2-12 7日後が楽しみに(管理人side)
静かな来訪だった。
この領域に誰かが来る。
ここに立っただけか……そのまま本に意識を戻した。
ペラリと1枚めくった時に、入り口が開いた。
2人?
1人でも珍しいお客様が2人連れとは…
静かに本を閉じた。
足音が近づいてくる。
重厚なカウンター、その上には『受付』と書かれたプレート。
黒い制服の者が、本から目を離して立ち上がった。
『走るな……危険じゃ…ろ…』
『こんにちは!』
『ここってどんな本でも見れるの?』
『はい、ここは図書館です。本をご覧になる場所ですから』
『やった!』
『師範!本見れるって!』
師範か
そう呼ばれる存在は、すでに“揺れている”存在
持ちこたえられるかな?
いや…あの者はここを…否定した側か。
無理だ。
『申し訳ございません。
そちらのお連れ様には、当館へ入館する資格がございません』
『え?なんで?さっき誰でも見れるって』
『いいえ、誰でもとは申し上げておりません。
どのような本でもご覧いただけるのは、資格を持つお客様のみです』
『えー!でもここまで来たんだから資格あるよね?』
やはり人との会話は疲れる。
そろそろ本が読みたい。
見せた方が早いか……
『いいえ、お客様、お連れ様をご覧ください』
『ん?』
『よく、ご覧ください』
『……あれ?師範?』
『顔真っ青じゃん』
『なんか……薄い?』
『師範!』
『大丈夫じゃ……』
『いや、大丈夫じゃないって!』
『すいません!師範、具合悪いみたいなんだけど、
師範はどぉうしても見たい本あるし、すぐ帰るからいい?』
よくない。
ルールはルール。
『申し訳ございません、入館は認められません』
『なんでだよ!』
声が強い。
図書館のルールを知らないのか?
『お静かに』
図書館は静かに本を読む場所。
議論も論争もここではしない。
やりすぎたか。
もう一人の師範と呼ばれている方は、
もう限界が近い。
早く帰した方がいい。
ここ最近ずっと、この図書館を願いが叶う場所だと思って訪れる者が多い。
図書館は、ただ本を読む場所なのに。
本が読みたい。
『ご、ごめんなさい』
『そうだよな……図書館だもんな静かにしないと怒られるよな。
俺、あんまり図書館行かないけど』
『でも困ったなぁ、俺、師範が見たい本わかんねぇし』
この子は本が読みたくて来たのではない?
しかし入れてる?
『わかった!』
『本借りるから貸出カード作って』
ん??
『……借りる?』
『うん!』
『借りて帰る!』
ぁあ、久々だな……その発想。
無理やりではない。
略奪の気配もない。
貸出カードなんてどれぐらぶりに聞いた言葉だろう
ただ、やはりこの子は本を読みたいと思っていない。
不思議だ。
もう少しだけ会話に付き合ってあげよう
『どちらの本を?』
さぁ、おすすめを聞くか?
聞いたら終わりにしよう。
漠然と何かを読みたいなら、己らで建てた図書館で十分だ。
『それ!』
『こちらですか?』
これ?……なぜこれを?
『うん!』
『こちらがどのような本か、ご存じで?』
『知らない。』
知らない?…知らないのに読む?
知らないから読む?
…しかしこの子は本に興味がない…
結末が見えたか。
残念。
そろそろ帰ってもらおう。
会話を楽しんだお礼に普通に帰そう。
『師範具合悪そうだし、でも俺読みたい本知らないし
伝説?だからここ来るの大変なんでしょ?』
伝説は利用者が勝手にそう思い込んだ結果のラベル
なるほど。
この子は、この図書館の存在自体の疑問を持たなかったのか。
だから来れた。
遥か遠い遠い、まだどの種族も純粋に図書館を利用していた初期の時代の子か。
『だったら借りれば返しに来ないといけないし
返し忘れたらお姉さんから督促たくさんきそう
嫌でも来れそうじゃん』
いまなんと言った?
借りれば返しに来ないと?ここに来る手段?
返し忘れたら督促?
罰が来ると思わない?
私から大切な本を借りることを恐れない?
『……面白い方ですね』
『久々ですよ』
そう呟くように口元に軽く手を添えて笑った。
『承知いたしました。貸出カードをお作りします』
続きが読みたくなった。
久々にリアルタイムで物語を読むのもいいか
『お名前をお願いいたします。』
『うん!』
『ありがとうございます』
……しかも、私はこの子に女性だと思われているのか
ずいぶん私の定義も甘くなったもんだ
『いいえ、お客様』
『真名をお書きください。通称名ではお作りできません』
『あっ、そっか』
さて、書くのでしょうか?
真名。
それは、幼子でさえ最初に教わる決して軽んじてはならないもの。
『だめじゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
『うわっ!師範!?びっくりさせんなよ』
『真名を書いてはならん』
うるさいですね…図書館はお静かに
このおじいちゃんは帰そうかしら?
『ん??もう書いちゃった。』
えっ?……書いたのですか?
もう少し躊躇というものを……。
躊躇の仕方の本を貸してあげましょうか?
『ゼン…なぜじゃ……』
おじいちゃんは苦労人ね。
『貸出のお手続きは完了いたしました』
素直な子だわ。面白い物語の予感。
『返却期限は7日後でございます。ご利用ありがとうございました』
では、また7日後にお会いしましょう。
次はどんな物語を読ませてくれるのかしら?
新刊を楽しむ気持ちなんて久々だわ




