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A:正しき義

登場人物紹介 ネリュ・シャイン:零時を快く迎え入れてくれた女性。フレアの母親だが、感じ的には姉に近い存在である。両親に構ってもらえなかったので家出をして今では地下に巨大な家を造ってフレアと生活している。すぐれた人工物製作者だが実際に作った人工物は片手で足りてしまうほど少ない。フレアには内緒にしている職業がある。

五、

「まちなさーい!」

 できることなら立ち止まって誤解を解きたかったのだが・・・・あの目は

「あなたを成敗します!」という正義の目をしていた。

「待ってもいいけど、その杖をあんたから約十メートル後方に投げてくれ!そうしたら立ち止まる!約束しよう!この命を懸けてもいいかもしれない」

 俺は一応そう相手に告げる。あんまり走っていないのだが、緊急時は疲労が二倍にでもなるのか知らないが、そろそろ息が切れ始めている。

「悪者はそうやって騙すっておばあさまがい、言ってましたからあなたを信用できません!」

 なんつ〜野郎だ?俺のこの瞳のどこが穢れているというのだろうか?悪者は力が弱いから知恵を絞って姑息な手をいやいやながらも使っているのに対して正義の味方は力でねじ伏せてきやがる!少数精鋭は機動力などを生かせるから有利なのだ!

「おい、あんたは正義の味方を気取ってるのか知らんが、相手を信じることから正しい道は始まるんじゃないのか?」

「悪者のくせしてよくしってますね・・・」

 あれ?俺、悪者確定?

「確かにそうですが・・・私は思うんです・・・」

「何を?」

「悪者に説得をして相手がその話に乗ったとしても悪の組織は正義の味方を騙して姑息な手を使って勝ってしまいます」

「ああ、そりゃそうだろうよ・・・・」

 弱いもののほうが手を出しやすいのだ。やられる前にやれって言葉の通りである。

「だから、私は思ったのです」

「何を?」

「・・・・まず、悪者をぼろぼろにした後に話をする。動けない相手が完全に話を理解してくれてそれで悪者は正義の使者になってくれます」

「まぁ、そりゃ一理あるだろうけどよ・・・・」

 放たれた魔法をジャンプして避ける・・・が、完璧には避けきれない。

「へぇ、そこまで理解してくださっているのなら、い、いっそのこと私の部下として働きませんか?」

「そりゃ、いい話だな・・・」

「でしょう?そのためにもあなたをぼろぼろにして根性を叩きなおすことにします!だから、待ちなさい!」

「そりゃ、いやな話だな・・・じゃ、逃げるわ」

 おどおどとしていた今までの表情はどこかに消えており、彼女は嬉々として俺に魔法を放ってくる。なるほど、確かに彼女は強力な魔法を使ってきているようだが実践で使ったことが無いのか、俺にはまったく当たらない。しかし、あたらないからといって余裕を見せていると後で俺が馬鹿を見てしまう。

「・・・あった!階段だ!」

 追いかけられている状況でようやく階段を見つけた。授業が終わったのか、生徒の姿が廊下に現れ始めた。どうやら、状況は後方にぴたりとついてきている彼女のおかげで打破されたようだ。しかも、生徒が現れるようになったので下手に魔法は使えないようである。そりゃそうだ、生徒会長が生徒を傷つけちゃ、本末転倒だからな・・・・

「ちょっとごめんよ!」

「まちなさーい!」

 人の隙間をぬって走りまくる。

既に心臓はそろそろ黄泉の国へと旅立とうとしているところであり、心臓が昇天してしまったら俺の命も危ないのだが・・・時折生徒にぶつかってその生徒にいちいち止まって謝っている生徒会長に捕まっても結局は同じ末路をたどるのである。幸い、既に残り一階分の階段しか残っていない。先ほど階段を駆け上がっていたら上から生徒たちがいっせいに降りてきていたので彼女は下に流されたに違いない。必死の

「まちなさーい!」という声だって聞こえなくなった。

 目の前に現れた球体の扉に向かって一直線に向かおうとした俺の目の前がいきなり爆発した。

「おわっと!」

 あわてて飛びすさみ、姿勢を低くする。思わぬ攻撃にあわてて右手で防いだため学ランが少々黒く焦げてしまったが・・・・・いや、もとから黒いか。とりあえず、直撃しなかっただけでもよしとしよう。

「・・・そ、げほっ・・・そこまでですよ!」

 黒煙がたち消えぬ中から先ほどの生徒会長が現れた。

その姿はあったときとは違って制服はぼろぼろでちょっとウェーブしている深い青色の髪の毛は爆発したようになっていた。肩が露出しているところなんて黒い炭がついている。挙句に掛けている眼鏡はずれていてパッチリとしたおめめが俺を睨んでいる。なんともまぁ、恐ろしいほどの追跡者である。ふと思ったのだが、

「世界を征服する」という悪者の執念よりも

「悪者を一掃する」という正義の味方の執念のほうが強いのでいつも悪者は負けるのではないのだろうか?信じる心は救われるとは、このことをさすのかもしれないな・・・いや、ささないか?

