同期夫婦-抱擁の日
朝の光がカーテンの隙間から寝室に差し込む。蓮はすでに目を覚ましていたが、その動きはある人物によってしっかりと封じられていた――
「……真琴。」彼は諦めたように低い声で呼んだ。
「んー……いや。」
蓮は小さくため息をつき、腕の中の真琴を見下ろした。彼女はまるでコアラが木の幹にしがみつくように、彼の体にしっかりと抱きつき、顔を彼の胸に埋めてすり寄せ、全く離れる気配がない。
「もう起きているだろう?」
「んー……でも起きたくない。」真琴の声には甘えた響きが混じっている。「今日、祝日だよ?もう少しだけ抱きしめて。」
「もう少し『だけ』?」蓮は片方の眉を上げた。「もう30分以上抱きしめているだろう?」
「じゃあ、あと30分。」
「君はただずっとベッドにいたいだけだろう?」
「バレちゃった?」
真琴は片目を開け、彼にいたずらっぽい笑顔を見せると、さらに強く抱きつき、足まで彼の腰に絡ませて、彼が逃げられないようにした。
「……一体どうしたいんだ?」蓮は困ったように笑った。
「ただ、旦那様を抱きしめたいの。」
「でも、お腹は空かないのか?」
「……ちょっと空いた。」
「なら、早く起き上がらないか?」
「でも……」真琴はわざとらしく言葉を伸ばした。「この温かい腕の中から離れたら、寒くなっちゃう……」
「朝食を作れば、寒くなくなる。」
真琴は唇を尖らせ、ついに根負けして、しぶしぶ蓮から離れ、体を起こした。
「分かった、一緒に行こう。」真琴は蓮の手を取り、彼を引っ張ってキッチンへ向かった。
朝食は質素ながらも温かいものだった。二人は一緒にトースト、目玉焼き、牛乳を用意した。真琴は途中で蓮に何度か食べさせてあげたが、どうにか朝食を作り終え、二人で食べた。
しかし、朝食を食べ終え、蓮が皿をシンクに入れた途端、真琴はすぐに彼に抱きつき、背後から腕を回した。
「おい、いつまで抱きついているんだ?」
「今日、祝日だもん!」真琴は甘えるように彼の背中にすり寄った。「それに、今日は『ハグの日』だよ!」
「誰が決めたんだ?」
「私!」真琴は当然のように答えた。
蓮は諦めたようにため息をついたが、抵抗することもなく、妻に抱きつかせたままにした。
「それで……これからどうするんだ?」蓮はさりげなく尋ねた。
「一緒に映画を観たり、ゲームをしたり、それとも……一日中こうして抱き合っていたり?」
「……最後の選択肢は即却下だ。」
「むー……じゃあ、一緒に映画を観よう!」真琴は興奮して蓮の手を引き、リビングへ向かった。
蓮は真琴がロマンチックなラブストーリーを選ぶと思っていたが、意外にも洋館の吸血鬼ホラーを選んだ。映画が始まると、彼女はわざと電気を消し、カーテンを閉め切り、より雰囲気のある鑑賞環境を作り出した。
「暗い……」真琴は首をすくめ、そっと蓮に寄り添った。
「その方が臨場感があるだろう?」蓮は口元にいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「もしかして、私を驚かそうとしている?」真琴は目を細めたが、疑わしい口調とは裏腹に、素直に蓮の腕の中に身を寄せた。
「まさか。」蓮は真剣な口調で言った。
しかし、映画のストーリーが進むにつれて、不気味なBGMが流れ出し、スクリーンの中の吸血鬼が突然牙をむき出しにして主人公に襲いかかると、真琴は全身を硬直させた。
「きゃあああ―――!」悲鳴とともに、真琴は瞬時に蓮に抱きつき、あまりの恐怖に、彼の首を締め付けるほどの力でしがみついた。
「ごほっ、ごほっ!真琴!落ち着け……離して……死ぬ!」蓮は必死にもがいた。
「だ、だって、さっきの吸血鬼が急に出てきたんだもん!」真琴は目を固く閉じ、蓮の助けを求める声など全く聞こえていない様子だった。
「わ、分かった、消すから……」蓮は慌ててリモコンを手に取り、一時停止ボタンを押した。
スクリーンが暗くなるまで、真琴は震えながらゆっくりと目を開け、恐ろしい映像がないことを確認してから、ようやくゆっくりと手を離した。
「ごめんなさい……」真琴は頬を赤らめ、俯いて蓮を見ることができなかった。
「もう少しで首を絞め殺されるところだった。」蓮は困ったように妻に締め付けられた首を揉んだ。
「じゃ、じゃあ、償うね……」真琴は小さな声で言い、そして勇気を振り絞って、蓮の頬にそっとキスをした。
蓮は呆然とし、耳まで真っ赤になった。
「これでいい?」真琴は彼を見上げ、少しばかり不安そうな表情を浮かべていた。
「……」蓮は妻の恥じらう姿を見て、ため息をつき、手を伸ばしてそっと妻の頬をつねった。「君は今日、本当に甘えん坊だな。」
「えへへ、たまにはこういうのもいいでしょ?」真琴は笑って、再び彼に抱きつき、満足した猫のように彼の胸にすり寄った。
