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3-4 父との会話

廊下を流れていた空気が、止まったような錯覚を覚えたのは、王太子だけではなく、

控えていた護衛たちでさえ、表情を変えぬよう必死に耐えている。


皇帝は足を止めず、しかし周りを軽く巡視しながらも続けた、

「アリアの能力は見事じゃ、お主からしたら眩しくて仕方がなかろう」

「……違…いや、…父、上その…あの…」

「だがあやつを王にはせんと言った所で……」

(無理か……今の王太子に届く言葉は……)


無言で歩き続けるが、静寂を破ったのは王太子だった。


「父上、姉上の能力は本物です。

……わ、私なんかより余程。臣下も民もそう思っております」


「だからどうした?」

「えっ?あの……」

「お主はそもそもの前提が偏り過ぎておる、良いか?

誰も、あやつについていけん。

火力が強すぎるのじゃ、王とは、自ら百歩先を歩く者ではない」


だが、王太子の目は左右に動くのを見て、

「抽象すぎてわからんか……今まで異世界から来た者共が何故王にならなかった?

なったとしてもすぐ途絶えた理由を考えろ。

あやつらの知識や力は物凄いものじゃ」

「えっ?それは血が……」

「王家の血?笑わせるな、王とて遡れば平民よ。

よいか、あやつらとアリアは似とる。

皆、理解出来んのじゃ。根本的に考え方が違う」


「え?」


「しかも更に悪いのは、アリアは、婿殿しか見えておらん。

簡単に想像つくじゃろ?あやつは、1人のためなら百万人の民を見殺しにできるヤツよ。

婿殿が生きるためなら、帝国も民も売るなり焼くなり躊躇う事なくあやつはする」


「えっ、いや、さすがに……」

(否定しようにも言葉にならず、姉上なら……そんな確信だけが残った)


「少しは目が覚めたか?それと婿殿を味方にしろ。

いや、今でも敵ではないが……アリアより恐ろしいわ!」


「父上?」


「すまんすまん、よいか、婿殿1人取り込めば、姉が付いてきて、

婿殿の富と姉の全てがお前のものじゃ。真偽玉は青。忘れるな」

(全く、婿殿が敵なら考えても終わる道筋しかでん。

息子よ能力が高い者を使うのは大変じゃが、

お主はたった1人取り込めばいいだけ。わしからしたら簡単なカラクリなのだがな)


「そうじゃ、本題はこっちよ。来月、フォルデンの新王着任式があるが、喪中ゆえ、式は簡素なもの。次代同士顔を合わせておくのも悪くあるまい」

「私が……参列するのですか。」

「最近、辛気臭い顔ばかりしおって。少し外の空気でも吸ってこい、気晴らしじゃ。」


王太子は、父から突然出た『気晴らし』という言葉に、

唐突に自分は父に愛されていると感じ、柔らかい笑みで、


「承知いたしました」

「それでよい、向こうも若い王じゃ。

肩肘張らずともよい。同じ時代を背負う者同士、話も弾むかもな」


「さて、喉が乾いた。今日は余の好きなメニューだからな、楽しみなのじゃ」


そう言い残すと、皇帝は側近たちを従え、

何事もなかったかのように食堂へ向かって歩き、

王太子は、その背中をいつまでも見送っていた。


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