 さて、絶体絶命というこの状況・・・どうしようか?白旗揚げて命乞いでもするか?何事かと思ってこの学校の生徒たちがわらわらと俺たちを囲んでいるが・・・・・

「あれ、零時さん?」

「あ、フレ・・じゃなかった、シャイン!」

 そういえば、偽名で呼ばないといけなかったなぁということを思い出してそっちの名前を出す。そんなことより、ようやくここで知り合いであるフレアに会うことが出来た。

「さぁ、ギャラリーも集まってきたので悪者の最後ですね・・・」

 静かに

「ふふふ・・・」という笑いを見せながら俺に接近してくる生徒会長。むぅ、俺よりあんたのほうが悪者に見える・・・・というより、俺は断じて悪者ではない。ついでに言うが、正義の味方でもない。

「待った!」

「何でしょう?悪者らしく悪あがきですか?」

「違う!こっちのシャインが俺がお世話になることになった家に住んでいる女の子だ!彼女が俺の無実を証明してくれる!」

「がんばります!」

 腕をぐっと握り締めてそういったフレアだったのだが・・・・

「・・・シャインさん、私はとても悲しいです。いつの間にあなたのあの地下ハウスは悪者の拠点となったのでしょう?」

「「え?」」

「しかし、安心してください。私が魔に堕ちてしまったあなたとその彼を助けてあげます!」

 なにやら呪文を唱え始める。その呪文は相当危ないものなのか知らないが、ギャラリーであるこの学校の生徒は身の危険を察知して逃げ始めた。中には生徒会長が現れた穴から飛び降りている人たちもいる。俺だって逃げたいが・・・あいにく、逃げ場がない。

「れ、零時さん!何とかしてください!生徒会長が大変なことをしようとしています!」

「何?何しようとしてるの?」

「最低で、この学校自体が吹っ飛びます!」

 最低で吹っ飛ぶ?って、あんた・・・学校吹っ飛ぶならさっきから彼女が作った穴にはまって抜けなくなってる太った男子生徒なんていましていることが無駄になっちまうじゃねぇか!

「何、どうすりゃいいんだ?」

「とりあえず、“−”の力を彼女が放った“+”の魔法にぶつけてください!大きくても小さくてもいけませんよ!弱ければ学校が、強ければ彼女が吹っ飛びますから!」

「そりゃ、まじか!?」

 気がつけば目の前の生徒会長は杖を嬉々として俺に振り下ろすところだった。

「ええい!そんな難しいこと言われてもわかんねぇよ!」

 俺も右腕を相手に突き出す。

ぶつかり合った正反対の力は一瞬だけ火花を散らせてその瞬間に真っ白な光を生み出したのだった。ぶつかった衝撃で生み出された風が黒煙を完全に吹き飛ばし、逃げ遅れた生徒数名があおりを食らって屋上の端まで飛ばされて、生徒会長が出てきた穴にはまっていたおでぶさんは下に降りることが出来たようだ。それ以後もだんだんと力は増大していったのだった。



 光が完全に消えて辺りに静寂が訪れる。立っているのは俺と、俺を盾にするようにして立っていたフレアだけだった。

「おいおい、屋上にいる全員が倒れてるぞ?」

 屋上には逃げ遅れた生徒たちの倒れた姿がたくさんあった。奇跡的に、誰も外傷はないようだ。目をまわしておまけとして頭の上にはお星様がまわっている。この元凶の生徒会長もスカートを大胆にめくりあげて同じようにして目をまわしているのだった。

「とりあえず、終わったな・・・」

「そうですけど、さすがにやりすぎじゃないんですか?校長先生にも被害があるかも・・・・」

「・・・・フレア、俺は今から証拠隠滅をはかるから校長先生に事情を説明してくれ」

 校長先生がいると思われる球体につけられている扉が開けられようとしているが、倒れこんでいる生徒が幸か不幸か(俺には幸だが)扉が開けられるのを防いでいたのだった。とりあえず、何とか自力で目を覚ました連中に

「授業が始まってるぞ!」と騒いで屋上から追い出した。そして、今度は衝撃を食らって未だに目をまわしてしまっている残りの人たちを引っ張って生徒会長登場時に彼女が開けた穴を使って残りの生徒たちを落としたのだった。事前に床にはマットが敷かれており、これなら落としても大丈夫そうだったので足からおろす作業に移行。誰が下にマットをしいてくれたのかはわからんが感謝しよう。

