話 三国に勝利す
どうも、ヌマサンです!
今回はシネスティア平野の戦いにおいてロベルティ王国が勝利を収めた後の話になります!
はたして、勝利後のロベルティ王国ではどのようなことが行なわれるのか……!
それでは、第34話「三国に勝利す」をお楽しみください!
ナターシャ・ランドレス率いるロベルティ王国軍はシネスティア平野での戦いを終え、休む間もなく南下し、シドロフ王国の王都パレイルの門をくぐった。
ここで王都で一戦もなかったのかと疑問に思うかもしれないが、ナターシャたちが王都パレイルへ到着する頃には、シネスティア平野の戦いの勝敗や、国王ビクトルが戦死したことなども王都中に知れ渡っていたのだ。
そればかりか、王子であるカイルまで捕虜となったとあっては、王都に残る兵たちに戦意は欠片も残っていなかった。すなわち、王都パレイルは無血開城となり、王都中にロベルティ王国の旗が翻ることとなった。
「姉さん、今回の主だった戦功を記しました。あくまで暫定だけど、一度目を通しておいてください」
「ええ、ありがとう。クライヴも少しは休みなさい」
「ああ、国に帰ったら温泉にでも行って疲れを取るとするよ」
「セシリアとですか?」
クスクスとからかうような笑みのナターシャ。クライヴはセシリアの名が出るなり、顔を赤くして部屋を退出していった。
そうして弟をからかう余裕が出てきたナターシャであったが、それだけ戦の情勢が安定したということでもある。
ともあれ、ナターシャはクライヴが提出した戦功が記された書類に目を通した。一番手柄は国王ビクトルを射殺し、アマリアと共にゼラモ砦の戦いで奮戦したユリア・フィロワであった。
「やはり、国王ビクトルを討ったことが勝利に一番貢献しているわけですし、当然と言えば当然ですか」
ナターシャはユリアがビクトルを射殺した瞬間を思い返し、あの弓の腕前には驚かされたという感情も呼び起こされていた。
「戦功第二はアマリアですか」
アマリアはゼラモ砦でのカイル本陣へ突撃し、敵を撤退に追いやったことや、シドロフ王国の名家であるロメロ家のアンディ・ロメロを討ち取っている。そして、シネスティア平野の戦いでは、アルセン率いる1.5倍近い敵勢と互角以上の戦を繰り広げたことなどが理由として挙げられていた。
ユリアとアマリア以外は箇条書きとなっており、クライヴも甲乙つけがたかったのだろうとナターシャは推測した。
王子であるカイルの馬をナターシャが射抜いたことも省かれることなく記されており、その後には落馬したカイルがノーマン・ハワードにより生け捕られたことが記されていた。
ノーマンの功績は他にも、クライヴからの指示通りに機を見て敵部隊へ攻撃して勝利に貢献したことや、敵将クロエを捕らえたことなどがあった。
また、ノーマンの父ローラン・ハワードも同じくクライヴからの指示を受け、臨機応変に敵へ攻撃を仕掛け、シドロフ王国随一と言われるアルセン・ロメロを手捕りにしたことが載せられていた。
ナターシャとユリアが弓の腕比べをする前に本陣を飛び出していったクレアは、乱れる軍を統率し、果敢に応戦していたラウル・ロメロを生け捕りとし、敵の戦闘部隊を壊滅させることに貢献したとの記載がされていた。
「ローラン殿も、ノーマン殿もそれぞれ敵将を生け捕っていますし、クレアもカイルの側近であるラウルを生け捕るとは見事です」
クレアも目立ちこそしないが、槍の腕前は確かなのだ。それが戦功として表れているのが、ナターシャにとっては主君として、親友として嬉しかったのだ。
そして、本国に送り返したジェフリーの砦を3つ落とした功績も記されていたが、うち2つは奪回されたことも併記されていた。
そんなジェフリーだが、女王マリアナの勅命により、今は王都テルクス内の自宅にて謹慎処分を受けている。それは、王都に残っているモレーノからの便りで知った。
また、書類の末尾にはクライヴ自身の功績もか細い字で記されていた。
