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現状の確認

「…また同じような感覚だな…」


数日前に同じように目覚めたような気がする。また10年経ってないだろうか、と部屋を見渡してみても、あの地面が揺れたときと変わりはない。まあ今回は魔力を空にしたぐらいだ。

自らの身体に流れる魔力が戻っているのを確認しつつ、起き上がる。手を握ったり軽く体を動かしたりしながら、怪我の有無を確かめるが、どこにも怪我がない。あの高さから落ちたら多少怪我をしていると思ったが、運良く緩衝材のあるところに落ちれたか?


「ますたー!」


体を確かめていると、アレギスが姿を表す。どうやらずいぶんと心配させたようで、その瞳には涙が溜まっている。抱きついてくる頭をなでながら苦笑していると、腕に力がこもる。


「また10年寝ちゃうかとおもいました…!無茶しないでください!」

「はは、今回は特別だよ。寝起きに現れた特異点が悪い。」

「もう!」

「心配かけたな、ライルズの様子は?」

「ますたーのおかげで、どこも持ってかれませんでした。でも…」


言いよどむアレギスに首をかしげる。


「…見てもらえばわかります。」


そう言うとアイギスに手を引かれ部屋の外に出る。しばらく歩き、演説を行ったベランダに出る。そこには青く広い空と街のヒトビト。そして…。


「ドラゴン…?」


上空を飛び回るドラゴン。その体は大きく、普通の家なら押しつぶしてしまいそうだ。そんなモンスターが上空に何体も存在している。意識を失う直前みた影は、ドラゴンで間違いなかったようだ。

しかしおかしい。神々の戦いの際に滅んだと言われていて、たとえ生き残っていたとしてもこんな数が存在するはずがない。


「僕たち、異世界にきてしまったみたいです…。」


唖然とする光景に頭が真っ白になるも、即座に思考を切り替える。あのドラゴンは何故ここにいるのか。異世界とはどうゆうことなのか。考えなければいけないことはたくさんある。

まずはドラゴンを観察してみよう。その全ては魔法障壁の外にいて、ライルズの中にはいっているドラゴンはいないようだ。街では多くの兵士が警戒にあたっているようにみえる。ドラゴンたちの見た目にも特徴があるようで、赤色の鱗を持ったモノや鋭利な棘のようなものが尾に生えているモノもいる。


「…アレらは、魔法障壁の外にいるようだが、敵対しているのか?」

「今のところは、なにもしてきません。ただ、数10体のドラゴンに囲まれてます。それとドラゴンだけでなく、地上に僕の知らない魔物がいるようです。強さは未知数、様子を見ています。」

「知らない魔物、か…。」

「ますたー?」


思ってもみない展開に、心が弾みだし、笑みが出てくる。我慢しなければ、大声で笑ってしまいそうだ。異世界。私が何も知らない世界。どんな強い敵がいるかも分からないが、俄然興味が出てきた。予想外のことが出てくるのが楽しみでしょうがない。


「なあアレギス。10年経った前の世界を見れなかったのは残念だが、こっちでも面白いことがあるかもしれないな?」

「また悪い癖がでてます、ますたー…」

「はは、いいじゃないか、異世界?歓迎だ!面白いことが待っている予感がする!それで、アレらは何もしてこないというが、対話などはできそうか?」

「できる、と思います。集団行動が見られますし、おそらくリーダーであろう姿も確認できています。」

「ではまずそこからだな。ドラゴンと対話、面白そうだ。」


呆れるような視線を受け流し、ワクワクとした心が踊りだす。前の世界では見れなかったドラゴンと早速接触できるなんて!どれだけ強いかわからないので、不用意に敵対はできないが一度くらいはその肉を食べてみたい。その鱗はどれだけ強度があるのかだって気になる。

アレギスとドラゴンを眺めていると、後ろで足音がする。振り返ると、ブランがこちらに向かってくるのが見える。もし敵対するならブランたちにも影響がでるので一旦相談することにしよう。

