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ドラゴン2

一触即発の空気の中、マリアの練り上げられた魔力により浮かべていた氷塊が弾ける。大小様々な欠片が飛び散り、周囲のドラゴンの行動を妨げる。同時にヘイグが魔法障壁の外へと飛び出し、銀色のドラゴンへと斬りかかる。だがその鱗を断ち切ることはできない。ずいぶんと硬いようだ。


「私は周りを抑えておく。お前たちはソレに専念してくれ。」


私は周囲のドラゴンの周りに氷魔法を展開する。見える限りで5体いるが、図体が大きいからただの的だ。ドラゴンの翼や手足、首などの隙間に拘束するように氷柱で貫いていく。体の周りに差し込まれた氷柱を壊そうとドラゴンが暴れようとするものの、いくら尻尾で打とうが羽を動かそうが壊れることはない。こうなればあとは適当に胴体でも貫いておけば致命傷になるだろう。

魔法の展開に気づかないドラゴンに拍子抜けする。この程度も避けれないのなら強敵とは言えない。このまま拘束しながら、あの銀色のドラゴンとヘイグやマリア達の戦いを見守るとしよう。


「助かるぜ、お嬢!テメエら!コイツは俺たちの獲物だ!」


ヘイグは周りのドラゴンが何もできないことを横目で確認すると、再度銀竜に向かっていく。他の兵士部隊員も近寄りながら攻撃の隙きを伺っている。魔法部隊は魔法障壁の内部で魔法で攻撃を行うようだ。

銀竜も応戦を開始する。巨大な尻尾で魔法使いが作り出した地面を揺らし、兵士達の足元を崩す。よろけた者を見逃さず、そのまま尻尾で薙ぎ払いが飛んでくる。


「腹部を狙ってください!鱗は頑強ですが、腹部はそこまで鱗がついていません!」

「氷よ!」


魔法部隊にいた学者の格好をした男が叫ぶ。同時にマリアの魔法により氷の塊が地面から銀竜を押し上げようとする。銀竜は横にずれ、翼を動かす。飛び立とうとしているようだ。


「飛ばせないわ!いまよ!」


マリアの号令とともに、魔法使い達が一斉に銀竜の上空に炎の魔法を発動する。主に翼を狙い、高火力で翼を焼き尽くそうとしているようだ。翼に直撃した炎は、鱗に阻まれながらも勢いよく叩きつけており、また地面から反射した炎が上下から翼を傷つける。飛び立とうと翼を広げた瞬間を狙っていたのか。

銀竜は翼をたたみ炎から逃れようと身を捩り、後ずさる。その翼は高温となり、今すぐ飛び立てる状態では無くなっただろう。

そこにヘイグが斬りかかる。どうやら魔力を剣に載せているらしくその剣は銀色ではなく紫色の光を帯びている。大剣の重さを欠片も感じさせない動きはさすがだ。あの大きさの剣を振り回すと振り方は大ぶりになり大剣に重心が持っていかれそうなものだが、そういったことはないようだ。

スピードも早く、いつの間にか腹部まで潜り込んで左から切り上げる。魔力を帯びていたからか、腹部のどちらかというと薄い鱗を切り裂き、銀竜の血が飛び散る。


「GAAAA!!!」


銀竜は叫び、懐にいたヘイグを前足で押しつぶそうとするものの、ヘイグは簡単に避けている。ヘイグに注目がいっているうちに、他の兵士が尻尾や後ろ足に切りかかっている。彼らも同じように魔力を武器に乗せることができるようだ。

銀竜の咆哮に周囲にいたドラゴンたちも騒ぎ出し、先程よりも必死に抵抗を始める。どうやら銀竜の危機をやっと察知したらしい。このまま見ていればいいものを。ヘイグたちの邪魔をするならしょうがない、先に静かになってもらおう。ドラゴンの鱗を破るために先程よりも時間を掛けて魔力を練り上げるとしよう。私が魔力を練り上げているのを気づいたのか拘束されているドラゴン達が死にものぐるいに動き出す。だがそれでも私の作り出した氷柱からは抜け出せない。


「運が悪かったと、」

「ッ待て!わかった、空を開ける!だからそいつらを殺すでない!」


私が数体黙らせようとしているとヘイグ達と戦っていた銀竜が喋りだす。最初の上から目線はどこに言ったのか、必死さがにじみ出ている。その様子にヘイグやマリアたちの手も止まる。私のことを凝視しながら喋りだす銀竜。


「…我の負けだ、他のドラゴンたちも下がらせる。だから、そいつらを…」

「どうする?私としてはどちらでもいいが。」


悲壮な雰囲気を醸し出す銀竜にやる気を削がれたのは私だけではないようで、ヘイグも頭を掻きながら迷っているようだ。このまま全ドラゴン殺してもいいが、空から退くと言うなら戦う理由もなくなる。

私はヘイグやマリアが銀竜に対して勝っていることがわかって満足しているため、判断は彼らに任せていい。


「…空を開けていただけるなら、殺しはいたしませんわ。身の程もわかったでしょう。」


マリアがそう判断を下す。私もドラゴンを拘束していた氷柱の魔法を解除する。するとドラゴンは銀竜のそばへと向かっていく。どうやら仲間意識は思ったより強いようで、負傷した銀竜を守るように固まり始める。


「そこのアナタは聞きたいことがあるわ。アナタだけ残ってほかは下げなさい。」


銀竜は諦めたように喉を鳴らし、周りにいるドラゴンに顔を向ける。はじめは動こうとしなかったドラゴンたちだったが、銀竜がグルグル喉を鳴らすたびに1人2人と何処かに飛んでいく。その方向に目を向けながら、銀竜の様子を伺う。胴体にはヘイグのつけたであろう切り傷がそこかしこにできているし、翼はいまだ黒い煙がかすかに上がっている。満身創痍といったところだ。切り札は残しているだろうが、油断しなければ殺すことも難しくない。兵士たちや魔法使いたちも警戒したままだ。

そのことは銀竜自身も自覚しているのか、暴れようといった様子は見られない。だがその瞳はまだ意思を持っており、注意しておいたほうがいいだろう。他のドラゴンがいなくなり、またライルズの周囲にも見える範囲だが飛んでいないことを確認してマリアが切り出す。


「ここは竜の領地といってましたけど、竜が領地をもっておりますの?」

「…我が森に立ち入っておいて、何も知らんというか。」

「黙って答えなさい。質問しているのは私ですわ。」


マリアの質問に懐疑的な目を向けては来たものの、諦めたようで銀竜は答える。


「かつて、竜も参加した戦争が行われた。その際に戦争に反対したドラゴンが、身を守るために集まったのがこの森だ。当時は弱き者が多かったため、我が他の何からも守ってやるために領地とした。ヒューマンや亜人種なども全て、この森に立ち入ることは我に敵対することだということだ。」

「…ヒューマンって人間ってことでしょう?亜人種って何のことかしら。」

「何を言っておる。人間も亜人種もお前達ヒューマンが言い始めたことだろう。ヒューマンは人間であり、亜人種は人間にあらず、と。」


マリアが絶句する。そうゆう私も眉にシワが寄るのがわかる。前の世界でもたしかに人間が他の種族を差別することはあっても、その能力を認めていることも多い。人間、というより人間族、か。人間族と違って見た目が美しい、とか足が遅い、とか言われるようなことはあったが()()()()()()といった扱いをされているのを見たことがなかった。私は総じてヒトと呼んでいるが、種族の違い程度の考えだったはずだ。


「ずいぶんと奇っ怪な集団だな。亜人種がずいぶんと信頼して共に戦っている。…首輪もつけずに。」

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