第1話 外から見えるもの。中から見えないもの
国道に面した村に一軒だけのバイト先のコンビニには時折、風変わりなお客さんが訪れる。
「赤マルは......えーと、何番だろう?」
カウンターでタバコを探している、緩く巻いた茶髪ロングに体の起伏が分かる薄手のセットアップスウェットの女性。隙のないメイクで明らかに村の住民ではない。
「マルボロですね。一つでいいですか?」
「あ!二つで!若いのによく分かるわね!学生さん?」
屈託のない笑顔からはそんなに歳の差を感じないが。
「いえ、祖父が吸っていたもので。去年高校を卒業したので一応成人なんです。千二百円になります」
「ありがとう。ところで、この辺に空き家とかないかな?」
「空き家ですか……。公営住宅に空きはありそうですけど……」
「公営住宅じゃ自由がきかないのよねー。ネットじゃ情報載ってないし、役場に行っても教えてくれないし」
実際のところ、住んでいるのか住んでないのか不明な空き家は結構あると思う。うちは村営の住宅なのでまだ管理されているが、管理されずに半ば朽ちている一軒家はそこらじゅうにあるのだが……。
「いっぱいありそうですけどねぇ……」
「どうやったら情報が手に入るかな……。ねえ君、この村出身者だよね? バイトしない?」
「そうですけど、バイト……ですか?」
絶賛ただ今バイト中なんだけども……。美人さんは勢いと圧が凄い。
「空き家探しバイト! 出来高制! 見つけたら一万円。成立したら三万円!」
「おぉ……」
なんか余裕で稼げそうな雰囲気。見つけるだけで一万円だなんて。闇バイトでもないだろうし。
「とりあえず、やってくれるならここに空メールでも送っておいて。それじゃ」
去り際に渡された名刺には社名もなく、シンプルに高橋菜々の名前とメールアドレスだけが記載されていた。ただのコンビニバイトにポンと怪しげな高額バイト話を振ってくるし、一体何者なんだろうか……。
とりあえずバックヤードにいた店長に空き家がないか聞いてみたものの、実家の近所にありそうだけど誰が所有者なのかも分からないとの回答だった。なお、過疎化が進んで人口が千人ちょっとのこの村には不動産屋は一軒もない。そして、所有者も分からない家に押し掛けても誰も住んでおらず、交渉相手ももちろんいないのだ。
これは思ったよりも骨が折れるかも知れない。




