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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 3章 それぞれの王都

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魔母胎源

 ハーフエルフの黒い宿命。

 それはこの魔力至上の世界であるエリュハルトにおいて、特別な意味合いを持つ。

 フィーム族とエルフ族のハーフ。それは単純に二つの種族の性質を併せ持つというだけではない。その血脈の掛け合わせしだいでは、強大な魔力の血潮を手に入れられる可能性があるという、古来よりの伝承が存在したのだ。

 そしてまことしやかに囁かれる負の伝承。

 ザックマーニャは六陸連合共和国の一つアリリーフの地にて、エレノールと初めて出会った日のことを思い起こす。

 一目見てすぐに分かった。

 自分と全く同じ宿命を背負っている者。

 望むと望まないに関わらず、『魔力極限(フル・スペック)』という異能の可能性を、その身に宿している一人だということを。


(まさか、わらわの持つ神の包丁『魔母胎源(マザーオブ・アリサ)』の力を嗅ぎ付けるとは! やはりこの娘、他の者とは明らかに違う)


 ザックマーニャは、短く……そして考えられないような速さで魔紋を錬成する。

 彼女の持つ銀白色の錫杖が、まるで生きているかのように光り輝き、その力を引き出すのを助けるかのように唸りを上げた。

 いきなり力強い魔力の波が、エレノールの身体を空に浮かび上がらせた。

 強い魔導の力にまったく抵抗ができず、圧迫するような魔力量に息をすることもできない。呼吸ができない苦痛に顔を歪ませる。そのままエレノールの身体は跳ね上がった魔力の奔流に引きずられるかのように、何度も魔導伝達の間の壁に叩きつけられた!


「キャハハハ! エレノール、楽しそうじゃのう! わらわの魔力の味はどうだ。お前を見つけてから何年も経ったのだ。そろそろわらわの物になるのじゃ!」


 もちろんここまで痛めつける必要性は、全くと言っていいほどないはずだ。しかしザックマーニャは、なぜかエレノールに対しては嗜虐性が増す傾向にあった。


(その誓いを立てる訳にはいかない! 誓いを立ててしまえば全てを支配される)


 特に魔導師同士においての誓いの言葉とは、それほどまでに恐ろしいものなのだ。

 エレノールは口から血を吐き、魔力の渦に翻弄されながらも、その叩きつけられ続ける苦痛に歯を食いしばって耐える。


「ミャアミャア! ミャアアア!!」


 使い魔は術者の感覚をある程度共有しているもの。ミンミの苦しみの鳴き声が広間にこだましていった。


 しばらくするとザックマーニャは飽きたのか、急にエレノールを開放する。

 はぁはぁと口の中から血を流し、肩で息をしながらその場にうずくまる。そして最後の力をふり絞り、ザックマーニャを見上げた。


「殺す。いつかあんたを殺してやる、ザックマーニャ! 絶対……あたしはいつか、あんたの上に立ってみせる」


 エレノールの決して屈しない精神力。凄まじい形相でザックマーニャに断固たる決意を叩きつける。その宣告を受けながらも、どこか楽しそうに口元をほころばせるザックマーニャ。


(同族嫌悪とでも言えばいいのか。その決意漲る瞳が忌々しいわ。しかしそれもまた称賛に価すると感じてしまう部分も、わらわの中に別に存在しておる。奇妙な感覚じゃな。しかしそれもまた一興)


 ザックマーニャは相反する複雑な心情を、頭の中で反芻するように巡らせた。

 すると両開きの扉の前でうずくまっていた男性魔導師が魔力を込め始める。


「大変な不敬であるぞ。アストリア」


「マスター、やはりこの女を生かしておくわけにはいきませぬ」


 タリカも長杖を振りかざし、魔力を練り上げる。

 ザックマーニャは二人のα級魔導師が同時に魔紋を錬成し、うつ伏せに倒れたエレノールに向かって攻撃の魔導を放とうとしている様子を無感動に顧みる。

 その直後、銀白色の錫杖を構え大きく息を吸い込む!

 ビリリ! と魔導練達の間に噴出する威圧の魔力。それは二人の魔導師の込めた魔力をも一瞬で飛散させた。


「わらわが望まぬのに、何を勝手に魔力を込めておるのじゃ。この場で消してしまっても良いのじゃぞ。代わりはいくらでもおる」


 冷徹に言い放つマスターの声に、頭を絨毯に押し込めるようにひれ伏す二人の魔導師。

 血を流し、地面に両手を付きながら、そのやり取りを茫然と眺めているエレノール。ザックマーニャはニヤリと口の端を歪めながら笑いかける。


「まぁよい。わらわはアストリアが大好きなのじゃ。お前のその反骨心がとてもとても心地良い。今後も神機焔刃の使い手の傍に居て、『わらわの為』に蝙蝠で居ておくれ」


 ゾッとするような残忍な笑みを浮かべ、靴でエレノールの肩を思いっきり踏みつける。骨が折れるような鈍い音が耳に中に響き、激痛が全身を駆け抜けた。


「わらわを殺したいのか。いいのう、やれるものならな」


 エレノールは跪くも、痛みに耐え、血を流しながらも抗う力を緩めない。

 渾身の魔力を込め、目の前の栗色の髪の幼女を睨み返す。


「ほう……魔力量が跳ね上がっておるのう。今やα級でも問題無さそうじゃな」


 ザックマーニャは自分の前でうずくまり、肩で息を繰り返すエレノールを舐めるように見下していた。それでも、なぜか自分の中の違和感は消えない。その理由はエレノールと出会ってから解消されたことはなかったのだ。


(いつか、わらわに匹敵するほどの魔力を手に入れる可能性もあるじゃと? ふふ……ありえんわ)


 魔導伝達の間に張り巡らされていた威圧の魔力は消えつつあった。

 ザックマーニャは再度玉座に座ると、悲壮な覚悟で立ち上がるエレノールに対し、こう告げるのだった。


「まぁよい。今回の件は魔力量を上げたという一点において目を瞑ろうではないか。だが次はない。わらわの命に背くことがあれば、直々に極刑に処する。なんてわらわは寛大なのじゃ……そうであろうお前たち」


「エコール・オブ・ミスティール。全ては魔力の為に」


 エレノール、タリカ、そしてもう一人の魔導師も一斉に唱和する。しかしその視線は敵意を持ってエレノールに注がれていたのだ。



トラジの持つ焔の神器『焔刃』 氷雨が所有する氷の包丁『凍凪』、魔王の力を表す究極の包丁『絶対模倣』、そしてザックマーニャの持つ『魔母胎源』

7つあるうちの4つを物語内で披露できたのは、単純にすごく嬉しい。ここまで書けたのだなと感慨深いものがありますね。

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