第26話「謎の組み合わせ」
気付けば夏休みも残りわずかだった。
スマホが鳴った。 美琴からだった。
「どうしたの?」
「暇」
美琴が言った。
「え?もう夏休み終わるよ?」
凛は即答した。
「だから遊ぼう」
「その理屈がわからない」
「いいじゃん、今年の夏は、二度と戻ってこない夏だよ!」
「はぁ、わかったわ」
結局。
二人はショッピングモールに来ていた。
服を見たり。
雑貨を見たり。
美琴は楽しそうに店から店へ移動していく。
「これ可愛くない?」
「可愛い」
「こっちは?」
「可愛い」
「もう」
「ちゃんと見てる?」
「見てる、見てる」
「美琴は何でも似合うから」
「本当〜」
「嬉しい♥」「じゃあこれと、これとぉ」「あとどれがいいかなぁ♪」
(うわぁ、余計なこと言っちゃった、本当だけど、これは長引くかもしれない)凛はじわっと脂汗が吹き出した。
気付けば昼を過ぎていた。
「凛ー」
美琴が手を振る。
「なによ」
「次どこ行く?」
凛は少し考えた。
「五分時間頂戴、見たいとこある」
「?」
向かった先はホビーコーナーだった。
「また?」
「またよ」
凛は新作のBOXトイやコレクションフィギュアを確認していく。
発売予定のポスター。
サンプル展示。
気になる商品を一通り見て回った。
満足である。
「終わった?」
「うん」
「じゃあ今度は私」
美琴は凛の腕を掴んだ。
(さっきも服見てましたよね?)
と思ったが、黙った。
「本屋行こう!」
「雑誌でしょ」
「ファッション誌です」
そんな会話をしながら本屋へ入る。
そして。
「あれ?」
美琴が足を止めた。
「どうしたの?」
「凛、見て」
凛も視線を向ける。
そして固まった。
そこにいたのは。
夜咲先輩だった。
それだけなら驚かなかった。
隣にいたのが。
柊だったからだ。
二人は雑誌コーナーで何かを見ながら話している。
しかも。
楽しそうだった。
「……」
「……」
「何あれ?」
美琴が言った。
「私に聞かないで」
「楽しそう」「何話してるのかな?」
「さぁ?」
「知らない」
凛は眉をひそめた。
確かに二人とも怪獣やソフビは好きになったらしい。
共通の話題はある。
だからといって。
休日に本屋で遭遇するほど仲が良かっただろうか。
「何見てるのかな?」
「模型雑誌じゃない?」
「柊あぁいうの読むの?」
「たぶん」
なぜか。
二人とも棚の陰に隠れていた。
「なんで隠れてるのよ私たち」
「なんとなく」
美琴はにやにやしながら言った。
「これはスクープよ!」
美琴は素早くスマホを取り出した。
「ちょっ」
「美琴やめなって」
パシャッ。
パシャパシャパシャ。
しかも連写。
「美琴!」
「証拠確保!」
「何の証拠よ!」
その時だった。
「お客様」
後ろから声がした。
二人はびくりと肩を震わせる。
振り向く。
店員だった。
「店内での撮影はご遠慮ください」
「あっ」
凛は即座に頭を下げた。
「すみません」
美琴は違った。
「すみません。でも本は撮ってません!」
堂々とスマホ画面を見せる。
そこには。
夜咲先輩と柊。
「人です!」
胸を張った。
店員は数秒固まった。
「他のお客様のご迷惑になりますので、本でなくてもご遠慮ください」
「あっ」
美琴はしゅんとした。
「はい……」
店員は小さくため息をついて去っていく。
沈黙。
「怒られた」
「当たり前でしょ」
その時だった。
「おい、何してんだ?」
聞き慣れた声。
「ひっ」
凛と美琴は同時に振り向いた。
そこには。
柊と夜咲が立っていた。
「何してるの?二人とも」
夜咲先輩まで不思議そうな顔をしている。
凛は視線を逸らした。
美琴はスマホを背中に隠した。
完全に怪しい。
「別に」
「別にじゃないだろ」
柊は呆れた顔をした。
「棚の陰からこっち見てただろ」
「見てない」
「見てた」
即答だった。
「お前らな……」 「普通に来いよ」 「なんで隠れてんだ」
「だって男子二人が雑誌見て笑い合ってたら、ただならぬ雰囲気感じるもんねー」
美琴は凛を見て言った。
「そうよ」 「紛らわしいのよ、二人とも」
「何で逆ギレしてんだよ」
「ふふっ」
「仲いいね」
夜咲は笑った。
「違います」
凛は口を尖らせた。
「ちげーわ」
柊も同時に言った。
「息ぴったり」
夜咲と美琴は笑った。
「そういえば」
夜咲は手に持っていた雑誌を開いた。
「これ知ってる?」
怪獣イベントの記事だった。
凛の目が輝く。
「もちろんです」
「そうだよね」
「はい」
柊が横から。
「さっきまで興味なさそうな顔してたのにな」
「してない」
「してた」
その後。 四人は店内をぶらぶらと見て回った。
「これ可愛くない?」
美琴は早速ファッション誌コーナーへ向かう。
「美琴お洒落好きだもんね」
「うん、可愛いは女の子の味方なの♥」
美琴は雑誌を開きながら笑った。
「この新作可愛い、今度見に行こうね」
「わかったわよ、今度ね」
その隣では夜咲が模型雑誌を手に取っていた。
「夜咲先輩もそういうの読むんですね」
「たまにね」
夜咲は笑う。
「服も好きだけど、こういうの見るのも好きなんだ」
「へぇ」
意外だった。
一方。凛は怪獣雑誌のページをめくる。
新作ソフビ特集。 イベント情報。 限定商品の紹介。
気付けば真剣に読み込んでいた。
「また怪獣本か」
後ろから声がする。
振り返ると柊だった。
「またとは何よ」
「いいでしょ、好きなんだから」
「知ってる」
柊は軽く笑って言った。
その手には怪獣雑誌。
そしてもう一冊。
「……何それ」
凛は表紙を指差した。
『うさぎと暮らす』
「ウサギの雑誌」
「見ればわかるわよ」
「耳タレウサギは耳の病気と歯に気を付けなきゃいけないんだよ」
「へぇ」
「特集やってたから見てただけだ」
「ちゃんと飼い主してるのね」
「当たり前だろ」 「家族だし」
「藤代くんって優しいんだね」 夜咲は笑って言った。
「俺も見てみたいな」
「藤代くんの家族」
「別にいいですよ」 「後で写真見せます」
「えー」
「実物見せてよ」
「はぁ」
「後で見せますよ」
帰り際。
「もう夏休み終わりだね」
夜咲が言う。
「ですね」
「文化祭も近いし」
「あー」 美琴が声を上げた。
「楽しみ!」
文化祭。
凛はふと思い出す。
(そういえば創作フェスも近いのよね)
(もし被ったら……)
(文化祭サボろうかしら)
「サボるなよ」
「!?」
凛は思わず振り返った。
「顔に書いてある」
「書いてないわよ」




