表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/28

弟子とプニプニ


ミナセに帰ってきたタケシとカツミは、早速各々の作業に取り掛かろうとしたのだが......

「バルザ、どないした」

「いやぁアイツなんですが」

一人の少年を指差した。

最近バルザに弟子入りしたハーフドワーフ。まだ15才だ。

「なんぼ言うても休まんのです」

「あー、バルザもクルトーも最初はそうやったで」

「そうなんですがね。困るんです。目の届かんとこでアレコレ触りよる。やりたい気持ちも興味あるのもいいんやけど」

「まだ何もできんのやろ」

「ほかの鍛冶師の邪魔にもなって」

「あぁ。バルザも休めんな」

「そうなんですよ」

タケシは工房の全員に、週1日の休暇と作業中も2時間置きに休憩を入れるよう撤退させてい

た。

「あんまり言う事キカンのやったら辞めさせたら」

「いやそれが......」

タケシは、先のスパイ騒ぎ以来、工房の従業員達の裏スキルを、オモジイに頼んでチェックしてもらっている。もちろんそれはカツミの工房も含めて。

「オモジイのチェック案件です」

え?スパイ?

「いえ。そっちじゃなくて」

見どころあるからよう見たり。と言われたらしい。

「あー。当たるもんな。バルザもオモジイが鍛冶屋に連れていけって言うから、そこからやもんな」

「そうなんですよ。うまく育てなあかんのに」

「うん。俺がちょっと言うわ。まだ子供や。バルザ、頭ごなしに怒るんやろ。俺が休む意味、話して聞かせる」

「すんません。お願いします」


タケシはその少年を呼んで、外に連れ出した。

草の上に並んで座って、ゆっくり話す。

休日の意味。休憩をはさむ意義。

仕事は集中力が切れるとミスが出る。そのためのリズムを作っていること。

きちんとした段取りと計画的な作業が品質を生むこと。

「これな」

タケシが左手を広げると、大きな傷があった。

「俺も昔は無茶やって、指飛ばしかけた」

開いたり閉じたりする手を、じっと見ている少年。

「......」

そして、弟子と師匠の関係。

「でも僕、早く覚えて一人前になりたいんです」

「あんな。急がば回れって言うんや。

焦って中途半端な事やってもなんにも身につかん。

バルザはお前の師匠や。どう育てるか、ちゃんと考えとるのに、弟子がそれ壊してどうするんや。黙って付いて、言われたことをきちんとやる。それができんとお前、次には進めん」

少年はションボリとうつむいた。

「わかったか?」

頷く少年。

「ほな、バルザのとこに行って、ちゃんと謝ってこい」

少年は駆け出した。


「ふー」タケシは空を仰いでため息をつく。

あー。めんどくさ。しゃあないけど。

ゴロリと寝転んだ。

やっぱりバルザもやけど...ハーフドワーフって、何か持ってるんかなぁ......

カーンカーン。鉄を打つ音が聞こえてきた。



その夜は、タケシの家に、従業員達が集まった。

母屋の広間には馬車工房の職人と鍛冶師達。カツミのスパイス工房にはクレスの正規メンバー。


母屋ではタケシがアルナ出店を報告すると、どよめきが上がった。

「アルナは、向こうにおる職人を出してもらうことになってる。こっちの工房でも、サスの取り付け作業受けることになったから、そこに3人専任でおく。で、鍛冶師は一人アルナに行ってくれ」

「わかりました。ここの人選は私がやっていいですか」リーダー格のベルディだ。

「鍛冶師は私が」とバルザ。

「あぁ。任せる。バルザ、鍛冶師足りてるか」

「市販が始まるとちょっときついですな」

「じゃあ増員の方向で」

細かいことまで詰めて、その後は酒だ。

バルザの後ろに座って、さっきまでメモを取っていた少年に、タケシはハーブ水を渡した。

少年はペコリとお辞儀した。


カツミの方はクレスカレー工房の従業員4名と事務方2名、カレー店の調理人1名。細かい作業や売り子はアルバイトでまかなっている。

「お土産でーす」

7人の目の前に何やら不思議なものが......

