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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 2章 冒険者ギルド『古龍の息吹』

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情報処理の限界

 俺とエレノール、グリューンはギルドの奥まったところにある小さな部屋に通される。

 掛けられている鍵をカチャリと開けるルーシィさん。

 中は落ち着きのある木製の机と小奇麗な椅子が並び、まるで密談ができそうな雰囲気の小さな部屋だった。

 ちなみにベルガはお留守番だ。

 もしかしたらフィリナ姉妹が戻ってくるかもしれなかったし、実は狼獣人である彼が入ると、室内の空間がかなり圧迫されてしまうというのが切一番理由であった。

 俺とエレノール、そしてルーシィさんは向かい側の席に座る。これから面接が始まるかのような流れだ。グリューンは少々酔いが回っているのか赤い顔をして、テーブルの端にちょこんと腰掛けていた。エレノールが座ると、彼女の肩掛けバックから使い魔のミンミがちょこんと顔を出した。


「ミンミ。懐かしい……アタイの事覚えてる?」


 ミンミはグリューンの近くを通り過ぎ、差し出した彼女の手を愛おしそうに舐めていた。ルーシィさんは嬉しそうにミンミの頭を撫でる。


「で、どう? トラジの魔力の色は? 入都試験はパスしたから問題ないはずなんだけどさ。あんたの目から見れば一目瞭然だと思うし」


「そうでっすね。まずはそこら辺から説明していきましょうか。トラジさんの頭の中が分からないことだらけで困ってらっしゃるようでっすから」


 目をくりくりさせて、まさに好奇心に満ち溢れた目でルーシィさんが俺の方に向き直った。彼女は持ってきた書類から1枚を丁寧に抜くと、目の前に置いた。『冒険者ギルド規約』というタイトルが書かれている。


「それでは、今からトラジさんの魔力の色を測ります」


「ルーは3級神官の資格者なの。聖アルベルト教会所属じゃなくて、六陸連合の土着の宗教だけどね」


 そう言って、楽しそうに笑うエレノール。

 後から知ったんだが、どうやら『魔力の色』とは特殊な訓練を受けた者や、入都試験で使った水晶球のような魔道具を用いて判別する類のものらしい。そういえばフィリナも3級神官だと言っていたような気がするな。

 ルーシィさんが神にでも祈るかのように、両手を胸の前に合わせる。


魔眼鑑定(アプレイズ)


 彼女自身の身体から吹いてくるような穏やかな風の流れを感じる。それと同時にエレノールの瞳の色が薄い朱色に染まる。ミンミは耳をピンと立て、グリューンも鼻をひくつかせるようにして、その場の魔力の流れの変化を感じ取ったようだ。


「ほぇぇぇ……真っ青な魔力を感じますね。これほどの青い色を見たのは久すぶりな気がします。それにこれほどの魔力量と、特にトラジさんの腰に差してある魔道具が放つ、特異な波動は一目瞭然でっすね。これが神機焔刃の魔力……すごいでっす」


 そんなことまでも分かってしまうのか。

 ギルドの受付を任されていて、エレノールの知り合いっていうからそれなりの力を備えた人なんだろうとは思ってけど。まさかここまですぐに分かってしまうなんて。


「だから言ったでしょ。ルーに隠し事は意味ないの。鑑定魔法って実は特殊でね。血筋とか素養がないと扱いきることが難しいのよ」


「でもアタイはあんまり自分の力を磨いてこなかったから。エレみたいなことはできないんでっす」


 照れたように笑うルーシィさんがとても可愛い。ドワーフ族って年はいくつくらいなんだろうか。やっぱりエレノールと一緒で長命なんだろうか。


「ルー。手が止まっているわよ」


 呆けたように俺の魔力の波に揺れていたルーシィさんが、エレノールのその声にはたと気付き、両手を顔の横で開くような動作をする。そんな仕草もまた可愛い。

 この短時間のやりとりで、目まぐるしく変化するルーシィさんが、俺の中で異世界の推しになりつつあったんだ。

 素朴というか、どこか安心できるというか。見ているだけで気持ちが和むような感覚だ。


「すんません。本題に入らせて頂きます。トラジさん、もしも王国共通語(フィーム語)が書けるようであれば、こちらの書類に記入して頂けると助かります」


 ルーシィさんが手早く別の書類を俺の目の前に差し出す。『本人確認書類』と書いてある書類だ。

 自分の名前と出身地、生業(なりわい)……生業か。寿司職人は変だな。料理人でどうだろう。

 主な能力、あれば得意技や異能? 食材の目利きができるとかはどうだろうか。包丁の扱いが少しできますとか。

 最後に所属や縁故(えんこ)か。ベルガは王国騎士団の隊長だし、エレノールだってランクの高い魔導士だからそれを書けばいいのか?

 エレノールは面倒くさそうに、早く書きなさいよという表情を浮かべながら促してくる。

 そんなことをモヤモヤと考えながら、目の前の書類に『日本語』で書き込んでいく。


「相棒、しまった……そうだよ。そうなるよな!」


 グリューンの呆れたような強い視線。あれ? 今書いている書類、なんか変なのか?

 顔を上げると、エレノールの切れ長の瞳が引き歪んでいることに気付く。

 ルーシィさんが眼鏡を掛けたり外したりしながら、両目を勢いよく擦っている。

 ミンミだけは気だるそうに『ミャア』と言って、カバンの中に入っていった。


「あんた、なんで『古代エリュハルト文字』なんて書いているの! そんなん皆に読める訳ないでしょ!!」


 止まっていた時間が動き出したかのようにエレノールは立ち上がり、俺の胸ぐらを掴み上げものすごい剣幕でまくし立てた。


「え? 古代エリュハルト語? 普通に書けって言うから書いただけだぞ」


 繕うように笑顔を振りまくグリューンを射抜くように見つめ返した。その目線に慌てたように、右手の人差し指を立てて済まなそうに口から出た言葉。


「いや、相棒。お前の異能『情報処理(スフェア・バイト)』は読みと判別の部分だけだ。書く能力には確か反映されないはずだぜぃ」



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