街の顔
ガラガラガラガラ......
工房前を2台のブルー馬車と1台の白馬車が出ていく。
ポンプキャラバンは国内の井戸にポンプを設置して回っている隊だ。
ガラガラガラガラ.....
黄色の馬車とブルーの馬車が出た。
ナターシャの故郷の国、グラニオスに向けた隊は、ノマドとポンプを運んでいる。
ガラガラガラガラ......
黒い馬車と白い馬車。
王都アルネシアに向かう便は、アルネシアの工房へ部品や資材を乗せて向かう。
ガラガラガラガラ.......
入れ替わるように、様々な荷馬車が納品に現れ、工房前の荷下ろしが始まる。
ゴウゴウと動く工房内は、制服姿のスタッフが整然と作業し、後ろを籠付きキックボードが走り回っている。
カーン
鐘が一つ鳴ると、工房から人が動き始め、食堂に向かった。
賑やかなランチタイム、隅ではオセロで盛り上がっているようだ。
「これ、便利だねー」
ルークがテーブルに置かれたソースの瓶をポンと開けて、定食のオークフライにかけた。
瓶にはゴムの蓋がぶら下がっている。
「ちゃんと蓋せえよ」「あ。はいはい」
「まぁちょっと思いつきやけどな」
「研究室で作ったんでしょ?売り出さないの?」
「うちはもうこういう細かい物やる余裕はないからな、街に下ろす」
「そう言うと服屋で座布団売ってた」
「そやろ、最初カバー作ってもろたんよ。ほな自分のとこで全部やりたいって言うから、板スポンジだけや、うちからは」
「へー。みんなヤル気出てるんやね」
「端材のスポンジは瓶屋が持っていくんやと。箱詰めする時の詰め物にしてるってさ」
「そっかー」
「物があったらみんなが考える。それでええ」
隣のテーブルで、カツミがとサーシャが、マシロとカースケとカメキチに定食を分けている。ガツガツ眷属たちに、2人は自分の分を食べる間がなさそうだ。
「なんかもう微笑ましいを通り越してるねー」
「キュル?」「カ?」「ピュッ!」
「わぁぁぁー」
カーン
「あー。早く食べなくちゃー」
ーー「おーい。いくぞー」職長の声。
「オーっす」
「このままにしてー。続き明日や」
「はよせんかい」
ドテッ。あ、コケた。
「アキラ、ショーボーポンプどないや」モグモグ
「あー。ちょっとダブルで押せるように改良中ですわ」ズズッ
「シーソーみたいなんか」モグ
「そうそう」ズズー
みんなで晩ごはん。ではなく.....会議だ。一応。
わちゃわちゃしている中、ナターシャが、立ち上がってどこかへ。カツミがサッと後を追う。
「どうしたんかな?」
「さぁ?ほんで次はだれ?」
「はい、ワシの方は......」
カツミだけ戻ってきて、ルークの耳元で何やら囁いた。
みるみる顔色が変わるルーク。
「それ、間違いないね」
「うん。エレナの時もあんな感じやった」
「そっかー」
「どないしたんや?」
「エヘン♪ 僕、パパになります」
「えぇー!!」
「ほんまか」「それはめでたい」
「タケシじいじ、おめでとう」「なんでやねん」
「エリスのおんぶ紐置いてるで」「マジか」
がっくりうなだれるタケシ。
「キックボード禁止や。取り上げとけ」
といいつつ、ベビーカーのイメージがフッと浮かぶ。
「アカン、また仕事増えてまう.......」
「すまん、遅れた」
タケシが入ってきたのは役所の会議室。月に一度、区長の集まる区長会議で、ルークとギルド長も集まっている。
「おー。ええとこに来た」
「ほんまええとこに来た」
「何や?」椅子に座ると、テーブルに紙切れが置かれている。
「さっき決まったんじゃが、満場一致じゃった」
「何が?」
「おめでとう、初代街区エリア総代表」みんなの拍手。
「?」
「この会議のまとめ役じゃ」
「あんたしかいないでしょ」
「いや、何を勝手に」
「んじゃ、も一回やり直すか?多分一緒じゃが」
「あきらめなよ、タケシ」とルーク。
頷いているギルド長の神様達。
「クッソー」髪を掻きむしるも....タケシの頭.....ハゲている。
「クッソー!!」ハンチングを叩きつけた。
それから、タケシが街に出ると、「総代ー」と声を掛けられるようになったのだがーー
「俺は便利屋ちゃうわ!」
好き放題に陳情してくる。
区長を通せと言ってもお構いなし。
「絶対面白がってる.....」
「いいんじゃない、愛されてるねー」
「ちゃう。おもちゃにされとるだけや」
そのうち子供までが....
「ボスー。あそこ穴空いてるー」
「かしらー。おなかすいたー」
「ヘッドー。串焼き買ってー」
名前まで一人歩きし始めた。
「うるさいわー」
怒鳴り散らすと、子供達がキャーキャー笑いながら駆けていった。
「カツミー助けてくれー」
「ん?いや」
「なんでー。元はお前のカレーやろが」
「タケシの馬車やん」
「お前の方が向いとるやろ」
「あの無口なタケシはいずこ?」
「俺かてこんなつもりない」
「ええやん。今のタケシも、うち好きやし」
「クッソー!」




