第9話 農地改革の残滓
明くる日、札幌の佐藤さんから委任状が返送されてきた。これでようやく色々と捗る。
早速、村役場に向かい現況証明書の発行手続きを行うとあっさりと受理された。1週間もかからず発行できるそうだ。お値段は一筆につき2000円也。
しかし、二束三文の土地とは言え、土地が手に入るというのは面白い。AIについつい儲かる方法を尋ねてしまう。
昨日は、サウナのロウリュなどに使うエッセンシャルオイルの原料となるハーブ栽培について根掘り葉掘り聞いていた。原発立地の土地柄、口に入るものの栽培はなかなかハードルが高そうに思えたので、農業の変化球をシミュレーションしてもらったりしていたのだ。AIエージェント様様である。安定して儲けるためには3ヘクタールくらい要求されたが。
農業委員会が事務局窓口しかないということは、農家になって農業委員会に選出されれば農地の売買を支配できるということでもある。趣深い。
また、周辺の所有者が分からなそうな土地についても建設課窓口で聞いてみたが「あの辺でしょ? もう住んでないんじゃないかな?」としか情報はなかったのだが、あちこちの登記簿に載っていた「自作農創設特別措置法第16条売渡」というものを聞いてみた。一応、AIやネットで確認はしてあるが、「この記述がある土地の取引は複雑になる可能性があるため、必ず不動産会社や司法書士、農業委員会に調査を依頼してください」と不穏な一文を見つけたためだ。
「あー、昭和23年とか昔の農地改革の時のやつだね。あれは」
「農地改革……」
社会で習ったような、習わなかったような。
「平たく言うと、国が地主から土地を買い上げて、小作人に安く売り渡した制度だね」
「でも農家をやるにはちょっと半端なサイズですよね……」
「まー当時は炭鉱とかがまだあって、人数もいたから成り立っていたんだろねぇ」
「誰も農家として残らなかったんですね。今、山ですよね?」
「山だねぇ」
「売買には特に問題ないです?」
「地目変えれば大丈夫だと思うよ」
小分けにして小作農人に売り渡して、結果放置されることになった土地。農地改革とは……。やはりAIのシミュレーションでもあったように維持継続していくには数ヘクタールは必要なようだ。兼業で家庭菜園レベルなら成り立つのだろうが立地が不便すぎる。
とりあえず、売買には問題はなさそうなので小分けになった土地(とはいえ一筆1000坪クラス。でも評価額は驚きの1~2万円)を切り崩していくのに支障はなさそうだった。炭鉱についてもそのうち調べてみよう。
お礼を言いつつ村役場を後にした。
次の手は、お手紙攻勢だ。
菜々さんのお手紙攻勢をなぞるわけでもないのだが、これが意外と意味のあることだったのだ。
所有者が不明の土地をどうにかしようと考えた時に取れる手段はいくつかあるのだが、使いやすいのは地方裁判所への所有者不明土地管理命令の申立て。この辺も国交省のハンドブックなどを参考にしながら正確な名称でAIに聞かないとあれこれ混ざった回答をされるのだが、一番シンプルなのは2023年に施行されたこれだ。隣の土地が放置されているので管理しろという申立て。
所有者が見つからない場合には裁判所が交渉可能な管理人を立ててくれる。
所有者が不明であり、調査しても所有者が見つからないことが前提になるため、まずは登記上の住所に手紙を出し、届かなかったことが一つの証拠になる。その後に戸籍や住民票の調査になるのだが初手はお手紙だ。
とはいえ、所有者不明土地なら誰でも仕掛けれるわけではなく、自分の所有地の隣接地など利害関係を立証する必要はある。委任状も揃えてあるので、そろそろ利害関係者として振舞ってもいいだろう。
ピックアップしていた長年登記が変更されていない隣接地の宛先に「昨今は熊が出るので共同で草刈りをしませんか?連絡お待ちしています」という旨のお手紙を、これも自分が受け取ったら嫌だなと思いつつ出す。
ついでに、同級生の久保あやかにも「熊が出る土地も買っちゃったんだけど、今度草刈りを手伝って!」と断られる前提のメッセージをする。まずは自分が管理するという噂を流しておけばいい。大滝一族にもそのうち伝わるだろう。
菜々さんはたまに興が乗ると中二病的表現を繰り出してくるが、それに則るとこんな感じか。
「さぁ。支配域の拡張を始めようじゃないか」
新作「支配域の管理論」始めました
あと「札幌クソゲー」もラストまでプロット書いたので頑張って完走したいと思っています。
リアル土地買いたいので評価協力お願いしまーす!




