客:てくてくてく・・・・
今回は前回の続きですね。ここでようやく、セレネ、零時の実力がはっきりします。
五、
信じられないな。まさか、俺の新しいクラスにこの誘拐犯こと、ノワル・ダークがいるなんてな・・・・いや、誘拐犯じゃなかったら話もしなかった単なる女子生徒だな。きっと、俺は平穏に日常を過ごせてただろうよ。
「なぁ、何で俺を攫って来たんだ?あの時も彼氏じゃないといったが?」
「なんとなく!その場でそんな雰囲気がしたから!私、PKOは大事にするほうなんだ。えへへ、まぁ・・衝動的かな。たまたまだよ。もうしないよ。」
本当だろうか?本当に信じていいのだろうか?今後下校中に失踪扱いはイヤだ。
「ただいま〜」
陽気なおじさんたちの声が聞こえる。どうやら、買い物を終えたようだ。
「おや、ノワルの友達さんはまだ居たのかい?なんなら、夕食を食べていくか?」
気前がいいおじさんたちだ。だが、この人たちの目は間違いなく、節穴だ。どこの世界に友達をロープで縛り付ける人間が居るんだ?居るのなら、俺にぜひとも教えて欲しいね。そのときは同情してやろう、ロープで縛られた奴にな。
それから・・・約束の時間になり俺はロープを握られたままその場を後にした。
「零時君、また遊びに来いよ?まぁ、俺たちの仲間が今日は少ないが、多いときにくればまた何か発見があるかも知れんからな。頭も柔らかいようだしね。」
「はぁ、夕食、ごちそうさまでした。」
俺はノワルに背負われるような感じで彼らに挨拶をし、ノワルと俺は公園へと向かったのであった。途中から、靴に羽を生やしてノワルは飛び始めた。そして、黒いフードをかぶった。
「これで、『古代魔法振興会』の一員ってわけ。さ、飛ぶよ、零時。準備はいい?」
「ああ、好きにしてくれ・・・。(ま、そんなこったろうとは思ったさ。)」
本当に何がしたいのか分からんな、魔法使いとやらは・・・きっと、頭の作りが根本的に違うに違いない。さすがにこの時間に外に居る人間は少ないだろうなが。まぁ、未だにお星様をウォッチングしている夢見る方々が居ることを否定できないが、そんな連中に宇宙人扱いされたら俺もたまらん。写真なんて取られてTVに出たらそれはそれで嬉しいが、宇宙人として扱われるのはなんだかなぁ〜。
「よいしょっと!!着地成功!零時、大丈夫?」
あっという間に目的地に降り立った。公園内には数箇所、電灯がつけられており、その電灯が輝いており、砂場で砂の小山を作っている二人組を不気味に照らしていた。こんな時間帯に砂の小山を作っているのは確かに怖いな。
一人がこちらを向いた。セレネだ。
「・・・零時、怪我は無かった?」
「ああ、まぁな・・・。」
心配してくれているのかとても心配だが、一応、返事はしておこう。
「約束どおり来てあげたんだから、さっさと零時を開放しなさいよ!!」
いや、言ったところで開放してくれないだろうなぁと思っていたが、あっさりとノワルは俺を縛っていた縄を解く。利用できるだけ利用したら捨て駒か?
「・・・さ、これで零ちゃんは自由だよ。」
「あ、すまん。(おいおい、とってもフレンドリーな呼び名だな?)」
俺は巻き込まれないようなところに腰掛けた。その隣にソーラも腰を下ろす。
「・・・・零時君、何かされませんでした?その、人には言えないこととか?」
「・・・・いや、何もされなかったが?」
ほっとしたのか溜息を漏らすソーラ。まぁ、心配されてたのは嬉しいな。
「セレネ、いつでもどうぞ?私は貴女に負ける自身は無いわ。」
「ふん、今に土下座して謝りたくなっても知らないわよ?覚悟はいい?」
右腕を掲げ、セレネの周りに大きな炎が姿を現す。その炎は間違いなく、ノワルを狙って・・・発射された。そして、俺はその光景をただボーっと見ているのではなく、隣のソーラに質問した。まぁ、とてつもなく大きな火の玉だこと。
「なぁ、間違いなく・・・炎はセレネの腕を包んでいたが、あいつ、熱くないのか?もしくはやせ我慢か?腕が直火で炭になるぞ?」
ソーラはこちらに首を動かし、どこからかメモを取り出した。更に、伊達眼鏡をはめて自作メモを眺める。そのメモは達筆で文字が書かれており、詳しく書かれていた。うぅむ、見た目が真面目だからなのか?それとも、眼鏡をかけるとそうなるのか?今度、瑞樹に聞いてみよう。いや、何・・・興味だ。
俺がどうでもいいことを考えているとソーラは俺の質問に対して答えを言い始めた。
「・・・・魔法を使う際、自分が生み出した魔法は自分には聞かない。これは、よくわからないことだが・・・・この現象をわれわれの中では『アンチ・(例:セレネ)』と呼ばれている。簡単に言うなら、同じものなので、相対せず、安心だそうですね。つまり、自分で作り出した毒は自分には効かないって事です。」
「ふぅん、とりあえず・・・自分の攻撃だから大丈夫ってことなのか?」
「・・・うん。」
再び俺はソーラから視線を動かし、華麗に炎を避けたノワルのほうに向けた。彼女はセレネの実力を試すかのように右に左にたまに上空に逃げている。
再び、俺はソーラに頭の隅から沸きあがった質問を聞いてみた。
「なぁ、根本的にセレネは強いのか?ドジでも大丈夫なのか?」
「・・・気は強いけど、実力は・・・魔法使いの中でも下のほう。でも、初心者ってわけじゃなくて、魔法は基本的なものしか使えてない。威力はあるけど、応用は出来ない。つまり、初心者を一歩進ませたような感じの実力ですね。」
ふぅむ、それってかなり弱いほうなのではないだろうか?大丈夫か?
