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王子様登場


その日、タケシは町の門に来ていた。

あー。なんでまた......面倒やなぁ。

門から離れたところに黒馬車を停めて、門を入る馬車を見ている。門番のサルコーには言ってあるけど......

古い馬車、乗っているのは若い男女か、違うなぁ....ん?サルコーが手を振っている。あれか?

タケシの黒馬車の前で馬車が止まった。慌てて降りる。

ヒョイと御者台を降りたのは、よく日に焼けた若い男だった。

「タケシさんですね。ルーク=アウレリウスです。よろしく」

と、がっちり手を握られた。

「タケシ=コンドウです。よろしくお願いします」

こいつ、思いっきり握りやがって。でもこれが......カイルの息子。

「じゃぁタケシさん、行こう。僕こっちに乗る」

ルークは黒馬車の御者台にヒョイと乗った。

やれやれ。なんかめんどくさそう。

タケシが御者台に乗ると、ルークは横でにっこり笑った。

「では」タケシは手綱を振った。


ルークは19才。カイルに命じられて、2年間国内の町を巡っていたという。

「やっと帰ってきたと思ったら、また行けって言うんだよ。父は僕のこと嫌いなのかな」と笑う。

いや。違う。国の状況を見せたのだろう。第1王子は確か軍人だ。ルークは第2王子。外に出して国民の暮らしを調べさせた。だから、ここに来た。

「あの子はね、サーシャ。うちの技師」

女が来るとは思わなかったが、とても優秀だと言う。

「ルーク様、まず宿舎で休まれますか?.....」

「タケシさん。王子扱いはしないで欲しい。僕は一文官としてここに来た。呼び捨てでいい」

そっか。そういうタイプなら.....

「わかりました、では。ルーク、腹減ってないか?」

「そうー。ラーメン食べたーい。父がさ、自慢するんだよ。ほんっとたまんないよ」

「じゃあ家に行こう」


家に着くと、ルークとサーシャは早速井戸へ。

「これがアキポンか」

タケシが水を出してみる。

「すごい。な、サーシャ」

「はい。図面が見たいです。あ、漏れありますね」指でなぞった。

「後で構造の説明をするから。おーいカツミー」

「はーい」カツミが出てきた。

「あ、カツミさん。ルークです。すっごくお世話になってます」

「?」

「ノマドのお得意さんだとさ。ラーメン出来るか?」

「うん。ちょっと待ってもらえば」

「じゃぁ頼むわ」

ルークとサーシャは勝手にあちこち見始めた。

ルークは座り込んでペータのカートを、サーシャはアキラのところでスライムに興味津々のようだ。

あれ?アキラ、顔が赤いな。そりゃそうだよなー美人のお姉さんだし。

「どうぞー出来ましたよー」


「おいしいー。カツミさん、この麺、初めてだ、こんなにシコシコしてるの」

「あーそれは......」

「えぇー。スライムなんだー」

「す、すごいですね。スライム。無限の可能性を感じます」

「おいおいサーシャ、君はまずアキポンだよ」ズルズル

「はい。もちろん分かっていますよ」ズズッ


「おーいアキラー」

台所でラーメンを食べていたら、呼ばれた。

「はーい。今行きます」スープを飲み干して立つ。

「こちら。ルークとサーシャ」

「アキラです。よろしくお願いします」

「アキラ君。図面見せて」

「はい」図面を広げた。

「俺が説明するわ」

若そう。でも国の事業に関わってるんだ。

「大体わかったよ。アキラ君、君すごいね」

「いえ、僕は何も......」

「君のアキポンが国中に広まる。僕がちゃんと道を作るからね」

アキラが固まった。

「じゃあ工房を案内するよ、アキラも来い」


黒馬車の後ろにルークの馬車が続く。工房はコンドウ馬車工房の一角を改装した。

「タケシさん、ルークさんておいくつ?」

「19だと思う。はーん。もっと上だと思ったんだろ」

「うん。まさか10代とは......」

「2年、国中を見て回ったんだと。お前も負けられんな」

「勝ち負けじゃなくてさ、めっちゃ自信があるんだなって」

「そりゃそうだろ。あのボロ馬車で平民のフリをして回ったんだ、いろいろあったと思うぞ」

「そっか......」

いい刺激だ。アキラにとって。

「んでお前、何作っとったん?」

「あーあれは、消火玉。でもイマイチなんだー」

「そっか。まあ頑張れ」


「ここだ」重い扉を開いた。

「あー。これがコンドウ馬車工房の本拠地か。あっちはノマドの工房?」

「あぁ。じゃぁ中へ」

カーンカーン。鉄を打つ音が響いている。手前では馬車を作っている。その片隅に囲われた区画。

「おーいベルディ」「はーい」

「ちょっとうるさいが、ここが一番安心なんだ。機密性がな。ベルディ、こちらルークとサーシャ」

「サーシャ、ベルディは馬車工房のリーダーだ。試作は彼に言ってくれ。で、これが試作データ」ドサリと書類。

「ありがとうございます。助かります。まずこれを検証して.....」パラパラめくる。

「さすがタケシさんですね。段取りがいい」

「試験井戸は外だが、衝立てで目隠ししてあるから」

ルークは囲いを出て馬車を見ていた。

「あー。これが板バネサスか。ねえタケシさん」

「ん?」

「お願いが」

「ん?」

「僕の馬車さー。直してくれない?もうガタガタでさ」

「あぁ。わかった。ピッカピカにしてやろう」

「黒いのがいい。タケシさんのみたいな」

「はいはい。ベルディ、表のやつな。暇な時でいいぞ」

「では代馬車を出してきます」



「ルーク、宿舎に案内しよう」

「宿舎?」

「ああ、3部屋準備してある」

まったく、王子だなんて言うからめっちゃ手がかかったんだぞ。

「あ。僕はタケシさんちがいい」

「え?」

「サーシャは、僕の部屋を使わせてもらいなさい。僕は......」

アキラの方を見た。

「うん。アキラ君の部屋に居候する」

ギョッとするアキラ。

あー。まあいいか。年も近いし。床でもこいつなら平気だろ。

「じゃあそうしよう。アキラいいな」

「うぐぐ」ベッド1個やのにー

「よろしくね、アキラ君」

がっくりうなだれるアキラだった。



「タケシさん。ほんっとアキラって面白いね」

ルークはあれからアキラにつきまとっている。朝から並んでおにぎりを食べ、時々一緒に町に出る。

「アキラ君の部屋ってさ、ちょっとオモジイ化してるよ」

神様達にも、アキラが紹介して回ったらしい。

「今は小さいものだけど、組み合わせると面白いことになりそうだよ」

そう言うと、最近アキラは楽しそうだ。ルークと気が合ったんだろう。毎晩ぎゃーぎゃー騒いでいるのはちょっと困るけど。


週に一度、ミーティングで進捗確認。2週おきの定期便で王都に報告を上げる。

サーシャは、1か月後には基本構造を決め、各部品の材質のテストに入っていた。

アキポンのシリンダーは数年置きに交換が必要になるだろう。木製に革、劣化が最大の敵だ。部品交換がしやすい構造も重要だ。


「見てくださいー♪」

ん?今日のサーシャはテンション高いな。

「これなんです」出してきたのは革。

「これ、新素材です」革じゃん?

「スライムコート革」

「えぇ?スライム!?」



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