裸の王様と人形の街
蓮の帝国は、外側から見れば完璧だった。
かつての宿敵・鬼童は、今や蓮の「専属の靴磨き」として、
スイートルームの入り口で一日中跪いている。
鬼童の脳は完全に破壊され、
蓮の許可なくしては呼吸をすることさえ忘れるほどの廃人と化していた。
だが、帝国の内側は、死臭の漂うほどに静まり返っていた。
蓮に仕えるスタッフたちは、
全員が蓮の「強制発火」によって感情を去勢された人形だ。
彼らは蓮の望みを先回りして叶えるが、そこに自発的な意志はない。
「……何か面白い話をしろ」
蓮が付き人に命じる。
「はい、蓮さま。今日も世界はあなたを愛しています。
あなたが右を向けば太陽が昇り、左を向けば……」
「……もういい。消えろ」
蓮は苛立ちと共に、コップの水を床に投げつけた。
誰も自分に逆らわない。 誰も自分を叱らない。
かつて鬼童に虐げられていた頃、
あれほど欲しかった「自由」と「肯定」が、
今は自分を窒息させる真綿となって首を絞めている。
蓮は次第に、紗夜に対して「自分を拒絶すること」を強要し始める。
わざと彼女の嫌がることを言い、彼女を傷つけようとする。
だが、紗夜は怒ることも、泣くこともない。
彼女はただ、声を失った唇を固く結び、蓮を見つめ続ける。
その眼差しは、蓮に突きつけられた
「お前はもう、人間ではない」という宣告だった___。