「まあいいさ、好きにしろ……」蓮は小さく笑い、妻の腰に腕を回し、そっと妻の額にキスをした。
昼になっても、妻は離れようとせず、パソコンまで奪い取り、夫の仕事を邪魔して、今日は休日だから仕事禁止だとわがままを言った。
昼食の時間になると、妻はソファに座り、鼻歌を歌いながらスマホをいじっていた。蓮がやってきて尋ねた。
「昼食は何にする?」
真琴はしばらく迷い、スマホの画面に視線を彷徨わせた後、最後にある記事を開き、蓮に手渡した。
「このピザ屋さん、最近オープンしたみたいで、評判がいいみたいだよ。」
「じゃあ、食べに行くか?」蓮は尋ねた。
「でも、今日は出かけたくない……」真琴は手を伸ばして蓮の腰に抱きつき、頭を彼の腕にそっと擦り付け、全く動く気配がない。
蓮は諦めたようにため息をつき、真琴の頭を撫でた。「じゃあ、僕が買ってくるよ。何味が食べたい?」
「えへへ、旦那様、最高~」真琴は嬉しそうに彼に抱きついた。「んー……マルゲリータと、四種のチーズと、あと甘いピザ!」
「分かった。」蓮は仕方なくその任務を引き受け、上着を着て出かける準備をした。
彼が出かけようとした時、真琴は突然スマホを手に取り、通信アプリを開いて、メッセージを打ち始めた。
「何をしているんだ?」
「結衣ちゃんに一緒に食べるかどうか聞いてるの。」
真琴はスマホを手に取り、通信アプリを開き、結衣とのトーク画面を開いた。
「結衣ちゃん、一緒にご飯食べない?ちょっと買って帰るんだけど。」
しばらくすると、スマホからメッセージの通知音が鳴った。
「わあ、すごい偶然!私もちょうど何か食べたかったの!じゃあ、一緒に!何か持って行った方がいい?」
「大丈夫だよ、私たちが買うから、後でね!」真琴はにこにこしながら蓮に向き直った。「結衣ちゃんも食べたいって言ってるから、たくさん買っていこう!」
「……分かった。」蓮は首を横に振り、今日の『ハグの日』は、まだまだ長く続きそうだと思った。
その後、結衣が先輩の家に到着し、靴を脱ぐ間もなく、真琴に抱きつかれた。
「先輩?何してるんですか?」後輩は戸惑った表情で、体を離そうとしたが、先輩の力が思ったよりも強いことに気づいた。
真琴は蓮を抱きしめる時と同じように、結衣に全身をぴったりとくっつけ、肩にそっと擦り寄る始末で、全く離れるつもりがない。
「今日はハグの日なんだもん。」真琴は小さな声でぶつぶつ言った。
結衣は苦笑した。「そんな日、誰が決めたんですか……?」
「もちろん、私。」真琴は当然のように言い、そしてようやく少し距離を置いたが、それでも結衣の手を引いて、リビングへ入った。
間もなく、蓮が帰ってきた。手には大きなピザの箱が四つ、フライドチキンのバケツ、そして酒と飲み物が提げられていた。
「新しいピザ屋さんで、一定金額以上頼むと、お得にフライドチキンを追加できたんだ。」彼はさりげなく説明し、真琴の目を輝かせた。
「やったー!今日はグルメパーティーだ!」真琴は嬉しそうにピザを一枚取り、遠慮なく口に運んだ。
三人はソファに座り、ピザとフライドチキンを食べながら、交代でアニメ、映画、ドラマを選んで観た。真琴は時折蓮に寄りかかり、ピザの一切れを結衣の口元に差し出すことまでした。
「あーん。」
「先輩、私を子供扱いしていませんか?」結衣は呆れながらも口を開けてかじりついた。
「えへへ、こうする方が盛り上がると思わない?」真琴は満足そうな笑顔を浮かべた。
食べ進めるうちに、みんなお腹がいっぱいになり、蓮は残りのピザを箱に詰め替えて、結衣に持ち帰らせることを提案した。
「そうすれば、明日また食べられるだろう。」彼は言った。
「ありがとうございます、じゃあ遠慮なく。」結衣はピザを受け取り、笑顔で辞去した。
結衣を見送った後、真琴はすぐにまた蓮にべったりとくっつき、全身がぐにゃぐにゃと彼の体に寄りかかった。
「午後も……ハグタイム……」
「疲れないのか?」蓮はため息をついたが、それでも自然に真琴を抱きしめた。
夕食には、昼に残ったピザとフライドチキンを温め直して食べた。簡単で手間いらずだった。
お風呂の時間になると、真琴は突然興奮して蓮の手を掴み、そのまま彼を浴室に引き込んだ。
「おい、ちょっと待て……」
「待たない!これもハグの日のイベントの一つ!」真琴はいたずらっぽい猫のように笑った。
お風呂から上がると、真琴の甘えん坊ぶりは増すばかりで、ベッドにもぐり込むと、自分から蓮の首に腕を回し、彼の頬にそっとキスをした。
「これが今日のまとめのプレゼントだよ。」
蓮は小さく笑い、手を伸ばして妻を抱き寄せた。「明日は?」
「明日?」真琴は首を傾げて考え、そして甘い笑顔を見せた。「明日は……引き続きハグの日?」
二人は顔を見合わせて笑い、最後は互いの温かい抱擁の中で、深い眠りについた。