「相手の実力はわかるか?」
「・・・ぱっと見て若手NO1の実力。私と戦って同じくらいだと思いますが?」
じゃ、強いってことじゃないのだろうか?現に、俺の目の前では避けるのにも飽きたのか素手で・・・素手で雷や激流、炎をはじいているノワルが居た。
段々とセレネに近付いていっている。セレネのほうは焦りの色が濃くなってきている。そりゃそうだろうよ、当然の結果だ・・・せいぜい、LV2でさしも能力が高くも無い魔法使いが確実に両手感覚ぐらい離れている相手に勝てるはずが無い。普通、諦めるだろうよ。何故あいつは諦めて距離をとって相手の隙を狙わないんだ?
「なぁ、なんでソーラは加勢しようとしないんだ?チームなんだろ?」
「・・・・・どこまで進歩したのか見てる。セレネは私に手を出すなって言った。だから、私は見てるだけ。正確に言うと、手を出すなというよりも、開放された零時君を守れって言われた。その提案に私は賛成したのでこっちにいます。」
「そうかい、なら・・・俺が加勢しよう。ノワルには悪いが・・・俺は『古代魔法振興会』のメンバーじゃないからな。ところで、魔法ってどうやって使うんだ?」
魔法の使い方知らないなんて本当に魔法使いって俺は言えるのか?まぁ、誰だって始めは苦戦するだろうし、失敗もあるだろうよ。つまり、よくよく考えてみたら俺が手を出しても意味が無いんじゃなかろうか?諦めるか?だが・・・
「・・・零時君が思っていることを集中し、叶えればいい。それを呼び出すような感じで出せば、出すことが出来る。零時君ならできると私達は信じてる。」
うぅむ、じゃあ・・・何回ぐらい使えるのだろうか?ほら、よく・・MPとかあるじゃん?あれが切れたら使えないだろ?おれはあいつよりも間違いなく弱いだろう俺はどのくらい魔法を使えるんだ?もしかして、使えないとか?
「なぁ、俺は魔法を何回使えるんだ?」
「・・・・基本的には魔法の使用回数は無尽蔵。制限は無い。その為・・・魔法には使用する魔法には制限が課せられているけど・・・今はそれどころじゃない。」
ソーラが視線を動かした先には突き飛ばされて砂場の小山を壊して倒れこんだセレネが映った。あらら、砂がスカートの中に入ってパンツが見えてるぞ?
「・・・安全のために作っておいた小山が役に立ちました。」
「・・・・・。(本当なのだろうか?)」
「くぅ、まだまだ、負けたわけじゃないわよっ!!」
「そう?私から見たらどう考えても負けって感じがするけど?諦めたら?」
俺は今がチャンスだと思ったので・・・集中した。そして、自分の中で議論を交わし、激闘の末・・・・どのようなものを作り出すか決めた。
「・・・いけぇ!!」
俺はその力を一気に放出。途端、俺の思い描いたものは右腕を掲げたノワルと目をつぶっていたセレネを捕まえる。不意打ちのようで悪いが、勘弁してくれ。
「「・・・・。」」
お互い、黙った。そりゃそうだろう、誰だっていきなり羽交い絞めされりゃ、黙ってしまう。更に、もう一工夫・・・・。セレネのほうにな。
「な、な、なにこれ!!」
セレネが何かを言っているが、俺が気にする場合ではない。俺はセレネをソーラの元に送り届け、俺は同じように唖然としているノワルのほうへと視線を動かした。そりゃそうだ、誰だって目の前の敵が高速で移動すりゃ驚くだろうよ。
「なぁ、ノワル・・・今日のところはセレネを見逃してやってくれないか?俺と知り合った相手には傷ついてもらいたくないんだ。不意打ちとはいえ、こんなことも出来る奴がこっちには居るんだからな。俺の後ろに居るソーラって言う切り札が居るし・・・俺はお前にもできれば怪我してもらいたくねぇんだ。他人が怪我して苦しんでいる顔見るとさ、俺・・・気分悪くなるからな。」
「・・・わかった、零ちゃんの頼みだし・・・今日は見逃してあげるよ、セレネ。だけど、この前のシチューのお礼は今度、きっちり返すからね?」
俺は出来るだけノワルに見られないようにして右腕を動かし、彼女の束縛を解いた。因みに、俺が彼女たちを縛ったのは砂鉄の鎖だ。砂場が近くにあったし、まだ良く魔法を操作できないに違いないと思った俺はとりあえず想像できるものよりもその場にあるものを使ったというわけだ。一か八かでやるのは俺の性格上、無理だろうからな。それに、拘束するには縛るのが一番だろうよ。
やはり、さっぱりした性格だろうと踏んでいたノワルはあっさりといなくなった。まぁ、根はいい奴みたいだから俺みたいに不意打ちはしないだろう。まぁ、誰かに無視された場合は別だろうがな。きっと、話に加わりたいんだろうな。
「ちょっと、ソーラ、手伝わなくってもいいって言ったじゃない!私の実力で・・」
「・・・・私は手伝ってない。あそこまで完璧に動かしてセレネを助けたのは零時君。零時君は・・・・・もはや、何も実践では教えなくてもいいほど、強い。はっきりいって、セレネよりも、私よりも・・・そして誰よりも強い。」
どうも、お久しぶりです、皆さん。これからの展開は・・・いや、一章の話はプロローグみたいな感じです。二章から、この物語がはっきりと始まると思います。これからもよろしくお願いしますね。ご意見がある方はどうぞ、なんなりと言ってくださいね。




