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紗夜の涙と、最後のステージ
その時、ずっと沈黙を守っていた紗夜が、蓮の前に立ちはだかった。
彼女はコトシロを真っ直ぐに見据え、
初めて自分の胸元から一振りの、古びた錆びた小刀を取り出した。
『 ……まだ、終わらせない 』
紗夜の強い意志が、空間を震わせた。
コトシロは肩をすくめて笑った。
「おや、境界の聖母。
……いいでしょう。
彼にはまだ、最後の大仕事が残っています。
……数万人の人間が、国立スタジアムで待っていますよ。
……自分たちが溜め込んだ『毒』を、
あなたの身体ごと粉々に砕いて、浄化したいと願っている」
コトシロが指を鳴らした瞬間、蓮の視界が歪んだ。
クチナシの村が遠ざかり、
代わりに耳を劈くような、
数万人の歓声が聞こえ始める。
蓮は、自分が再び「現代」へと、
あの熱狂の檻へと引き戻されていくのを感じた。
だが、今の彼は知っている。
自分を待っているのは、カーテンコールではない。
「正義」という名の狂気に染まった、獣たちによる祝祭——解体ショーだ。
蓮は、石化した指先で紗夜の服を掴もうとしたが、
その手は虚空を切った___。
第肆章、完。




