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バレリア編 男の娘の覚悟と過去

 元仲間を完全に捨てたバレリアは魔王として最初に4人の吸血鬼を作り出した。

 その後、元仲間の灰がリスポーンで消えるのを確認してから、自分の母の灰のある玉座にかがんで触れてみた。


「さようなら。これで全てから解放されたんだから、ちゃんと成仏してね」


 亡霊にちゃんと手を合わせてからシャッキとして部下達に命じた。


「お前達に名前をやる。バレリア・ルージュの名の下に個体としての力をやる。だからそこに並べ」


 別人のように生まれ変わったバレリアは玉座の前に立ってそう言った。

 それに対して赤髪で短髪の貧乳吸血鬼がやばいという顔をして慌てて言葉を発した。


「お待ちください!あなた様がセカンドネームを付けたら普通のプレイヤーとしてイベントに参加できなくなります!それくらいリスクがありますよ!」


 その慌てる顔を見ながらバレリアは人差し指を唇に当てて殺気を向けた。

 それに赤髪の吸血鬼はビビって顔を伏せてしまった。

 他の3人も目を合わせられずにいる。

 そんな連中にあの状態でバレリアは殺気混じりの言葉を投げた。


「私に覚悟がないとでも?いずれ負ける運命だとしてもここはその日まで死守する。それだけで私は満足だ。だから、モンスターネームを付けて魔王としてゲームを終わらせる」


 そう言うバレリアは、お前らは聞いていろという目をして人差し指を当ててるのに、文句があるなら言ってみろという態度をした。


 ちなみに、このゲームはモンスター側に落ちることが可能だ。

 それが出来るのは魔王になったプレイヤーのみ。

 それをすればリスポーンは封じられて負ければ即退場のハードゲームに変わる。

 その覚悟をライトは持っていない。だが、バレリアはその覚悟をしてゲームを守る側として活動することにしたのだ。


「分かりました。その覚悟、我々は理解してあなた様の手足となりましょう」


 赤髪の吸血鬼がリーダーとなってそう言うと、4人同時に(ひざまず)いて忠誠を誓った。

 その時、バレリアはある光景を思い出していた。





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 1年前、母親が仕事に集中するからとバレリアになる前の莉愛を自宅に置いていった。

 一人暮らし出来るような母は置いていってくれたが、その時から莉愛は1人になった。


「待って!置いてかないで!」


 あの日から毎日同じ夢を見るようになった。

 母親が荷物を持って玄関から微笑みかけて出て行く夢。

 二度と帰らなくなる前からそんな夢を見ていた。

 分かっていたのかもしれない。あの人がもう帰らないと。


「嫌だよ。僕を置いてかないで」


 当時は一人称が僕なのに可愛らしい名前をつけられていたことに悩んだりもしていた。

 産まれる前に父親が死んで、死ぬ直前にお腹にいる子の名前が莉愛がいいと言っていたらしい。

 それに縛られて、名前に合わせて彼は変わっていった。


 そのことがそろそろ嫌だと思っていた頃に母親が家を出た。

 不安に思うのは当たり前だろう。

 心が不安定になっていたのだから。


「こんな時に出て行くなんて、最低」


 膝を抱えてそう呟くと、一時的に午前5時に母親のイザベラが帰ってきた。

 その人は帰るとすぐに息子の部屋に入ってきて膝から崩れ落ちた。


「どうしたの?」


 さっきまで少し怒ってた莉愛は急変して心配そうな顔を向けた。

 それで顔を近づけると、イザベラがそっと顔に触れてきて驚かされた。

 その状態のままイザベラは顔を伏せて話した。


「ごめんね。勝手に仕事のために出て行ったりして。でもね。これが完成すれば安全なVRMMOを電脳世界として意識を永遠にできるかもしれないの」


 その話を聞いて急に莉愛は悪寒を感じた。

 マッドサイエンティストのようなことを言う母親がこの時始めて怖いと思った。


「何年かかるか分からないけど、これはあなたに望まない人生から脱出してもらうためなのよ。体から出てしまえば悩む必要もないんだから」


 しばらく会ってないのにバレていて心底恐怖を感じて莉愛の顔は引きつった。

 そんな顔を見ずにイザベラは続けた。


「会社のみんなは普通のVRMMOと思うかもしれない。でも、これはゲームじゃなくて意識を補完する器なの。みんなには内緒よ。その時が来たら迎えに行くから」


 そう言ってイザベラは立ち上がって莉愛の頬にキスをしてまた出て行った。

 その日からまた帰って来なくなった。

 そんな意味深な話をされた日から1ヶ月後にイザベラは自分の意識をゲームに封じる実験を勝手にして不完全に移して死んだ。

 死んだことは莉愛には伝えられなかった。


 でも、莉愛はあの日のことから何となくは予想がついていた。

 このことを思い出すと今でも鳥肌が立った。





----------------------------------------





 そのことを女の人が(ひざまず)く光景で思い出した。

 でも、実行しようとは思えなかった。

 怖いのもあるが、この前の犯人と同じVRMMOを悪用した犯罪者になるからだ。


「まさか、ここがあの人の言ってた場所なのかも...一発退場にしてよかったかもしれない」


 バレリアは腕をさすりながらあの日の怖い母親を思い浮かべていた。

 思い出したせいで一生で一度だけ見た母親の最後の姿であり、一番マッドサイエンティストっぽかった怖い姿。


「あはは...なんだろ。覚悟が揺らいだ気がする。あの人はこれを望んでたのだろうか?」


 急にバレリアはこのゲームを続けるのが怖くなっていた。

 しかも、怖すぎて独り言が超小声になっている。

 そんな状態でも自分の頑張りと目の前にいる自分を頼る存在でどうにか自分を保った。


 そして、4人に名前を与えて最初の仕事をさせた。

 それは母親の遺灰の回収と、メイド服に着替えることだ。




 ここからバレリアは恐怖と背中合わせで魔王としてゲームをすることに完全に決まった。

 母親と一発退場の恐怖は同レベルとは言えない。

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