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支配域の管理論〜ドミネーション・マネジメント  作者: nov


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第31話 呼び出し

 昼前、知らない番号から電話が来た。


「黒部くん? 大滝のところのものだけど、少し話せるかい」


 声は柔らかかった。けれど、柔らかいまま逃げ道を塞ぐ感じがあった。


「はい」


「集会所じゃなくて、郵便局の裏でどうかな。人目が少ない方がいい」


 断る理由はなかった。

 むしろ、ここで避けるほうが不自然だった。


 約束の場所には、大滝の側近が一人立っていた。

 そして、その少し後ろに、大滝本人がいた。

 声をかけたのは側近だが、呼び出したのはたぶん本人だ。


「最近、先に話を受けるようになったって聞いたよ」


 大滝はそう言って、僕を見た。


「はい」


「悪いことじゃない。誰かが段取りをやらないと、村は回らないからね」


 その言い方は、褒めているようでいて、先に枠を決めていた。


「修繕も、電源も漫画の冊子も、うまくやってるそうじゃないか」


「必要なことを、必要な順にやってるだけです」


 僕がそう返すと、大滝は少しだけ顎を引いた。


「必要なこと、か。そう言えるのは立派だ」


 側近が、話の流れを切り替えるように紙袋を差し出した。

 中には、集会所の照明の部材一覧と、空き家修繕に使えそうな古い予備品のリストが入っていた。


「うちでも手伝えるところはある。村のためだからな」


 それは協力の顔をした確認だった。

 誰が修繕を回すのか。

 誰の名前で進めるのか。

 高橋さんが前で話すなら、その前に誰が地域を回しているのか。


「ありがとうございます」


 僕は紙袋を受け取った。


「ただ、ひとつだけ」


 大滝がそこで言葉を置く。


「冊子のほうは、あまり広げすぎない方がいい。村の話は、広がると余計な人も寄ってくる」


 声は穏やかだったが、目は笑っていなかった。


「記録は残した方がいい。でも、残すなら、村の中で扱える形にした方がいい」


 言い換えれば、外に出しすぎるな、ということだ。

 村の内側の順番に収めろ、と。


 僕は紙袋を持ったまま、すぐには返さなかった。


「分かりました」


 そう答えたとき、自分の声が思ったより落ち着いていた。


 大滝は、それを聞いて少しだけ頷いた。


「それでいい。黒部くんが先に受けるなら、受けるなりの責任も出る。村は、段取りができる人を嫌わないよ」


 嫌わない。

 その言葉の中に、許すでもなく、認めるでもない線が見えた。


 会話が終わると、大滝は側近と一緒に先に戻った。

 僕は紙袋を手に残したまま、少し遅れて歩き出す。


 中身は協力の材料だった。

 でも、同時に境界線でもあった。

 どこまでなら手を貸すのか。

 どこから先は、こちらが勝手に動くのか。


 戻る途中、あやかからメッセージが来た。


「ちゃんと呼ばれた?」


「呼ばれた」


「そろそろ、村が黒部くんを見にきてるね」


 その一文を見て、僕は紙袋の重さを手のひらで確かめた。

 道具は増えた。

 でも、自由も少し狭くなった気がした。


 村で先に受けるというのは、そういうことだ。

 便利になるぶん、見られる。

 見られるぶん、選ばされる。

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