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モンスター


 夜の学校でチャイムが鳴る。

 学校の時計を見上げると時刻は午前0時。

 スマホを取り出して時間を確認するが、スマホの表示が文字化けして読み取れない。

 さっき藤原と別れたのが23時ごろ。

 それから30分も経っていないハズなのにどうして学校の時計は0時に指しているのか。

 そして学校のチャイム。

 聞こえてきたからチャイムだと思い込んだが、この音はどちらかというと教会とかで聞く鐘の音だ。

 太く響く音は空にまで響き渡るように、まるで何かの始まりを案じさせるような気がした。


 「・・よし。 帰ろう」


 これ以上ここで立っていても始まらない。

 神隠しだろうが何だろうが道があるのならその内に誰かに出会うだろう。

 そう思って学校の門ではなく帰り道へ足を運んだ1歩目。

 ()()()()()

 それが人間でないことは姿を見ればわかる。

 体長は小学生低学年くらいの身長ではあるが遠目でもわかる筋肉質。

 暗闇でも見えるように猫のような眼をしており、しっかりと俺を捉えている。

 さらには皮膚の色。

 人間と同じ二足歩行ではあるが見える範囲の肌は全て緑色。

 片手には斧のような物を持ち、空いた口から獲物を噛み切る牙のような歯がむき出している。

 その特徴的な身体を見てすぐに脳裏に思い浮かんだ。

 

 大昔、それこそ勇者と魔王と呼ばれた存在がいたとされる神話時代に語り継がれるモンスター。

 

 「ゴブリンッ!!」


 声に反応したか、それともタイミングが合ったのか分からないがゴブリンは斧を振り回しながら真っすぐと俺に向かって走り出した。

 

 「クッソ!?」


 思わず学校へ逃げ込み校内に逃げ込もうとする。

 しかしなんとか辿り着いた建物の入り口には鍵がかかっておりあける事ができない。

 

 「マジかよ! 門を開けるならここも開けとけよッ!」


 どれだけ乱暴に開けようとしてもビクともしない扉に苛立っている間に、ゴブリンはすぐ近くまで追いついてきた。

 俺はすぐにその場所から移動しようとしたが、両サイドからも同じ姿に同じ武器を持っているゴブリンが2体いることに気づく。

 状況は完全に追い込まれた。

 このままでは殺されてしまう。

 勝利を確信したのか、ゴブリンは不気味な笑みを浮かべケラケラと笑っていた。


 「~~クソッ! なんなんだよお前らッ! なんでそんな物()持って追いかけてくるんだッ!」


 ただただ大声を上げることしかできなかった俺は最初に追いかけてきたゴブリンに向けて声を荒げた。

 すると、予想外な事が起きた。

 

 「ナニヲイッテル? オマエ」


 なんとゴブリンは言葉を返してきた。

 カタコトではあるものの意思疎通ができたのだ。

 この好機を逃す手はない。


 「ここがアンタ達の縄張りだっていうなら申し訳なかった! すぐに立ち去るからその武器を下してくれないか?」

 

 俺は両手を挙げて戦う意思がないことを示すと、今度は両サイドにいるゴブリンが腹を抱えて笑い、目の前にいるゴブリンは「ハッ」と呆れたように笑った。

 

 「オマエバカカ? ココガオレタチの縄張り?」

 「な、なんだ? 違うのか?」

 「ン~? イヤ、間違いデハナイナ。 ここはタシカニオレタチの縄張りだ」


 パリンッとガラスが割れた音と共に、俺の右頬から鋭利なもので切られたよな傷ができた。

 ゆっくりと垂れてきた血と共にゴブリンが俺に顔を狙って斧を投げてきたのだと認識した。


 「今、コノ瞬間カラ、()()()()はオレタチの縄張りダ」


 ニッタリと笑みを浮かべたゴブリンが放り投げた手で俺に指を指すと、両サイドのゴブリンが一斉に襲い掛かってきた。

 ガラスが割れた校内の入り口に逃げこもうとしたが、180ある俺の身長ではギリギリ入れない。

 

 (あ、死んだ)


 人間、本当に死を確信すると体が動かないものなんだと思った。

 周囲の動きがゆっくりとなりすべて全貌が理解できるのに体がその光景に追いつかない。

 徐々に首と頭に向かって振り下りてくる斧を何も出来ずに眺める。

 すると、斧を投げてきたゴブリンの後ろにドンッと何か大きな音と共に落ちてきた。


 「ン?」


 不思議に思ったゴブリンが振り返ると、そこにあったのはゴブリンの仲間であろう首が落ちていた。


 「・・・ハ?」

 「まったく、相変わらず醜くて仕方のない生き物ねアンタ達。 見てるだけで吐き気がするわ」


 俺はただただ絶句して何も言葉にできなかった。

 スローモーションで見えていた景色で斧を振り下ろしてきた2体のゴブリンが同時に首が跳ね、いつの間にか制服を着た女子生徒が目の前に立っていた。

 蒼い制服に紅いネクタイは魔法科高校の生徒である特長的な制服だ。

 誰が見ても分かるエリート専用の服。

 それを身に着けた生徒が腰に手を当てて立っている。


 「大丈夫? ケガは?」

 

 顔を横目に声をかけてきた女子生徒は返答に俺は困惑しながら答える。


 「だ、大丈夫・・です」

 「そう。 じゃあ申し訳ないけどもう少しだけそこでジッとしてて。 残りもサクッと片付けるから」

 「残り?」


 その言葉に目の前のゴブリン1体の事を指しているのか思ったと同時に、一体どこに隠れていたのかと言わんばかりのゴブリンが学校の建物の中とグラウンドに出現した。


 「ふん。 ゾロゾロと気色悪い。 一体どれだけの人間を襲ってきたの?」

 「・・貴様、何者ダ」


 先ほどまでの笑みが消え、緊張しているのかなんとなく身構えているように見えるゴブリンに、女子生徒は「ふん」と鼻で笑う。


 「アンタ達みたいな醜悪なモンスターに名乗る名前は持ち合わせてないの」

 「チッ、ソウカヨ。 ダッタラ・・・」


 ゴブリンは片手をあげて女子生徒に向けてニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「ユックリトイタブリナガラ、イヤでもイワセテやるよ」


 そう言って腕を振り下ろすと、急に出現してきたモンスター(ゴブリン)達が一斉に襲い掛かってきた。

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