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ダムと魔脈と巨大魔獣 6

「まずは根源となる南側に水流を戻そう。カイ、頼むぞ」


 フェイリアがカイに魔法をかけると、全身から仄かに光を放ち始めた。空気の層がバリアになって水に濡れるのを防ぐという。


「湖底に沈もうが問題ないはずじゃが、カイはマッドゴーレム。要するに保険じゃな」


「水の中でも自由に動き回れるってこと? すごいすごーい、あたしにもかけてよぉ」


「諦めろ。人間に使えば呼吸ができぬ。ゴーレム専用じゃて、カッカッカ」


 ダムの堰を伝って流木まで辿り着いたカイが、手を伸ばそうとして動きを止めた。まるで見えない壁に阻まれているように見える。


「あれ、戻ってきたよ」


「フェイリア様。堰の向こうはソードシステムの範囲外になります」


「むぅ……国境の向こう側じゃったか。あれほどの流木を片付けるとすれば日が暮れてしまう。そもそも危険すぎる」


「足場を組んだりする大規模な作業が必要でしょう。秘密裏に行動する以上、長引かせるわけにはいきませんが。無論、魔獣についても」


 流木に魔法をガンガンぶち込んで粉々にしていけば、安全で確実にダムの詰まりを解消できると思うんだけど、どうだろう。


「ダメじゃ。ソードシステムの制御は半ばワシの手から離れておる。強力な魔法を使えば制御部門に通知がいくからのう、理由が理由じゃからお咎めはなくとも、フェイラー以外の者に知られてしまうのは避けたい」


「国境の外側から使ってみたら?」


「理論上では可能じゃが難しいじゃろう。対象物が国境すれすれじゃから、どうしてもソードシステムに検知されるじゃろうな」


 大量の流木を撤去するには準備も時間も足りない。出直して資材を揃えての作業は短期間では終わらない。目立ってしまえば苦労は水の泡になってしまう。



「あのー……………………あたしじゃダメ?」



「レナに何ができるというのじゃ」


「ボク、わかったかも」


「前はちょっと失敗しちゃったけど、ね?」


「ダメじゃダメじゃ。ダムごと破壊するつもりか!?」


 レナとフェイリアがヒソヒソと内緒話を始めた。ここまできたら秘密も何もないのに。


「確かにメテオはソードシステムをくぐり抜けるし、成功しそうではある。しかし前の失敗はハチャメチャすぎやせんか。まあよい、その時はワシが護ってやる」


「やったぁ!」


 前の失敗では濁流に飲み込まれるところだったから、雨に降られる程度にしてほしい。


「カイは南側の魔脈前で流木をせき止めてくれ。中が詰まったら面倒じゃからの」


 小高く見晴らしのいい安全地帯に移動して念入りな打ち合わせを行う。ソニアだけは半信半疑だけど、それはお楽しみということで。


「ラドくんお願い」


「落ち着いてゆっくり。余裕はあるからさ」


 いつものようにレナの両肩に手を添えたら、腰に手を回して欲しいという。バランスを崩して倒れてもいいように全身を預けてきた。


「ふふーん、よろしく」


 ボク以外はみんな女の子。

 目を閉じて無防備なレナを後ろから抱きしめているけど、状況が状況だけに誰も茶化したりしない。注目されているのはわかっているから恥ずかしくもある。

 少しでいいからイジってよ、そうすれば言い訳できるのに。


「ラドくん、いくよっ!」


 抱きしめた腕に自然と力が入る。メガネ池北側の空は裂け、隕石が顔を覗かせた。


「いっけぇーっ!!」


 メテオの着水から少し遅れて、轟音と地響きが身体を揺らした。大きな波はダムの堰を軽々と越えて、大量の流木が空高く舞い上がった。


「あー……」


「うわー…………」


「はー………………」


「あ……流木が回転しながら森の向こうに飛んでいくよ」


「ふぅー。今日はちょっとがんばって集中できたよ。今度からこうしよ、ね?」


 思わず我に返って腰に回した手を離した。名残惜しそうに腕を掴まれると恥ずかしいんだってば。


「これがレナの秘密ですか。初めて拝見しましたが、兵舎も破壊できるはずですわ」


「おつー。そりゃミーシャも嫉妬するわ」


「はて。ミーシャはウィザードに憧れておるのかえ?」


 北側の水位が少し下がってしまったけど流木はキレイさっぱり弾け飛んでいた。入射角とか速度を計算したらしいから、影響は最小限で済んでいると思う。


「その、これ…………は…………な、なんじゃこりゃああああああああああっ、オイ!!」


 粗野で野太い叫び声に思わず身震いして飛び上がってしまった。

 アリィは、まるで近くに雷が落ちたかのように両耳を塞いでしゃがみ込んでいる。


「ね、ね、姉様、これがレナの秘密、メテオですわ。説明して……おきましたでしょう」


「いや、信じられ……この目で見たのに…………信じられるかーっ!!」


「ひえっ、お、落ち着いてくださいまし! 姉様、姉様……」


「こ、こほん。ご、ごめんなさい。アリィは、アリィは何も悪くないのに。皆さんも、取り乱して申し訳ございません。あまりの事象に取り乱してしまいました」


 あまりのソニアの豹変振りにみんな言葉が出なかった。仲の良い従姉妹や家族であっても怒ると怖いというのはこういうものなんだろう。アリィは怯えているし、トラウマになっているみたいだった。

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