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やがて大河に


今朝は、なんだかみんながバタバタしている。いつもより急いで支度して、やたら綺麗に掃除して......

「まぁ来るのわかってたら、いつも通りちゅうわけにいかんわ」

あぁ、昨日の手紙の人。偉い人かな。


ピューンと鳥が、母屋の屋根に止まった。あれはフクロウ?あ、マシロが屋根に登ってる。カースケも来た。友達か?

「おーい。来るぞー」

ん?

作業場から、ぞろぞろとみんな出てきて並んでる。僕も一応端っこに並ぶか......

馬が2頭やって来た。

「やータケシ、カツミ。元気だった?」

「はい。おかげさまで」

「カツミ、ごめんね。急で」

「いえいえ」

ねえ、誰?隣のバルザにそーっと聞くと「国王陛下」

ゲゲゲっ。マジっすかー。

めっちゃフレンドリーに喋ってるけど。

タケシさん、あなたは一体何者ですか.......

国王陛下、ウンウンと頷いて職人達に声を掛けた。

「ご苦労さま。いい仕事ぶりは耳に入っているよ。これからも頑張ってくれたまえ」

「はっ!」みんな礼。僕も礼。

「手を取らせたね、仕事に戻ってくれ」

タケシさんが手を挙げるとみんな仕事に戻っていった。

「じゃあタケシ、説明して」

「はい、こちらに。アキラ、こい」

ウッソ。呼ばれた。

「君がアキラ君。そう、僕はカイル。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

井戸にはポンプを設置してある。ハンドルを押すとザーッと水が出た。

「うわっ。すごい」

「これはすごいですなー」

「ねえどうなってるの?」

え?僕に聞くの?

「え、えっと.....」

「母屋に行きましょう。図で説明します」

ふぅ。よかったー。


母屋では、タケシさんが図を広げて説明してくれた。

「これはすごい技術ですね」

「うん。リゥトス、使えるね。色々」

「はい。特に地方都市はまだ井戸に頼っているところが多いですし」

「タケシ、量産は可能?」

「いえ。まだ試作品です。耐久試験もまだなので、製品化には1年は見ていただかないと」

「で、その後量産出来る?」

「人手があれば」

「買い取ってもいいよ」

「そうですね。それも考えましたが......」

「準国営でもいいよ」

「開発費と初期費用だな」

「はい。まだこの先別の製品化もあると思います」

チラッとアキラを見た。

なんかデカい話になってきたけど......

「よし、じゃあそこは保留。開発費は面倒みるよ。本来こういう事は国の事業だしね。で、国から技術者を寄越すから、詳しい話はそちらにして欲しい。

まず製品化。それと他の利用方法も考えよう。

で、当然極秘だよ」

頷くタケシ。

「ねえあの道具、名前なんていうの?」

僕の顔を見たタケシさんが「アキポン」と。

がっくりうなだれた。


「アキラ、こちらがリゥトス」

「始めましてアキラ君。リゥトス=サカモトだ。よろしく」握手した。

「王都でな、カイエンタイを率いてるんだ」

カイエンタイ?サカモト?

チラッとタケシさんを見るとニヤッとしてる。てことは?

「ま、わかるかな?」

「坂本龍馬?」

「あぁ、私の父だ」

マジっすかー。もう僕ついていけません。

なんで?なんで?どういうこと?

「またゆっくりタケシに聞いておきなさい」

「はい」

「ねえ君、年は?」国王陛下が僕を見た。

「あ、17です」

「そう。ねえタケシ」

「あげません」

「ケチ」

なんでやー。なんだー。今の会話ー。

「こいつはまだこれからです。知識はありますが経験不足です。せっかくの知識も使えていません。当分出せません」

「そっか。残念だけど、ここで伸ばしてくれるなら、きっとその方がいい。そうだ、アキポンは彼に任せてみれば?タケシも会社増えると大変だし」

「そうですね。ありですね」

いや、なしでしょー。

「準国営で任せるのがベストかもね」

いやダメでしょー

「それも含めて考えます」

「うん。頼むよ」



カツミさんがお昼ごはんにしようというので、僕は失礼させてもらった。

もう無理。倒れそう。

台所にいたら、座敷からーー

「うっそー」の合唱。なんだ?

しばらくするとカツミさんが戻ってきて僕に昼ごはんを作ってくれた。

「カツミさん、これって」

「エヘヘ。食べてみ」

ズズッ。ズルズルッ。

「カツミさん。すごいです、

ラーメン食べたかったんです」

まさしくこれはラーメン。ちゃんとチャーシューとメンマが乗ったラーメンだ。

「やっと麺が完成したんよ」

「すっごくモチモチっと、コシがありますね」

「うん。苦労したわ」

「何入れたんですか」

「聞きたい?」

いや、ちょっと怖い。

「エヘヘ。スライム」

「うっそー」


「カツミさーんおかわりー」国王陛下の声だ。

「はーい」って。

一体何なんだこの家.......

乾燥スライムを粉末にして練り込んだそうだが、もう思いつきの域を超えてるぜ。うまー♪ズルズル。

僕もおかわりしよっかな。

賑やかだ。カツミさんの笑い声。すごい人だ。

柔軟な思考。独創性。こんな世界で、ここにあるもので、欲しい形を作り出す力。

タケシさんとはまた違う。でも同じ方を向いている。

僕にも......できるのだろうか.......

あ。カツミさん戻ってきた。

「おかわりいけます?」


国王陛下はさんざんおしゃべりして帰って行った。

「カツミさーん。ラーメン屋、待ってるねー」と、言い残して。

「カツミさんラーメン屋やるんですか?」

「いやいや。そう簡単には行かないんやで、これが」

「でも絶対売れますよね」

「アキラ君やってみる?」

「いえ。僕は試食係がいいです」

「ほんま?いや他にもなー、いろいろあるんよ」

げ。地雷か?

「アキラ君も考えてみて、スライムってすっごくいろんな特性があってさ」

水質で味が変わることは聞いてた。

何でも食べるからゴミ処理係に最適。で、単体生殖っぽい。分裂で増えるみたい。

乾燥するとペラッペラ。それを戻すとモッチリ食感になる。

冷やさなくてもひんやり冷たい。

ん?冷たいかー。氷ないから貴重だよね。

なんか浮かびそうやけど......これしか出てこない「ヒエピタ」

「お、アキラ君いいところに目をつけた。でもなーさすがに直置きはちょっと嫌やん。かといって袋入れても食っちゃうかもよ」

あぁー。

「てなことを、まぁつらつら考えてるのよ。で、たまーに当たるだけ」

「わかりました。つらつらですね」

「うん。つらつら」

極意かも。


馬車に乗れるようになり、町に一人で行く許可が出た。ただし、カースケが一緒だ。タケシさんは僕用に古い馬車を改装してくれた。

行きたいのはオモジイ雑貨店。何度行っても必ず変なものが見つかる。オモジイの話を聞くのも楽しい。それにやっぱり発想が一味違う。カツミさんがアルバイトしてたっていうのも納得だ。

それから噴水広場でカレーを食べて、帰ろうとすると、カースケが肩にとまった。

カースケが見ている方.......あれ?煙?

人がバタバタ動き出す。バケツを持ってみんな走っていく。火事だ。

幸いすぐに火が消えたようで、みんな戻ってきたがーー

んー。

なんかこれ、ひらめきの予感?





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