第3話「好感度の化け物王子」
「ありがとうございます」
(近い)
(顔がいい)
(本当に王子だ)
(何これ)
頭が全然働かない。
「真白さん……だっけ?」
夜咲が首を傾げる。
「さっき先生にそう呼ばれてたよね?」
名前を呼ばれた。
凛の心臓が跳ねる。
「は、はい!」
大声だった。
「元気だね」
夜咲は笑った。
凛は固まる。
(笑った)
(今、私に向かって笑った)
脳内で鐘が鳴った。
「じゃあ俺、行くね」
夜咲は去っていった。
その背中が角を曲がる直前。
一度だけこちらを振り返った気がした。
「……気のせいよね」
凛は首を振った。
「あ」
凛は反射的に手を伸ばす。
何か言おうと思った。
でも何も出てこない。
凛は去っていく夜咲を見送る。
「凛何してるの?」
後ろから声がした。
振り向く。
美琴だった。
その隣には柊もいる。
「み、美琴!」
「ねぇ」
「どうだった?」
「どうって?」
「夜咲先輩のこと」
「何話したの?」
「教えてよぉ」
凛の顔が真っ赤になる。
「な、何でもないし!」
「うそうそ」
美琴はにやりと笑う。
「りんごみたいな真っ赤な顔して」
「凛、可愛い♥」
「してない!」
「顔は本当に赤いぞ」
柊が即答した。
「赤くないもん」
凛は顔を押さえる。
熱い。
絶対に熱い。
でも認めたくない。
「それで?」
美琴が身を乗り出した。
「何話したの?」
「べ、別に」
「たいしたこと話してない」
「やっぱり」
「話したんじゃん」
「……」
しまった。
美琴の目が輝く。
獲物を見つけた顔だった。
「何て言われたの?」
「ねぇねぇ」
「ねぇってば」
「うるさい!」
凛は恥ずかしそうに言った。
数秒の沈黙。
そして小さな声で呟く。
「名前……呼ばれたの」
「うん」
「凄いじゃん」
「友達みたい」
美琴が笑った。
「それだけじゃないわ!」
凛は勢いよく立ち上がる。
「笑ったの!」
「笑われて」
「名前呼ばれて」「それだけ?」
美琴は完全に面白がっていた。
柊はため息をつく。
「ちょろいな、お前」
「ちょろくない!」