早足で向かってくる姿を見ながら、ニコニコと笑う私にアレギスは呆れたような、でも嬉しそうにため息を吐いていた。




広間に棟梁達が集まり、現状の確認と今後について話し合いを行おうとしていた。どの顔も険しく、疲労も見えていた。

ちなみにブランに会うとともにミリアーナとも会っていた。2人とも怪我はなかったものの、小言を言われてしまった。ずいぶんと心配させてしまったようだ。


「まずは地面が揺れた件に関してまとめておこう。原因は特異点と見て間違い無いと思う。」

「初めの揺れに関しても特異点なんでしょうか?確かにライルズを覆ったのは闇は特異点で間違い無いと思いますが…」

「アレギスの調査で、最初の揺れの起こる直前魔法障壁の一部が削られた可能性があることがわかった。その時は障壁が内部に発生した特異点を弾いたんだろう。その衝撃で地面が揺れたとみている。」


マリアの疑問に答えると、納得したように頷く。この判明には少しばかり冷や汗をかいた。いつのまにか内部に特異点が発生したなんて、対処のしようがない。今回は初めは小さかったので弾けたのだろうが、それでもあの大きさの揺れが発生した。今後、魔法障壁の強化は必須だろう。


「ライルズを特異点から魔法障壁で守っていたものの、途中から特異点が変形、液体状になって覆ってきたため、ライルズ全体を特異点が覆い、層が薄くなった段階で弾き飛ばすよう魔法を発動した。結果、私は意識を失い先ほどまで寝ていたというわけだ。」

「何もかもを持っていく特異点から守り切るとは…、お見事ですぞ。我々では逃げることしかできますまい。」

「本来ならそれで構わないだろう。今回は私が気に食わなかったから守ったというだけだ。それで、その後はどうなった?」

「お嬢が気を失った後、すぐに周りにドラゴンが飛び始めた。アイツら周りを飛ぶだけで何もしてこねぇが、街の人間はびびっちまう。俺たちも警戒はしてるが、いつ襲ってくるともわからねぇ。殆どのやつは学園に避難が終わってる。」

「魔法部隊も前線に出ております。ドラゴンの情報があまりにも私達には少ないので、弱点がないのか研究の意味でも観察しておりますわ。」

「私達工作部隊は、倒壊した家屋がないかと斜面などで土砂崩れが起きてないかの確認をしておりました。また戦闘が起きた際の防具、武具などは点検済みとなっとります。」


それぞれが報告をすすめながら、現状をまとめていく。どうやらだれも直接的には言わないが、ドラゴンとの戦闘は避けれないことを覚悟しているようだ。なるべくならライルズの外で戦いたいものだが、そうも言っていられなくなる可能性もある。

考えていると、ブランが状況をまとめ始める。


「特異点との接触により、未知の地にいることはドラゴンの存在からしても明らかということです。周囲の国などの存在や、脅威がないとも言えない状況で早急にも索敵を勧めたい。ですがドラゴンが邪魔です。知能を感じますが、戦闘もありえます。ここは兵士部隊、魔法部隊の一部で一度接触を試みるしかないでしょう。」


ドラゴンとの接触は避けられない、ということに他の頭領達もうなずいている。


「異論なし、だな。私も同行してもかまわないか?どこまでお前たちが強くなったのか、見てみたい。」

「っも、もちろんですわ!このマリアの力、フェイ様にお見せします!ドラゴンなんてすべて凍らせてやりますわ!」

「あ?俺のほうが強いんだから引っ込んでろよ、ブス。お嬢!お嬢にドラゴンの頭、持ってきてやるぜ!」

「フェイ様になんてモノ見せようとしているのよ!」


ヘイグとマリアがまた喧嘩を始めるのを苦笑しながら、ブランやアントンに目を向ける。どちらとも不安は見て取れず、どうやら彼らがドラゴンに負けるとは思っていないようだ。通常通りのやり取りのようで、未知の生物との戦闘に緊張などは全く無いようだ。

思ったよりも強くなっているのかもしれない。期待に胸を膨らませる。この場所でドラゴンがどれだけ強いのかは分からないが、今後の基準にすることはできるだろう。もしドラゴンが思ったよりも脅威だった場合は、今後の動きも考えなければならない。何にせよ、忙しくなりそうだ。

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