「食べてみて」

カツミにそう言われると断れるわけもなく、みんなとりあえず口に入れてみる。

「何ですか?これ」

「蜜かけてますよね」

「プニッとしてて冷たいなぁ」

ニヤけるカツミ。

「ふふーん。それな、スライム」

ブハッと吹き出す奴がいる。

「大丈夫なんですか?こんなもん食って」

「遅いわ。飲み込んでもた」

「うん。これ綺麗な水で育てられた食用スライム」

エヘヘ。そういうことにしよう。嘘じゃないし。

「これ、クレスカレー工房の新商品になります」

「えぇー!?」



翌日から作業開始。

カツミとタケシは井戸のそばにノマドの保管箱を並べた。

井戸水を張り、スライムを入れてエサのハーブを入れて蓋をする。

蓋は大きく穴を開け、網を張った。

プニョプニョ動いているスライムを見て、タケシが言う。

「ほんまにこれで行けるんか?」

「うん。たまーに水変えしてやればいいって。基本的にスライムって雑食やから、汚いもんも食べちゃうんやて。食用するなら、水さえ綺麗にキープできればいいみたい」

「へー。あぁそうか、それで排水とかトイレとかにええんや」

「うん。でな、また思いついたんやけど」

「俺、お前のその思いつきっての、めっちゃ怖い」

「いや、前に言ってたやん、馬車の馬糞取る装置」

「あー。あれ、途中で止まったままやった」

「糞貯めるとこにスライム置いといたら消えるで。多分」

「お?」

「ほんで長距離でも問題ない」

「おお?」

「もしかしたらパッカー車作れる」

「うぉー。一気にデカなった」

「前向き検討を」

ーープニッ♪

「まあ今の仕事すんでからな」

クルッと背中を向けたタケシが

「ありやなぁ。うん」とつぶやいた。



週に1度のスタッフ会議は試食会。

スライム3種類、ソース3種類と謎の粉がテーブルに置かれている。


「はいはい、みんな自分で皿にとって、ソースとの組み合わせも考えてな」

一口大カットしたスライムが、器にてんこ盛りになって揺れている。

ーープルン♪

みんなの顔が暗くなる。

「あのカツミさん。私お腹空いてませんので......」

「こんなもんチュルンで終わりや」

「いや、なんぼ何でもこれでは......」

カツミは自分の皿にとってソースをかけてチュルンと食べた。

「うん。美味しいで」

「いや、何かこんな山盛りにされると......」

またカツミは別の組み合わせでチュルン。

「あ、こっちもええな」

「カツミさん、あの」

「何?」

「せめて見た目変えてください。んで、全種類は無理です。一人3つくらいで」

「もー、めんどくさいなぁ」

と、カツミがスライムとソースを持って台所に行った。

「どうなるかとおもた」

「3つやったら我慢できるやろ」

「いや別に嫌いじゃないけど、山盛り見たら引くよな」

「カツミさん止められるのタケシさんだけやし」

「あ、タケシさんおったな、呼んでこよ」

そうこうしていると、カツミが戻ってきた。

小さな器にスライムを入れ、ソースをトロリとかけて、ミントの葉を飾っている。

「はいはい。これでどうよ」

「あ。食べもんに見えます」

「はよ食べ」

タケシが入ってきた。

「あ、タケシええとこに来た」

これ食べてみて、と出された皿には謎の粉をまぶされたスライム。

「えぇー俺?」周りは知らんふりしてる。

クソっこいつら.....

ヤケクソで口に入れて......

もぐもぐ.......みんなこっそりタケシを見た。

「ん?カツミ、これ......わらび餅や」

「どうよ」

「ああ、俺こっちがええな」

「わらび餅って何ですか?」

あ。分からんわな。

「こんな食べ物」と皿を指す。

「きな粉あったんか」

「きな粉って何ですか?」

あかんわ。カツミをチラッと見る。

「大豆っぽい豆を粉挽きで挽いてみたんや。香り香ばしいし合うんちゃうかなーって。スライムに蜜かけてからたっぷりまぶしてみました。

エヘヘ。スライム餅」

やっぱりスライムだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