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軍備と快眠

パーン! バシュッ!

「やったー」飛び跳ねて喜ぶ男達。

川に立てられた木の周りが、白くもやっている。

「おーっし」ガッツポーズのリゥトス。

「完成やな」タケシが手を出すと、がっちり握り返した。

子供達の歓声が響いている。

カイエンタイのパチンコ大砲が、やっと目標の射程距離に届いた。

「あー。やっと出来たな。どうなるかと思ってたけど」

「簡単そうなもんほど難しいもんや」

「これ、やっぱりここでは無理か」

「あぁ。パチンコや言うても完全に軍備やろ。工房では作りたくないし、正直そこまで余裕ないな」

「アルネシアの工房でなら」

「あそこはカイエンタイ直結やからええで。職人も増えてきてるしできると思うけど」

「けど?」

「球。問題はこっちや」

「今まではアキラのとこで作ってたんや。中身ただの粉にして」

「向こうで作るとなると、カメスラパウダー送って.....ボールにするのも技術いるしな」

「アキラ君に頼んでみるか」

「そやな」


「ということで、ここで作ってもらえんかな」

「んー」

「な。」

「いいっすよ。カメスラボールのライン使えるから」

「その代わりーー」

アキラがニヤッと笑って、作業机の端をトントン叩いた。

「名前、変えましょう」

「……名前?」

「“パチンコ大砲”はアカンっす。おもちゃみたいでなんかパッとせんし。カッコええのにしません?」

「まあ、せやな」

「だからこう……子供にも人気出そうな感じで」

「人気いらんやろ軍備に」

「いや大事っすよ。夢がないと」

アキラは紙を広げた。びっしり名前候補が書いてある。

『スーパー遠投くん』 『ドカーン1号』 『飛び丸』 『カメドン』 『ビッグパチ』 『カイエンタイくん』.......

「お前...センスない」

「じゃあタケシさん案あります?」

「……遠距離制圧型弾性投射器」

「もう一回言えます?」

「遠距離......」

「ほら」

「んー。そやリゥトス。うちには名付けの神がおる」

「神?」

「バルザさんっすか。やっぱ」

「鍛冶師だよな」

「神っす」

「.......」

「いや、本題はここからです」

アキラがスッと真顔になる。

「ボール量産するなら、専用窯ほしいっす」

「窯?」

「今の工房の炉やと温度ムラ出るんですよ。あと粉飛ぶし、湿気るし、職人から“鼻の奥がカメ臭い”って苦情来てるんで」

「マスクさせ」

「だから、防湿庫付きの専用ライン。あと混ぜる機械も欲しいっす」

「機械?」

「人力で混ぜると、毎回微妙に飛距離変わるんですよ。こないだガルドさん混ぜたやつ、途中で空中分解しましたし」

「あれお前の配合ミスちゃうんか」

「バレました?」

「バレるわ」

リゥトスが腕を組んだ。

「費用は?」

「そりゃカイエンタイ持ちでしょ。てか国防費でとったらいいでしょ」

「お前ぇ……」

「いやでも、これ量産始まったら絶対忙しくなるんすよ。だったら最初に環境整えたいっす」

タケシとリゥトスが顔を見合わせる。

「……まぁ」

「正論やな」


「お前に似てきたな、アイツ」

「たまに負けてる気がする」

「まぁでも、ちゃんと見通し立ててやれてる。あの若さで。凄いことや」

「カイルが欲しがるのも無理ないか」

「そうだな」

「でもやらんで」

「だよなー」

「でもカイルかて、ええ息子育てたな」

「ルークは、一番カイルに似とるな」

「あぁ。飄々としてるのにやること抜かりない」

「街、変わったか」

「そら、そこら辺で串焼き食ってる領主なんかおらんやろ、普通」

「みんな名前呼びだしな」

「それが出来る度量の広さ、あの若さでな」

「慕われてるか」

「あぁ、ええ領主や」


「あっ。タケシいたー」シュルー。

ルークがキックボードでやって来た。

「お前も商会からパクったんか」

「え?なんでわかる?」

「わかるわ」

「だってさ、ナターシャが貸してくれないんだもん」

「ほんまにもう」

「あのさー。マットすっごく良かった。体痛くなんないし」

「そりゃ良かった」

「もう一個欲しい。ナターシャに取られた」

「はぁ?」

「僕もう床には戻れないよー」

「あー。わかった」

「じゃあお願いねー」

シュルー。

「なぁ、床に寝てたんか」

「お、おぉ」

「領主がか」

「.......」

「.......」





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