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1-5赤熱する鱗①

扉の向こうにいる看守の数が多い。

いつもの倍。

声が重なりすぎて、落ち着きがない。

誰かが諌めても、すぐにまた大きくなる。


ランプも増えている。

控え室はいつもより明るいのに、空気は重い。


今夜は特別な催し。

“何か”がいる。

人間じゃない何かが。


観客席から、時おり押し殺した興奮が漏れてくる。


控え室の扉が開き

「ルーナ、出ろ」


(男の子は呼ばれない)

小さく深呼吸のあと闘技場へ向かう


短くて長い廊下。

感情に蓋をする。

生き延びる。

(大丈夫。大丈夫。)


地下2階の闘技場


入り口で一瞬だけ足が止まった。

すぐに看守に背中を押される。


(今夜の主役は私か)


円形の石造り。

中央だけ一段高く、周囲には観覧席。

観客との境には虹色の結界。

滅多に見ない結界。


(結界も特別)


仮面の貴族たちの席

白、金、黒 貴族は3人か

王都バルトレアから来た者もいるらしい。

貴族や護衛その他全部合わせて20人ほど。


ルーナは中央に立たされた。

裸足で石の冷たさを感じる。

なぜか看守がついてくる。


(看守と戦う?……今さら?)


視線が降り注ぐ。

小さく息を吐き、八年間で染みついた習慣で、感情の蓋を閉める。


何も感じない。

何も考えない。

ただ、今夜をやり過ごす。


観客は多い。

篝火台が三つもある。

虹色の結界。

そして、反対側の開いた扉から流れてくる

低く重い、人間ではない気配。


(やはり、あの房の中にいた何か)


観客席の声がかすかに届く。


「今夜は本物ですって。本当なら……フフ」


本物。

その言葉に反応しようとした時、

看守たちが何かを引きずるように現れた。

押さえつけているようにも見える。


(看守の数が……多い)

暗闇から出てきた“それ”は、

両手両足、首と腰を太い鎖で繋がれ、

腰と首には二重の鎖。

異様な鎖。

黒ずんだ紋様が刻まれていた——呪詛付き

魔力を封じる類の。


次に見えたのは——


人間より頭ひとつ以上高い影。

灰色の髪が乱れ、顔にかかっている。

首筋と前腕に、黒い鱗。

光を受けて硬質に輝く。


「竜人だ!」

観客席から複数の声。


竜人——ヴェルトランド大陸に君臨する、3,000人未満の上位種族。

洗練された爵位制度と実り豊かな土地、知性と力で皇帝が治める国。

竜人の国「レグラン皇国」


人間にとって竜人とは、畏怖と崇拝、そして届かぬ嫉妬と恋焦がれる対象


この施設に竜人が来たことは、ルーナの記憶にはない。


(本当に特別な夜になりそうだ)


お読み頂きありがとうございました。


宜しければ、モチベーション維持の為、反応を頂けると嬉しいです。

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