異世界の亜人種
首輪。拘束具。
それをつけていないと言った。亜人種に特定してつけないと。銀竜はヘイグや兵士たちを見ながら言っていたため、亜人種というのは人間以外の見た目を持った者達ということだろうか。というか、ヒューマンと人間の違いがよくわからない。元の世界では、ヒューマンと人間族なんて言い方の違いなだけだった。
ヘイグや兵士たち亜人種と名指しされたであろう者達もその言い方に眉を潜めている。
「…どうやら、他にもお前から情報を聞き出したほうがよさそうだ。」
「敗者は勝者に従うまでだ…。お前たちが直ちにこの森から立ち去るためにもな。」
私の言葉に銀竜は従うようで、反抗的な態度は見られない。よほどこの森を守りたいらしい。別に私達もこの森をどうにかしたいわけではないため、情報を得られれば用はない。
ヘイグとマリアに目を向けると、マリアは問題ないようでうなずいている。ヘイグも亜人種と呼ばれたことに興味があるようだ。ひとまず魔法障壁の外にいると何から狙撃されるかもわからないから中に戻るとしよう。この銀竜も一時的にではあるが中にいれる。用心に越したことはないだろう。
「アレギス、この銀竜を魔法障壁の中に入れる。問題ないか?」
「問題ないです、ますたー。」
アレギスの返答を聞き、うなずくとマリアとヘイグに合図を送る。2人とも心得たように周囲を警戒しながらそれぞれの部隊とともに魔法障壁の中に戻る準備をする。
「銀竜、これからお前を一時的にこの魔法障壁の中に入れる。拘束はしない。知っていることを話してもらえればすぐに開放し私達もこの森の上空から去る。これでいいな。」
「他のドラゴンに手を出さないなら構わん。」
「興味がないといえば嘘になるが、まあ今は何もしない。」
銀竜が魔法障壁の中に入ると、一旦落ち着けるだろう。周囲に飛んでいたドラゴンもいなくなり、この世界の情報も手に入る。もしコイツが暴れたとしてもヘイグやマリアがいれば無力化は難しくないだろう。そういえば彼らの実力もずいぶんと上がっていた。苦戦するかと思っていたが、普段の喧嘩っぷりが嘘のような連携だった。あれならライルズの防衛も任せて問題ないだろう。今も銀竜に警戒しながらも、その動きに驕りや甘く見るような様子はない。
それぞれの様子を見て問題なさそうなので、情報の聞き取りを始めよう。マリアが近くに来て、魔法部隊の学者も共に並ぶ。
「さて、じゃあ話を聞くとしよう。私はフェイ。お前名前は何ていうんだ?」
「…我はアルジェント。この森を守る者。」
「私はライルズの頭領が1人、マリアよ。まず聞くけど、先程言っていたヒューマンとか人間とかどうゆう意味かしら?ヒューマンと人間…人間族が違う意味ってこと?」
「意味がわからん。我よりもお前たちのほうがそのあたりは詳しいはずだろう。」
「私達が詳しかったら、アナタなんかに聞いておりませんわ。」
「…ヒューマンとは人間族のことだ。亜人種にも呼び名が在るやもしれんが、我には関係ないこと。そして、人間族と人間とは違った意味で使われている。人間は神に祝福されているやら文化文明を持つ、やらは知らぬが亜人種は人間ではないという意味で呼ばれている。」
頭の痛くなりそうな話で、つまりは亜人種は獣や魔物などとくくりが同じと言った感じだろうか。ただの種族の違いで差別されているだけではなさそうだ。学者の方を見ても首を振り、そういったことを聞いたことがないらしい。
「なぜこのようなことを聞く?そもそも、どうやって我が森の上空に突如現れた?」
「私達はどうやら特異点により未知の地へと飛ばされてしまったようで。ああ、特異点とはご存知?」
「聞いたことがない。」
「特異点とは、どこからともなく現れて、何もかもを持っていく黒い穴。特異点が現れたらそこには何も残らない、そういったモノ。並大抵の力では対抗できず、逃げることが正解の世界の穴について、アナタはなにか知ってるのかしら。」
「…ひとつだけ、心当たりがある。我が知っておるのは、持っていくのではなく置いていくモノだ。どこからともなく突然上空からモノが降ってくることがあるという、おとぎ話のような物だが。」
アルジェントの言葉に学者が文字を滑らせる。前の世界ではそういった話は聞いたことがないので、今後の調査の1つとして覚えておく必要がありそうだ。もしも今までも特異点により吸い込まれたものがこの世界に置いていかれていたとしたら、大発見だ。
「お前たちの島は浮いているため、落ちることなく現れたのか。…では我の森に立ち入ったのはお前たちの意思ではないと。」
「そうゆうことになるわ。次に聞きたいことだけど、亜人種に首輪がどうこう言っていたけれど、どうゆうことかしら。」
「いままでこの森に入ってきた者達が首輪をしていたというだけだ。言っただろう、亜人種は人間ではないと。獣のように首輪を嵌められ、抵抗できないようにして敵からの盾とする。そういった扱いを見ただけだ。」
「…クソみたいな話ね。」
「そういった扱い以外をされている亜人種を見たことがない。いや、なかった、となった。亜人種が身を守るために戦っていることはあっても、ヒューマンと共に背を預けて戦うのは初めて見たがな。」
どうやら亜人種は酷い扱いを受けていることは間違いなさそうだ。あまり実感が持てず、ヘイグなんかは首をかしげているが。
前の世界にも奴隷の存在は0ではなかった。でもほとんどが違法とされていた。そんなことで命を使い潰すよりかは国のため、その他の利益のために生きていたほうが使い道が在るからだったが。戦争が起きれば、命が少なくなる。そんな中で奴隷だなんだ言っている余裕はなく、その場に生きるものとして戦うことや働くことが求められていたからだ。まあそれを奴隷と言ったらそうなんだろうが。
それでも生きたい、良い生活がしたい、と働いていた前の世界と、首輪を嵌められ自由が欠片もなく使い潰されているのでは天と地程も差があるだろう。
思っていたよりも、この世界は前途多難なようで、ため息が出そうだった。




