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公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。  作者: 木山楽斗
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その決断は(アルーグ視点)

 王家とラーデイン公爵家は友好関係にある。イルフェアとキルクスの婚約が決まったのも、両家に既に関係性ができていたからだ。

 その結束は、ルネリアの存在が発覚しても揺らぐことはなかった。それ所か新たに婚約が結ばれ、より密接な関係になったといえる。

 それは俺にとっても、悪い話ではない。ラーデイン公爵家の次期当主として、それらの関係性というものは大いに利用できるものだ。


「……アルーグ、なんだか険しい顔をしているな? 何かあったのか?」

「……カルディアス殿下、何もありません。俺はただ、紅茶を楽しんでいるだけです」

「いや、そうは見えないけど……」


 俺はこの国の第一王子であるカルディアスと話していた。

 いつも飄々としているこの男は、警戒するべき者だ。その内心というものを俺は、いつも測りかねている。

 とはいえ、今の所はこちらに対して友好的だ。機嫌などを損ねぬように、俺も立ち振る舞わなければならない。


「この紅茶はいい茶葉を使われていますね? どのようなものか教えていただけませんか?」

「それはいいが、その前に険しい顔をやめてくれないか?」

「険しい顔、ですか。申し訳ありません、この顔は生まれつきです」

「いや、いつもはもっと余裕があるだろう? 今のお前はなんだか、落ち着きがないというか……妹のことが気になるのか?」

「ふっ……」


 カルディアスの言葉に、俺は思わず反応していた。

 妹のことを気にしている、それはなんとも愚問であった。しかしそれを、口にする訳にはいかない。それは無礼にあたる。

 正直な所、王家の人間に対して好感は持てないが、それでも俺は大人だ。今の言葉も水に流すとしよう。


「妹達のことなど、気にはなりませぬ……あなたの弟君達が、一緒なのですから」

「おい、滅茶苦茶怖い顔をしているぞ? 絶対に気にしているだろう?」

「まさか、俺は王家の方々を信頼しています」

「心にもないことを言っているな?」


 俺の妹達が、王家に連なる者達の元へ嫁ぐ。それは俺にとって、利益となるものだ。

 この国のトップの血族との繋がりなど、利用しない手はない。ラーデイン公爵家の次期後継者として、王家との繋がりはいいように使わせてもらう。

 そうでもしなければ、俺の気が収まらない。妹を二人を嫁がせるなどという苦渋の決断を下した俺の気が!


「アルーグ、お前は昔から弟や妹のことになると、冷静じゃなくなるよなぁ……」

「カルディアス殿下、何を言い出すかと思えば……弟や妹を大切に思うのは、兄として当然のことでしょう? あなたがそう思っていないというのならば、こちらとしては困ります。せっかく妹二人を嫁がせるというのに、あなたが冷遇しかねないというのならば」

「いや、なんでそんなことになるんだよ? 俺だって普通に弟や妹のことは大切さ。でもお前程じゃないというか……」


 カルディアスがキルクスやサガードに対して害意を抱いているというのならば、婚約は考え直さなければならない。

 王家では時に、後継者争いなどが起こっている。それで血が流れた事例もある。それに妹達を巻き込ませる訳にはいかない。


「キルクス殿下とサガード殿下には、妹達を幸せにする義務があるといえる。それは紳士としては当然の行いだと、俺は認識しています」

「それはまあ、そうだろう。俺やお前だって、同じだ」

「後継者争いなどは、断じてやめていただきたいものです」

「その点については、心配はないさ。俺が王位を継ぐということに、なっているからな。まあ、別に俺は自分が継がなくてもいいとは思っているが、皆押し付けてきやがる」


 王位に関しては、俺としてもいつも気にしている。王家の者達が争うということは、妹達にも確実に影響があることだからだ。

 現在の所、カルディアスが王位を継ぐということで決まっている。その情勢は最早覆るようなものではないはずだが、それでも万が一ということもある。その時のことは、常に考えていなければならない。


「長兄であるカルディアス殿下が、王位を継ぐというのは当然のことでしょう。俺もずっと、そうなるべく努力してきました。あなたとて、それは同じはずだ」

「いや、俺なんかはそんなに真面目ではなかったさ。アルーグ、お前は立派な奴だよ。これに関しては本当にそう思う。お前は偉大な兄なんだろうさ」

「偉大な兄、ですか……お褒めいただき光栄です。しかし俺などよりも、あなたの方がこの国においては重要だ。カルディアス殿下には偉大な王になっていただかなければ困ります」

「そう言われると、耳が痛いな。まあ、そうか。偉大な王か、俺になれるといいが……」


 俺の言葉に、カルディアスは天を仰いだ。まるで不安を抱いているかのようだが、そのことに関して俺は特に心配はしていない。

 この男は王という地位も卒なくこなすことだろう。そういう奴だということは、それなりに長くなった付き合いからわかっている。


 ともあれ、俺にとって重要なのはイルフェアとルネリアの幸せだ。

 今の所、この男はそれをもたらしている側に位置している。故に有事の際には、惜しまずに協力するつもりだ。ルネリアのことを受け入れてくれた義理も、王家にはある。


「まあ、アルーグやキルクスがいるから大丈夫だよな?」

「……俺とキルクス殿下を並べないでいただきたい」

「おっと、これも駄目な話題だったのか……」

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