1-12正しく歪む
そして、頼る父を失った王は、
その遺言の真意も知らぬまま、
結局は優秀なドラガンに縋るしかなかった。
最初こそドラガンを恐れ、
父の言葉もあり信用などせず、
城の空気も悪かった。
だが数年も経つと――
「やはり自分は偉い」
そう思い込み、
優秀なドラガンを“使ってやっている”自分に酔い始めた。
ドラガンは、金も、愚王の欲も、すべて満たした。
そして恨みを抱く者や腐敗した貴族を国の中枢へ押し込み、
国を静かに傾けさせた。
さらに――
国を立て直そうと躍起になる貴族には、
「私もこの国の行く末を案じている」
「今は力を蓄える時だ」
「あの惨事は忘れはしない」
と、もっともらしい言葉を並べ、味方に取り込んでいった。
そして13年目。
愚王は、ついにこう言い放った。
「落ちぶれたお前に似合いの仕事だよ。奴隷商人のドラガン」
「奴隷商人ドラガンは、王に忠誠を」
ドラガンはただ一言そう返した。
人は、都合のいい物語に流される。
想像しやすい未来を与えれば、
勝手に希望を見出し、勝手に踊り出す。
領土が広がると言えば歓喜し、
王になると言えば群がり、
耳障りのいい理想を掲げれば、
それだけで“救われた気”になる。
だからドラガンは、あえて分かりやすく言った。
「私は王になる」
禁術を深く知るほどに、この世界の“歪み”が露わになった。
困れば召喚し、行き詰まれば召喚し、
自分たちの都合で他者の人生を奪う世界。
記録には、召喚された者たちの断末魔だけが残っていた。
家族の名を叫んだ者。
恋人の指輪を握りしめた者。
「道具じゃない」と最後まで抗った者。
――この世界は、最初から誰かの犠牲で成り立っていた。
その事実を知った瞬間、
胸の奥で、鈍い自己嫌悪が沈んだ。
自分もまた、その世界の一部だったのだと。
だからフォルデン王国も、貴族も、民も、すべて滅ぼす。
そして、この世界そのものに終わりを与える。
久々に過去へ沈んでいたドラガンは、
静かに呟いた。
「だが……許されることはしていない」
私は苦痛を与え、
呻き声を聞き流し、
当たり前の平和を散々壊してきた。
部下の命。妻子の命。一族の命。
あれが私を歩かせた“始まり”だった。
だが今の私は、
ただ終わりへ向かうだけだ。
「……滅ぼすまで、私は止まらない」




