表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Cold Heart, Sweet Love ~かかって来い、私の初恋!~』  作者: 季波


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/12

第5話「かっこいいの基準がおかしい」

凛の人生が終わった。



「これ落としたよ」

夜咲は何事もない顔だった。


「これ」

「……見ました?」

凛の声は震えていた。



「ん?」

「いや、表紙だけ見えたけど」



見えてる。

思い切り見えてる。

『夜咲先輩攻略計画』

見えてる。



「じゃあ俺行くね」 夜咲はノートを渡して去っていった。



美琴が言った。

「普通こんなわかりやすく書かないけど、凛は一途な故に書いてみてしまうのよね」



「褒めてないだろ、それ」

柊はノートを見る。

「見られるかもって発想なかったのか?」



「なかったわよ!」

「でも今の見た?」

「全然気にしてなかった」

「つまり、嫌じゃないってことよ!」



「嫌がられてるかもって自覚あったんだな」



「違うわよ!」



美琴は堪えきれず吹き出した。

「凛のこういう不器用なところ、可愛いのにね」



「不器用って言ってる時点で褒めてないだろ」 柊は小声で言った。



「そこ!」 「内緒話しない!」

凛が二人を指差した。



「今流行ってる物といえば!」

「ぬい!」

「ぬいなのよ!」

凛は勢いよく立ち上がる。



「先輩にそっくりな超かっこいいぬいを作るわ!」

拳を握りしめて宣言した。



美琴は笑う。

「うんうん!凛のその意気だよ!」



柊は興味なさそうに言った。

「まぁ頑張れ」



「ふふっ」

凛は得意げに胸を張る。

「完成したら二人に見せてあげる」

「感想よろしくね!」



「はーい」

「はいはい」



「手伝えることあったら言ってね!」

「すぐ行くから!」

「ありがとう、美琴!」



数ヶ月後。

「ジャジャーン!」

凛が教室へ飛び込んできた。



両手には大きなぬいぐるみ。

「完成したわ!」



「随分時間かかったな」

柊が言った。



「できたの?」

「見たい」

美琴が嬉しそうに言った。



「いいよ」

「これだよ」

凛は机の上に置いた。



二人は固まった。

「……」

「……」



凛は二人の反応に気づかない。



「見て、これ! 顔と目は3Dプリンターで出力したレジン製なの!」

凛は自慢げにぬいを掲げた。



「ほら、こうやって傾けると……」

カチッ。

重りが絶妙な重心バランスで動き、カチリと小気味よい音を立ててまぶたが閉じ、また開く。



「中を空洞にして、まぶたのパーツを精密に設計して組み込んだの。

この重りのバランス調整が一番苦労したんだから!」



さらに凛は熱っぽく語り続ける。

「牙は一本一本レジンを削り出して塗装して、体は抱き心地重視のぬいぐるみ仕様。



頭が重いから、首のジョイントも強化して安定させたの。……どう!? このハイブリッドな完成度!」

「そして体はぬいぐるみ仕様!」

「つまり可愛い!」 「柔らかい!」

「抱ける!」 「最強!」 「どう!?」



美琴が口を開いた。

「すごい……」



「でしょ!」



柊も頷く。

「うん」

「怪獣だな」

「ぬいではないな」



「でも」 「かっこいいでしょ」

「怪獣」

鋭い牙。 迫力のある目。 堂々とした顔。

「何がおかしいの?」

凛は首を傾げた。




美琴が吹き出した。

「そこなの!?」



「えっ?」



「凛の『超かっこいい』って怪獣なの!?」



「そうだけど?」

「それに黒目の塗装をパールブラックにしてるの」



「え?」



「光が当たると少しだけ青く見えるの」

「夜咲先輩の目を再現したのよ」



「そこ!?」

美琴は机を叩いて笑い始めた。

「待って無理!」

「凄さはわかるよ、でもさ!」

「先輩の再現ポイントそこなの!?」



「それくらい、かっこいいっていう表現なの!」

凛は慌てて言った。



柊は怪獣を見ながら言った。

「いや、色々納得した」



「何がよ!」



「お前のセンス」



「なによ!」

凛は怪獣を抱きしめた。

「こんなにかっこいいのに!」



美琴はまだ笑っていた。

「凛、将来ソフビ作る側になってそう」 「なんか普通に売れてそうだし」



「本当!?」

凛の顔がパッと明るくなった。



「怪獣限定で!」



「褒めてないじゃない!」



翌日。

「完成したの?」



声がした。

凛の体が固まる。

振り向く。

夜咲だった。

「よ、夜咲先輩!?」

「なぜ?」



「美琴って子から聞いたんだ」

「君が頑張って作ったから見てあげてって」



(美琴余計なこと言ったわね)



「怪獣のぬいぐるみ作ったんだって?」



「怪獣じゃありません!」

「先輩モチーフです!」

凛は顔を歪めた。

(しまった、本当のことを言ってしまった、違う、私の中では最高にかっこいいってことなんだけど)



夜咲は数秒ぬいぐるみを見る。

そして。

「すごいね」

「ちょっと見せて」



「え?」

「ど、どうぞ」



「手作りなんでしょ?」

夜咲はぬいぐるみを手に取った。



「……はい」



「目も動くし」

「牙も一個一個作ってるんだ」

「細かいところまで作り込んでるし」

夜咲はぬいぐるみを見ながら笑った。

「俺、こういうの好きだよ」



凛は固まった。

(それ、ぬいぐるみの話よね?)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