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『かかって来い、私の初恋!~』 『これが恋だって、気づかなかった。』   作者: 季波


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15/21

第15話「開封の儀」

凛と夜咲は近くのカフェに入っていた。

窓際の席に案内される。

メニューを開いた凛は、数秒で指を止めた。

「決まりました」



「早いね」

夜咲が少し笑う。



「はい」

自信満々に頷く。



二人は注文した。

数分後。

運ばれてきたのは、艶のある固めプリンだった。

「プリンです」

凛は満足そうに言った。



「見ればわかるよ」



「好きなんです」

目の前には固めプリンとミルクティー。

艶のあるカラメル。 丸いフォルム。

見ただけで幸せだった。

「昔からプリンは裏切りません」



「そんなに信頼してるんだ」

「はい」

凛は真剣に頷いた。

夜咲は少し笑う。

その前にはチーズケーキとアールグレイ。



「そういえば」

「さっき聞こうと思ってたんだけど」



「はい?」

「真白さんって、怪獣以外だと何が好きなの?」



「えっと」

「日記です」



「日記?」



「嬉しかったことだけ書くんです」



「嫌なことは?」



「書きません」

「忘れます」



「そうなんだ」

「意外だね」

「怪獣の話してる時とは、また違うな」

夜咲は笑った。

「それじゃあ」

「先に開ける?」



夜咲がテーブルの上の箱を見る。

「もちろんです」

凛の目が輝いた。

ブラインドボックス。

買った瞬間から始まる戦い。

何が出るかわからない。

それが楽しい。



「開封の儀です」

凛はバッグをごそごそ漁った。

取り出したのは、小さなペン型のレターオープナーだった。



「儀式なんだ」

夜咲が瞬く。

「それ、持ち歩いてるの?」



「当然です」

「ブラインドボックスは丁寧に開けたいので」

「夜咲先輩、先に開けます?」



「じゃあ先に借りるね」

夜咲は笑いながら箱を開ける。

ぺり。

中の袋を取り出す。

中身はまだ見えない。



凛も慌てて自分の箱を開けた。

心臓が少し速い。

「せーので開けます?」



「いいよ」

二人は袋を持つ。

そして――。

「せーの」



ぱりっ。

袋が開いた。

「おっ」

夜咲が小さく声を上げる。



出てきたのはドーナツ怪獣だった。

丸い胴体。 チョコレート色のコーティング。



頭にはカラースプレーみたいな角が生えている。

「可愛い」

夜咲が言った。



凛は思わず固まった。

「えっ」

「可愛い?」



「そんなに驚く?」



「いや」

凛は箱を抱えた。

「最初の感想が可愛いだったので」



「違った?」



「違わないです」

むしろその通りだった。



「よかった」

夜咲は嬉しそうだった。



凛は自分の袋を見る。

そっと開く。

出てきたのは――。

「やった!」

思わず立ち上がった。

小さなダルマ怪獣。

黄色と紫の体。 丸い青い目。



シリーズの中でも人気の一体だ。

「当たりです!」



「そんなに?」



「そんなにです!」

凛は即答した。



夜咲が笑う。

「真白さん、本当に楽しそうだね」



その言葉に。

凛は少しだけ動きを止めた。

楽しそう。



そうかもしれない。

好きなものの話をして。

好きなものを見て。

一緒にわくわくして。



気付けばずっと笑っていた気がする。

「……楽しいです」

ぽつりと言う。



夜咲は優しく笑った。

「よかった」

その一言だけだった。

なのに。

なぜだか胸の奥が少しだけくすぐったい。



凛は慌てるようにプリンへ視線を逃がした。

「いただきます」

スプーンを持つ。

一口食べる。

甘い。

落ち着く。



「どう?」

夜咲が聞く。



「やはり」

「裏切りませんでした」



「凄く幸せそうに、食べてたもんね」

夜咲は吹き出した。

凛もつられて笑う。



「俺のチーズケーキも美味しいよ」 「一口どう?」



「えっ」

凛は一瞬固まった。



「じゃあ交換で」 夜咲は取り皿に小さく取り分けた。



「……いただきます」

一口。

「美味しい」



「でしょ?」

夜咲が笑った。



「色んな真白さん見れて楽しかったな」



「……私も楽しかったです」 と言った瞬間、自分で少し驚いた。



夜咲も少し意外そうに目を丸くして、それから笑った。



窓の外では夕方の光が少しずつ傾き始めていた。


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