2-5 託された番
笑いが落ち着いた頃、
「さて、このままこうしている訳にもいかないね〜
取り敢えず、バルトさんはレグラン皇国に帰りたい。
ラオス殿下は……帰りたくない。
ゼンちゃんはどっちでもいい。
ルーナちゃんは、ゼンちゃんと同じというか、何も考えられないよね〜」
魔女は一巡しながら
「さて、どうするかなぁー」と思案を始めた時、
「あっ!そうだ! 魔女さんの家にこのままルーナちゃんを置いてもらって、俺ら一旦帰るっていうのは? ラオスもそれなら安心だろ?」
「ん〜??」
「図々しいお願い過ぎたっすかね?」
「ん〜、そうじゃないんだ。理が許さないんだよね」
「??」
「ふふふ、ここが安全な隠れ家なら、
今頃、魔女の家は【セキュリティハウス】で一儲けできてるよ」
「あっそうだ……よな? そんな話、聞いた事ないな……あれ?」
「ここは空間も時空も歪んでる。
私は今回、皆を招待したから、現世とここを繋げていられるけど、そう長くは持たないよ。
私は貴方達の世界へ遊びにも行くし、呼ばれることもある。
この刺青もファッションじゃないんだよ?」
「そうなんすか! ファッションだと思ってた」
そんな会話が続く中、バルトは静かに口を開いた。
「殿下、きっと殿下には受け入れてもらえない事をワシは理解しております。
それでも、一度……一度、竜王様を始め、王太子様にお姿をお見せください。お願いいたします。儂と一緒にレグランへお戻りくだされ」
バルトは深く頭を下げた。
「じぃ……」
ルーナに食べさせていた手を止め、
静かにバルトを見るラオス。
そのラオスを見つめるルーナ。
そして、その二人を見つめるゼンと魔女。
ルーナは、決めた。
「ラオスさん!」
勢いよく声を出した瞬間、安定の激痛が襲う。
しかし、この八年間の孤独に比べたら、天国のような痛みだった。
ラオスさんは、多分、自分がいるから、おじいちゃん竜人さんと帰れない。
「私、大丈夫です。見てください。
私の首……首輪がないのです。
私、私、……わた……し……」
ルーナは、やっと泣けた。
「私、お父さんと、お母さんと一緒に……あそこに連れて……い、かれ……て……」
涙が止まらない。
「私……い、つ……か、じ、じご、……終わ、るって……」
痛い。
痛い。
全部痛い。
それでも、涙は止まらない。
いつもなら「うるさい」と殴る看守も、もういない。
「だ、だ、だから……だから、大丈夫です」
「師範、人族ってなんなんだ?
なんか胸がぎゅーんってなるぞ」
「知らん! ワシは騙されんぞ」
「番。泣かないで。1人にしないから心配しないで」
「ダメなんです。ダメなんです。家族とは一緒にいないとダメなんです!! すっごく強くてもダメなんでふ……」
ルーナは、堰を切ったように泣き続けた。
「……つがい……」
「あーもぅ! これだから人族は愛されし末っ子なんだよ!」
「えっ?魔女さん?」
「人族への保護本能。通称『雨の中、ダンボールに捨てられた猫のウルウルお目目』よ! ……そんな顔されたら放っとけないじゃない!」
魔女は頭を抱えて唸る。
「あーもぅ! 2日! 2日なら何とかギリギリ、ルーナちゃんをここに置いておける。いい? 2日よ。それを過ぎたら私は無理。私が死ぬか、理がルーナちゃんを閉じ込める。そうなればルーナちゃんの時間はめちゃくちゃ。それこそ……何千年前か、何千年後の世界へ飛ぶかもしれないわ」
「いい? 2日よ。2日で戻りなさい」
「えっ? それなら2日後、俺ら戻らなくてもルーナちゃん捨てればいい……」
「禪!!!」
「嘘だろ……俺ばっかなんでよ……」
今日何回目かの圧を受けたが、ラオスは殺気込みのため、ゼンの冷や汗は止まらなかった。
「若、お願いいたします。2日後、必ずワシも若と一緒にここへ戻り、その際にはきちんとこの娘が生きて行けるよう、お手伝いいたします。若の……若の……」
バルトは拳を強く握りしめ、一度目を閉じた。
「わ、若の、つ……番なら尚更です」
「じぃ……わかったよ。
魔女殿、すぐ戻ります。
どうか番をお願いいたします」