「さて、どうしたものだろうか?」

 目を開けてくれない元凶にどうしたものかと悩んでいたのだが・・・・フレアがやってきた。

「れ、零時さん!騒動がばれてます!騒動の発端となった者たちをつれて来いって言われました!あれはおならの音なんですっていったけど駄目でした!」

「そりゃ、そうだろうよ・・・どこの馬鹿だってあれだけ派手に騒げば気づくぜ?」

「でも、隠蔽工作にまわってくれって言いませんでした?」

「言ってない、俺はフレアに時間稼ぎをして欲しいと思っただけだ。そこまで期待してないし、どんな詐欺師だってこの状況じゃ無理だろ?」

 ため息をつきながら生徒会長のめくりあがったスカートを戻して背中に背負う。一応、騒ぎの元凶の片棒を担いでいた俺なので校長先生に会って謝らなくてはいけない。勿論、その場合は背中に背負った眼鏡娘も怒られるのが筋というものだろう。

 開け放たれている校長室の扉に向かって一歩を踏み出すとフレアも一緒についてこようとしていることに気がついた。

「フレアは授業に戻ってろ」

「え、でも・・・・」

「いい。これ以上お前に迷惑を掛けるわけにもいかん。そんな見ず知らずってわけでもないが、昨日今日ので出会った人物に俺は迷惑をかけたくない」

「・・・・」

 ちょっと言い方が悪いような気がしたが、事実だ。だが、フレアの顔に影が落とされてしまったのであわてて言い添える。

「・・・・お前まで校長にしかられたらネリュさんに俺まで怒られる。できればあの人の耳には入れたくないんでね・・・あの人、怒ると怖そうだ」

「ああ、なるほど・・・・」

 フレアは

「わかりました」といって俺に背中を見せて去っていったのだった。その後ろ姿に

「絶対に夕食の席なんかで大暴れしたってことばらすなよ!」と叫んでおくのを俺は忘れなかった。

「さぁて、いきますか・・・」

 既に開け放たれているのでノックのしようも無い。部屋に入る一歩手前で

「失礼します!」と叫ぶとしわがれた声で返事が返ってきたのではいることにした。

「・・・・ほぉ、おぬしが先ほどの騒ぎの元凶者かね?」

 中は外と違って茶色っぽかった。そうだなぁ、火がついていない暖炉に、高級そうなじゅうたん、果ては揺れるタイプの椅子に腰掛けた眼鏡を掛けて白ひげを蓄えたおじいさんだった。このイメージが俺の中でのサンタさんに合致してしまったので

「ああ、後は赤い服だけなんだけどなぁ・・・」と思いながらも差し出されたソファーに腰掛ける。

「・・・さっきの言葉ですけど、俺だけじゃなくてこの学校の生徒会長も片棒を担いでます」

「ほぉ、それはまた・・・・本当かね?」

「ええ、3分の2は間違いなく担いでます」

 隣に生徒会長をおろして座らせる。言い知れぬプレッシャーを相手から感じてなんだか知らないが焦燥感にも似ていた。俺は隣の生徒会長を揺り起こすことにしたのだった。

「・・・・事実かどうかはこの人を起こすんで直接聞いてください」

「・・・・どうかのう、起きるのかい?」

「無論です。俳句にも起きぬなら 起こしてみせよう 眼鏡っ子ってありますからね・・・」

「・・・それを言うなら鳴かぬなら 鳴かしてみせよう ホトトギスじゃろうに?」

 突っ込まれたので

「そうですね」と告げて俺は生徒会長を再び起こす作業に没頭し始めたのだった。


十分経過


「起きんな?」

「起きませんね・・・」

 気がつけば俺の手には黒のマジックが握られており、いつの間にか隣に来ていた校長先生の手にも黒のマジックが握られている。そして、目の前で静かに眠っている生徒会長の顔には落書きが施されていたのだった。


今回現れた生徒会長、実はかなりの実力者です。一応、名家の跡取り娘という設定です。さて、ここで皆さんにちょっと質問ですが、まだおわりませんがAルートの終わり方をどのようにするか悩んでいるところです。個別に終わらせるか、一人に絞って終わらせるか・・・・迷っているところなので希望があればメッセージなどで教えてくれると非常にありがたいと思っています。さてさて、今回の小話ですが・・・今回は作者が何故、小説を書くようになったのか教えておきたいと思います。その昔、小説を読んでるとたまに自分が期待していなかったような結末を迎えてしまう物語がいくつかありました。例を挙げるなら主人公が犠牲となって世界が残ったとか、登場人物の誰かが犠牲になって終わったとか、はたまたいい終わり方なのだがぼかしてこれからも似たような日常が続いていくといったようなものです。続編が出るならまだしも、そういう小説を作者は嫌う傾向にあるので自分なりに終わらせるような形にしていたのです。だから、登場人物の個別エンドがあったりするのもそういう理由なのです。誰かがあきらめて誰かが幸せになるのはどうかなぁと思ったので個別エンドを書いています。さぁて、今回はこのくらいにして、また今度お会いしましょう!

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