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麦穂の革命  作者: レモンティー


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第四章 反発

だが全員が改革を歓迎したわけではなかった。

むしろ恐れている者たちがいた。

近隣領主である。

辺境伯領での貴族会議。

豪華な円卓を囲み、多くの領主が座っていた。

その視線はアルベルトへ集中している。

最初に口を開いたのは老伯爵だった。

「農民に余裕を与えすぎだ」

「余裕?」

「そうだ」

老人は杖を鳴らした。

「腹が満たされれば不満を持つ」

周囲が頷く。

別の男爵も続く。

「農民は貧しいから従順なのだ」

「その通り」

「豊かになれば領主に逆らう」

アルベルトは呆れた。

前世でも似たような話を聞いたことがある。

変化を恐れる人間はどこにでもいる。

「前例がない」

侯爵が言った。

「誰もそんなことはしていない」

「だから駄目だと?」

アルベルトが尋ねる。

「当然だ」

「では聞きます」

アルベルトは立ち上がった。

「皆様の領地で飢饉は起きていますか?」

静まり返る。

「農民は逃げませんか?」

誰も答えない。

「税収は増えていますか?」

沈黙。

アルベルトは書類を机に置いた。

「飢えた農民は税を払えません」

会場が静かになる。

「しかし豊かな農民は税を払う」

書類を配る。

収穫量。

人口。

税収。

すべて数字で示した。

「三年前と比較してください」

領主たちは資料を見た。

そして顔色を変える。

「税収が倍だと……」

「馬鹿な」

「人口まで増えている」

数字は嘘をつかなかった。

その頃。

王国北部で大飢饉が発生した。

長雨。

病害。

凶作。

複数の災害が重なった。

北部から救援要請が届く。

「食糧が足りません!」

「餓死者が出ています!」

「助けてください!」

王都は混乱に包まれた。

だがヴァルム領だけは違った。

巨大な穀倉地帯へ変貌していたからだ。

領内の倉庫には大量の麦が積まれている。

ガルドが言った。

「余っています」

「どれくらいだ?」

「十万人を数か月養える量です」

アルベルトは苦笑した。

三年前なら誰も信じなかっただろう。

やがて王命が下る。

穀物を王都へ送れ。

アルベルトは数百台の荷馬車を編成した。

長大な輸送隊が街道を進む。

その光景を見て人々は驚いた。

「あれ全部麦か?」

「どこの領地だ?」

「ヴァルム領らしいぞ」

「嘘だろ?」

かつての貧困領は消えていた。

王城。

謁見の間。

国王は積み上げられた報告書を見て唸った。

「信じられん」

アルベルトが頭を下げる。

「陛下」

国王は真っ直ぐ彼を見た。

「なぜお前の領地だけ豊作なのだ」

「農地改革を行いました」

「魔法ではなく?」

「農学です」

国王は眉を上げた。

「農学?」

「はい」

「魔導師でもなく?」

「違います」

「神官でもなく?」

「違います」

「ただの農学者か?」

アルベルトは少し考えた。

そして答えた。

「元公務員です」

「何だそれは」

国王は理解できなかった。

だがなぜか笑い出した。

豪快な笑いだった。

「面白い!」

周囲の貴族たちが驚く。

国王は玉座から立ち上がった。

「剣ではなく麦で国を救うか」

そして楽しそうに言った。

「アルベルト・フォン・ライゼン」

「はっ」

「お前の改革、余にも見せてみろ」

その一言が、後に王国全土を巻き込む大改革の始まりとなるのであった。

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