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1-7 呼吸

闘技場での歓声がまだ続いている。

貴族や商人達は、ほんの数分の出来事に大満足だった。


「……本当に竜人を出すとは」と声がひとつ

「少し寒いわね。ひざ掛けを」と、無意識に震えているが、上品に整えられている声がひとつ

だがその奥に潜む、三者三様の熱は様々であった。

「目で追えない速さなんて」

「あれが“竜人”……本物?」

「今夜は面白い事があると言われて来たが」

「結界があるのだから、心配はいらないわよ」

「あの力があれば望むままに何でも出来るぞ」


彼らには、派手な演出であり、

都合のいい想像だけを膨らませていた。

歓喜・残酷・欲・畏怖それぞれの興奮が、空気を軽く揺らし、

貴族や商人達の抑えきれない期待と歪んだ欲の空気の中

護衛たちは、息を呑んだ――


呼吸が止まった。

鍛えた身体が、硬直する。

剣の柄を握る指が、白くなる。

粟立つ寒気が、背骨を這い上がる。


「……今…の、感じたか」

「ああ。持っていかれた」

声は低く、乱れない。

だが、背筋は伸びている。

「結界の外だぞ。それでも……なんてものを」

護衛達は、空っぽになった闘技場を見ていた。


更に強く死を感じたのは影と呼ばれる者達だ。

思わず片膝をつき、震えが止まらない者

(番の呪縛……あれは、災厄だ)


胸に手を当てる者。

自分の心臓が動いているのを確かめ安堵した。

(生きてる)


呼吸が乱れた者は、

その乱れさえも“生の証”として喜びに変わるほど。


“王の影”すらも動けない。

呼吸ができず一瞬――死んだと思った。

わずかに瞼が震えた。

(……あれが番の呪縛……あれは王のいや国の敵。)


そして彼らが思う事は1つ。


『『『 あれを制御できるわけがない』』』


そしてとある一団の中で冷や汗を吹き出しながらも腕輪に触れ、

「鎮静術……っと」 とつぶやく一人の男性がいた。

それは、人狩り集団のトップ、カイ=グロウ


カイは、呼吸が整いある程度魔力が落ち着いてきた所で、

そのまま腰についている石に触れ、

広範囲指定鎮静術を起動させながら、

「これ高ぇんですよ……旦那。代金請求してぇ」とぼやき、

支配人観覧席にいると思われるドラガンを見た。


「おい、お前ら、もぅ動けるよな?俺は旦那の所に行ってくる。

お前らは王国の動きとレグラン皇国の動きを掴め。

それと、いつでも逃げられるように準備と経路の確認。

あと闇ギルドに“しばらく邪魔する”って伝えとけ。」


「へい……頭?逃げるんですか?闇ギルド?……頭、これからが美味しいところじゃ?」

「あほ。金も女も酒もなぁ、生きてて、自由がなきゃ意味ねぇんだよ」


「はぁ………そりゃそうですが、ただここまで来て今の見た後じゃ、

反抗するやつも結構いると思いますがね」

「ほっとけ、そんなあほな連中、いや……そんな駒は。

ほら動け動け。周りを見ろ。

他の飼い犬どもは、もう走り出してんぞ。」


……旦那。あんた、マジであんなもんを“制御”できると思ってるのか?

残念だがここら辺が潮時だな。

旦那は金払いが良くて好きだっ……

ん………?なんだ今……俺は今、何を思った?……金払い?いや違う………ハッ!


制御!!!!!


そうだよ!あんなバケモン誰が制御すんだ?

旦那が……か?いやそんな話じゃねぇ!

じゃあ誰が………

勢いよく闘技場に目を向け


あの女か!!!!!


だかそこは、余韻で空気が震えている空間だけがあった。


「おい!!!」

「へい。頭の言う通り、今メンバーに指示しておりやすが」

「違ぇよ。あの真ん中にいた女だ。

あの女のこと、調べられるだけ調べろ。」

「女ですか?」

「クソ。あの女、地下3階の女か。なんだあの女!おかしいだろ!!!

結界内であれだけの竜力を浴びて、なんで普通なんだよ!!

なめんな……こっちはな……結界の外側で一度“死”に触れてんだよ。

地下3階で何度か見たが、

ただのかわいそうな女としか、あの女が……」


つぶやきを拾った部下が思わず

「へぇ~頭でもかわいそうって思う事あるんですね」

「あっ?……うるせぇ、早く仕事しろ」

「なんかあったら……いや、いい。旦那の所に行ってくるわ」

「いいか、あの地下3階の女を必ず調べて、目を離すなよ。あの女が鍵だ」

そう言うと、

カイ=グロウは静かに歩き出した。





よぉ、読者の皆、お待たせ!俺の名前カイ=グロウ。

俺、実はここまで出番がなかったんだよね。

頑張って俺の所まで読みに来てくれてありがとな!


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