第2話 可能性はどちらにでも転がっている
バイト先のコンビニから一人暮らしの我が家に帰ってきた。
自転車の帰宅道中も空き家について考えていたものの、今のところあてになるものは見つかっていない。今年祖母が亡くなって長屋のような村営住宅に一人暮らしなのだが、近所付き合いはほとんどない。知っている顔に挨拶程度のお付き合いだ。顔見知り程度に空き家の相談をするのも何となくはばかられる。しかも、自分が住むわけでもないのだ。
そして、そもそも村営住宅に住む人が空き家を持っているわけもないのだが。
「どうしたものかなっと……」
最近は分からないことはとりあえずAIに聞く。しかも複数のAIに、だ。
意外と性能なのか性格なのかが違うので異なる回答になったりする。情報の裏取りをするのも面倒だったりするので最初から同じことを複数のAIにコピペで聞いてしまうのだ。ある意味、セカンドオピニオン。
「ネットじゃ情報がないって言ってたっけ……」
たしかに村の空き家をAIに聞いても出てこない。まぁ不動産取引サイトではないから当たり前なのだが。……というか、この村に不動産屋なんてない。
「まぁ、そうよな……」
AIどころか普通にネット検索しても見つからない。千四百人くらいしかいない村なのだ。飲食店すらまともにないのに不動産情報があると思う方がおかしい。だとすると……。
「ヒット!」
村には小中学校しかなく、高校は隣町まで通っていた。その隣町の不動産屋も中小零細が多く、テレビCMなんかに出てくるような不動産探しサイトに情報を載せていないところも多い。ローカルな不動産屋のHPを町役場の不動産業一覧や空き家ネットの購入履歴などからリストアップして探し回る事、わずか三十分。
一軒だけだが空き家が見つかった。三百坪の土地付き二階建てで驚きの百万円。場所は割と近所だ。
「百万円なら……僕でも買えるな……」
実はシングルマザーだった母が亡くなった時の保険金がまだ二千万円ほどあったりする。祖母も数百万円の遺産を残してくれていた。
村営住宅も家賃が月に一万五千円とかなので、一人でひっそりと生きる分にはバイトだけで食いつなげてしまうのだ。高卒で入社した先もブラック気質というか家族経営の会社で子分のようにこき使われるのに嫌気がさして辞めた。正社員という名の奴隷には耐えられなかった。この村にはそんな職場しかなかったので、もう週三日のコンビニバイトで十分だと思っていた。
「……不動産かぁ」
もしかして、儲かるのかもしれない。
この過疎った村だ。情報が出回らないだけで空き家なんてもっと探せばいくらでもありそうだ。実際、住んでるのか住んでないのか怪しい一軒家なんて沢山ある。葬式だ相続だなんて話は毎週のように耳にするくらいだ。
この村に移住してくる人なんて工事関係者や電力関係者くらいだと思っていたが、意外とチャンスが転がっているのかもしれない。
「とりあえずこれで一万円ゲット。なのかな?」
名刺のメールアドレスに不動産屋のURLを貼り送信した。こんな三十分の作業で一万円がもらえるならばラッキーでしかない。
「……探せば他にも何か見つかるかもしれないな」
バイトして、ソシャゲをして、寝るだけ。高卒の学歴で都会に出る気も起きなければ、地元の繋がりばかりの職場には辟易している。投資なんてそんな甘いものじゃないだろうし、あぶく銭にはむしろうとする輩が湧いてくる。母の保険金を受け取った時に、世の中は敵ばかりだと思い知らされた。
そんな僕だったが、なんだか久しぶりに少しだけ心が躍っていた。




