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神隠し事件


 『残高が不足しています。 チャージしてください』


  改札を通ろうとスマホをかざすと、スマホにお金がないことに気づき、チャージする為に電子チャージ機へ向かい財布をあけると数十円の小銭しかもっていなかった事に気が付いた。

 カードは家にある為、現金の引き落としはできない。

 そうして俺が導き出した答えは歩いて帰るだ。

 ここから家まで歩いて1時間くらいか。

 考えただけでも気だるすぎて寝たい。

 だけど家に帰らなくてはならないという義務感に俺はフラフラとした足取りで家に帰っていた。

 そんな歩きの帰り道には必ず目に付く建物がある。 

 それは国内3大魔法科高校と呼ばれる超有名校。


 関西国立魔法科高等学校。


 魔術を基本とした神秘を学ぶ学校であり、世界に4つ存在を確認されている異世界ゲートの探索する冒険者を育成する場所でもある。

 難関と言われる理由には学力はもちろん、基礎体力や知能指数(IQ)、そして魔素(マナ)と呼ばれる魔術を扱うに絶対的に必要な能力を持ち合わせている事が条件だからだ。

 稀にどれか1つの能力が高い志願者が入学した例があるらしいが、それも最後にいたのは20年以上前だという。


「実は俺にも何かしら突拍子もない能力が・・なんて」


 幼少期、大好きで見てたアニメがあった。

 勇者と呼ばれた少年が人々に恐怖と絶望に染めようと企む大魔王を倒す冒険譚。

 正直、今思えばなんでそんなありきたりな内容に憧れていたのかなんて説明できないが、あの頃の俺は本気で物語の 勇者 になりたいと考えていた。

 しかし、小学校に入学してから行われる健康診断で魔力を測る検査に 魔力適正1% という記録を生み出した。


 これは現代の検査で数例しかな極稀なことだという。


 幸運なことに、現代では科学が発展して魔術なしで働くことが一般となっているが、数世紀前であれば殺されてもおかしくなかった。

 魔術とはそれほどまでに、人類に必要不可欠な存在だったことが歴史を見ればわかる。

 そうして俺は 勇者 になるという夢を小学生になった時点で諦めるしかなかったのだ。


 「だからあまりこの辺には近づかないようにしてるんだけどな~」


 そのまま通り過ぎればいいのに、足が自然と魔法科高校の門前まで歩いてきていた。

 この学校が唯一、勇者と呼ばれる存在に近づける場所だったのに、魔力がないというだけで諦めるしかなかった場所。


 「あ~、俺に魔力があればなぁ・・・」


 諦めたい。

 諦めなくてはならないという気持ちが強くなるほど、この学校をみたらあの頃の夢が脳裏に蘇ってくる。


 「俺も、勇者みたいな冒険をしてみたい」


 そんな叶うはずのない夢物語を。


 『ほぅ、ヌシはユウシャになりたいのか』


 「・・はい?」


 返事をしたつもりじゃない。

 誰もいないハズの周囲から誰かが俺の独り言に反応したことに思わず出た言葉だった。

 そこで気づいた。 

 23時を回っているとは言え()()()()()()()()()()

 人通りどころか周囲の建物に電気はついているのに生活音がすべて消えている。

 まるで世界に1人だけ取り残されたような孤独感を認識した瞬間、空気だけで伝わってきた。

 すると、誰もいない魔法科高校の門がゆっくりと開く。

 俺は驚愕して目を見開き絶句しているが再びあの声が聞こえた。


 『ユくがいいナもなきモノよ。 ヌシのユメはこのサキにアる』


 それ以降、誰かの声は聞こえなくなった。

 幻聴?

 白昼夢?

 それとも何かのドッキリ?

 何度も脳裏に浮かぶ考えが目の前の現実にすべて打ち消される。

 幻聴でも白昼夢でもドッキリでもない。


 俺は確かに今、()()()()()()()()()()()に巻き込まれている。

 ただそれだけが動揺している中で冷静に分析できていた。


 (どうする? 聞こえた声の言う通りに学校に入るか? でもそれが何かの罠だっていうことも)


 ただ、冷静に分析できた現実はそれだけで他の事は全く考えがまとまらずにいる。

 誰もないはずなのに不自然に開いた門。

 人の気配が消えた空間。

 そして謎の声。

 これらが揃っただけで怪談が作れるというものだ。


 「・・・怪談?」


 そこで先ほど駅で別れた藤原の話を思い出す。

 解散する前にスマホで見せたニュース記事。

 半年前から人が消えると言われている神隠し事件の事を。


 「もしかして俺、巻き込まれた?」


 その言葉を頷くように、学校のチャイムが鳴った。

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