「ええと、一騎打ちの末に敵将アルベルトを捕虜とした?あのクライヴが武功をあげているとは珍しいですね……!」
ナターシャはクライヴが敵将を捕えていたとは今の今まで知らなかった。クライヴは謙虚というか、自分の功績をあまり主張しないのだ。それは、昔の頃からそうだった。
「まぁ、謙虚だと言えば聞こえは良いのですが、自分の手柄は主張しておかないと横取りされてしまったりしますからね。後で、キツく言い含めておかなければ」
後でクライヴを呼び出して折檻することを心に決め、書類の末尾にクライヴのプリスコット王国を調略した功績やフォーセット王国への奇襲策の立案などの功績もナターシャが記しておいた。
それも、ナターシャが記したものだと分かるようにナターシャのサイン付きである。
「ふぅ、プリスコット王国軍はシネスティア平野にてシドロフ王国軍が壊滅するなり西へ撤退していきましたが……」
東のフォーセット王国へ奇襲に向かったトラヴィスとセシリアの部隊がどうなったか、まだ戦況などが伝わって来ていない。
そのことが気がかりであったが、その日の夜にはフォーセット王国の王都レミアムより書状が届いた。書状の内容は簡潔にいえば、フォーセット王国が降伏したというもの。
トラヴィスとセシリアに率いられた2千5百は王都レミアムを包囲している最中に背後からフォーセット王国の将軍ルービン率いる2千から攻撃を受けたが、これを撃破し、将軍ルービンをトラヴィス自ら生け捕った。
この時のルービンとトラヴィスの戦いは互いに風魔紋の使い手だったこともあって、凄まじい闘いであったことも後の報告で知ることになる。
ともあれ、トラヴィスたちも無事だったことを知り、ナターシャもようやく肩の力を抜くことができたのだった。
また、別の報告ではトラヴィスがルービンを生け捕ったことで、女王クリスティーヌに降伏の交渉を持ちかけて平和的に解決したことなども伝えられた。その甲斐もあり、トラヴィス隊の死者は5分の1にあたる5百名ほどで済んだとのことだった。
こうしてナターシャを総大将とするロベルティ王国軍は無事に三国の軍勢を下すことに成功した。この一報ははるかフレーベル帝国の帝都フランユレールにいる皇帝ルドルフの耳にも届いた。
「左様か。シドロフ王国、プリスコット王国、フォーセット王国との戦はロベルティ王国の勝ちで終わったか」
「そのようです。ロベルティ王国の方からは、3国の処遇についての指示はあるかの返答を求められていますが、いかがしましょうか?」
「うむ、3国とも帝国に従属という形に持っていければ一番良いとだけ伝えてくれ」
「承知致しました。そのように使者にも伝えます」
カルロッタは皇帝ルドルフへ一礼をしたのち、ロベルティ王国からの使者に皇帝の言葉をありのまま告げた。
1人残されたルドルフはいよいよクレメンツ教国との決戦の時が近いことを悟り、カルロッタに準備を進めるように命じた。
こうしてロベルティ王国はフレーベル帝国に従属して初めての他国との戦争において、勝利を収めた。
そして、皇帝ルドルフからの言葉は早馬により10日後に知らされた。その内容を受け、ナターシャは王都パレイルに留まっているうちに話をまとめる必要があると3国の王に召集をかけた。
こうして近日中にプリスコット王ラッセル、フォーセット王クリスティーヌ、新シドロフ王カイルの3名を含めた会談が行われる運びとなり、ナターシャたちは方々へ使いを出し、慌ただしく会談の準備を進めることと相成った。
第34話「三国に勝利す」はいかがでしたでしょうか?
今回はナターシャがクライヴから受け取った戦功を記した書類に目を通したりしてました。
また、それと同時に従属先であるフレーベル帝国にも色々と報告を行なったりもしていたわけです。
ともあれ、次なる3国の国王を集めての会談がどうなるのか、楽しみにしていてもらえればと思います……!
――次回「4カ国会談」
更新は3日後、10/30(日)の9時になりますので、また読みに来てもらえると嬉しいです!




