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頭領達

「と言ってもだが、まずするのはお前たちについて知ることとアレギスの動作確認だ。」


大見得を切って見せてみろと言ったものの、私はまだ彼ら頭領について知らなすぎる。この島の現状や、彼らについて教えてもらってから自由にしても問題ないだろう。楽しみはとっておくものだ。

ワクワクする心を抑えつつ、ブラン達に目を向ける。いまなお膝をついているのを立ち上がらせるところからだ。


「先程も言ったように私は王になるつもりはない。お前たちの自治で街が回っているのなら、そのままで構わない。なにか必要が在るならば手を貸してもいいが、まずお前たちで悩み、治めることだ。

ということで、跪くな。この椅子もいらん。頭を上げて私を見ろ。共に立ち、敬うことは認めても、下につくことは許さないぞ。」


私がそう声をかけると、まずブランが立ち上がる。その後ひとりふたりと立ち上がる。全員の顔を見て、やっと話ができる。

10年前はまだ命を助けた直前だった者もいたため、頭を下げられても良かったが、今は違う。彼らが自らの足で立ってもらうには私の前で跪いていては困る。主に私が楽をできない。


「さて知る顔もいるがまずは自己紹介だ。私はフェイ。この浮遊島ライルズを作り、この島でお前たちが暮らすことを許可した者。防衛などの機能はすべてアレギスに任せているが、私が行うこともできる。アレギス、いるだろう?」


私が自己紹介を行い、アレギスに呼びかけると頭上に光が集る。その光が収縮を繰り返し、人の形をとり降りてくる。見た目は少年の姿をしていて、その姿はかすかに透けている。私がライルズを守り、また管理するために作り出した人工知能。作り出されたものの姿をしているため、整った顔立ちをしている。


「おはようございます、ますたー。またこうしてお話できて、とても嬉しいです。」

「私もだ、アレギス。動作に問題はないようだが後でどこかに綻びがないか確認しよう。」

「楽しみです。」


アレギスはふんわり笑うと、ペコリと一礼し霧散する。アレギスは姿を保たなくても常時稼働中なため、話しかければどこからか返事が帰ってくる。私と共に話すときは姿を作ることが多いが、それはアレギスの意思あってのことだろう。

続いて話してもらおうか、と目をむけるとブラン以外アレギスがいた場所を疑うように見つめている。


「どうした?アレギスがなにかおかしいか?」

「いえ、フェイ様はお気になさらず。」


いつの間にか平常運転となったブランが仏頂面でいう。その目元はいまだ赤くなっていた。

そんな会話をしていると1人の男が一歩前にでる。


「おお、俺はヘイグ!って言いマス!戦士部隊の頭領を、してオリマス!好きなことは肉を食うこと!嫌いなものはピーマン!お会いできてコウエイデス!」


大柄な肉体に弾けんばかりの筋肉。正しく戦士といった風貌だ。だが一番の特徴はその耳と尻尾だ。ヘイグにはライオンのような耳がついており尻尾もまた同じような見た目をしている。その立ち姿からはどこか気品を感じるものの、興奮しているのかその尻尾は大きく床を叩いている。

素直そうなキラキラとした表情につい笑みを浮かべる。


「敬語はいらない。…戦士を率いているのか、後でその実力を見に行ってもいいか?」

「ッもちろん!!お嬢なら大歓迎だ!あんたは俺たちの希望!何でも言ってくれ!」

「ちょっと、ホントフェイ様に失礼じゃないアンタ!?…申し訳ありません、取り乱しました。私はマリア。魔法部隊の頭領を努めさせていただいております。フェイ様に救われたこの命、無駄にせず必ずや貴方様のために使ってみせます。」


ヘイグに罵声を浴びせたのは美しい美女だ。豊満でありながら、引き締まったその体からは大きな魔力を感じる。魔法部隊の頭領というのもうなずける。マリアの顔には見覚えがある。その身に宿る魔力量に目をつけられて、生贄とされそうになっていたところを助けたヒトのうちの1人だ。


「マリア、お前の命だ、使い方は自分で決めていい。だが私のためにというのなら勝手に死ぬことは許さない。わかっているな?」

「…ッもちろんです!なんてこと、フェイ様からこんなお言葉いただけるなんて…」


高揚した頬のままボソボソと何かとつぶやく。無駄にしないならいいだろう、というか私のために命を使うとかやめてくれ、いらない。引きつりそうな表情を抑えながら笑顔を引き出す。

思っていたよりも頭領たちの親愛度が高い。敵対されるのも面倒だが、敬われたい訳では無い。勝手に住んでくれればそれでいいのに。


「お次は私ですかな。はじめまして、お嬢。私はアントン、工作部隊の頭領をやっとります。なにかご入用の物があれば、私達でお作りいたしますぞ。」


アントンは低い背丈に広い肩幅で、ドワーフという種族だ。その見た目の通り力が強く、手先が器用なためものづくりや農業、採掘など様々なことを得意としている。アントンは初めて見る顔だが、悪印象を抱かれてはいないようだ。


「最後となりますが、私ブランがこの街の財務と治安部隊の頭領として働かせて頂いております。」

「財務と治安部隊を兼ねているのか?お前なら問題ないとは思うが、働きすぎてはいないか?」


ブランが頭を下げながらいうのでつい口を出してしまう。


「この街はそれほど広くありませんし、街の人々も基本的には善良です。それほど仕事が立て込むこともありませんし、優秀な部下もおりますので。」

「だがこの城の管理もお前がやっていただろう?今はミリアーナに引き継いだのか?」

「もちろんフェイ様の執事も努めさせていただきます。ですがフェイ様にご不便があってはなりませんので、ミリアーナは常時お側につけるように侍女として育てました。ご活用ください。」

「相変わらず優秀だな、ブラン…」


ブランの言葉とともに後ろにいたミリアーナを見ると笑顔で会釈をされる。優秀過ぎてちょっと怖い。

これでひとまず各頭領の顔合わせは終わりのようだ。それぞれが得意とする分野で街のために働いているというのなら言うことはないだろう。今後も彼らの自治で街を回していってもらえれば何も問題ない。


「私が目覚めたことは近いうちに街のヒトたちにも知らせよう。といっても、適当に伝えるぐらいでいいとは思うが…。」

「そんな!大々的に知らせを出すべきです!皆貴方様が起きられることを心待ちにしておりました。知らせを出せばすぐにでも城の前に街中の人が集まります!」


マリアが悲鳴をあげるようにいう。それにヘイグやアントンもうなずいて同意を示している。


「俺もデカくやったほうがいいと思うぜ、お嬢。いつの間にか起きてましたなんて言ったら頭領の俺たちがキレられちまう。」

「私達だけいつのまにか知ってたなんて、一生恨まれちまいますよ。」

「…そこまでか?まあ、いい。では明日にでも知らせを出そう。ブラン、頼めるか?」

「お任せください。」


どこまで人が集まるかは分からないが、挨拶しておくのも悪くない。今後の平穏のため。

顔合わせが終われば次はアレギスの詳しい動作確認と、街や地上の調査だ。しばらくやることが山のように積まれているが、たまには忙しくするのもいいだろう。頭領たちの顔を見ながら、今後の楽しみを考えるのだった。

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