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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 2章 冒険者ギルド『古龍の息吹』

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王都内へ

 赤髪の長髪をひるがえし、抜き放った緑色の風の魔力を纏いしレイピアの切っ先がタリカの後ろから彼女の首元を射抜かんと突きつけられる。


「……こんなところで何をしているタリカ。お前にはヒサメの見張りを命じていたはずだ。あまりに勝手に動くようであれば、私にも考えがあるぞ」


 そこに立っていたのは、王国騎士団団長ジルベニスタ・シュトルムヴォルフ。

 魔紋を錬成していたタリカの額に、大粒の冷や汗が流れるのを確認する。

 いつの間に現れたんだ。

 俺だけじゃない、この場に居た誰にもジルベニスタの気配には気づけなかった。

 それはタリカでさえも例外じゃないわけで。

 彼女は練っていた魔力を解放するように手を広げる。

 持っていた杖が音を立てて床に転がった。

 焔刃から焔の魔力が消え、包丁の銘の輝きも落ち着きを取り戻す。


「ジルベニスタ様、大変失礼いたしました。ついつい盛り上がってしまって! だって、見張りだけなんて退屈過ぎますわ」


「牢に繋がれているとはいえ、神の包丁の使い手であるのだぞ。それなりの腕のものが見張らなければ、いざ逃げ出してしまったでは済まされんのだ。遊ぶのも大概にしろ」


 タリカの拡散された魔力を感じ取り、ジルベニスタは自ら抜いたレイピアを腰に戻す。

 風の魔道具シルフィー・ソーン。

 確かエレノールがそんなことを言っていたはずだ。

 それに氷雨兄さんが牢に繋がれていると言っていたな。とりあえずはいきなり処刑とはならなかったようだから良かった。

 俺の安堵の表情を横目で見ながら、ジルベニスタは大股で側まで歩み寄ってきた。


「タリカの、この場での暴走について詫びさせてもらおう。先ほどから見ていた限りではトラジの魔力鑑定自体は問題なさそうだ。限りなく青に近い魔力の色を感じた。入都には充分だと思われる。そうだなタリカ」


 そうだよ。魔力の波動の色を見るだけって言っていたんだよ。

 タリカを倒すことが目的では無かったのに、若干自分の中で目的がぶれてしまっていたことに今更ながらに気付いた。


「ザイール・ファルナート。その通りでございますわ」


 紫色の魔導士のローブの裾をはためかせ、杖を掲げるようにして宣言する。

 その言葉にフィリナとセリナが顔を見合わせ、ホッと胸を撫でおろす。

 タリカは少し頬を膨らませるようにして不機嫌な様子が感じられたが、ジルベニスタの手前それ以上の感情を表に出すことはないんだろう。

 この場で極大な魔力を練り出したタリカもタリカだが、すぐさま戦闘モードに突入しようとした双子姉妹の喧嘩っ早さもなかなかだと思う。

 俺は手の中に握られた神機を腰の包丁ケースに静かに仕舞うと、改めて腕を組みジルベニスタとタリカを睨みつける。

 すると団員である狐風の容貌の獣人が、奥から紐で括られた羊皮紙らしき束を持ってくるのが見えた。彼はそれを目の前で広げると、少々まくし立てるような口調で説明を始めた。


「では失礼いたします。こちらが『鑑定の羊皮紙』と呼ばれる入都試験を通った証の品となります。先ほど冒険者ギルド登録をなさるような事を仰っていたので、その際にはギルド受付にこちらをお出しください。問題なくギルド登録をすることができれば、発行されるギルドリングにこちらの情報が移されることになります」


 俺は勧めてくれた椅子に座ると、獣人の彼に言われるがまま自分の名前や王都に来た理由、滞在期間など細かいことに応えていった。フィリナが隣でフォローしてくれたお陰もあって、問題なく事務的な処理は完了したようだ。

 不思議な感覚になったのは、机の上に置かれた羊皮紙に必要事項を獣人が記載する際に、自分の目からはどう見ても『日本語』で書き綴っているようにしか見えなかったという点だ。

 これはもちろん神の包丁の異能である『情報処理』のお陰ではあるのだが、逆に異世界感が削がれる感じで、この能力の異質さが際立って感じられた。

 周囲で交わされている言葉や文字が、自分の知っている言葉に自然に置き換われる能力。改めて認識するとこれほどチートな力も無いと思う。


「色々と手間を掛けさせて申し訳なかった。それと養父……いや、ベルガには明日にでも騎士団本部に戻るよう伝えて欲しい」


 ジルベニスタはベルガの義理の息子。しかし団長と元隊長という関係だ。

 複雑な心境を感じ取り、黙って頷く俺やフィリナ。

 そんな感情の動きを知ってか知らずか、タリカが大楊に口を挟む。


「エレノールにも伝えて欲しいですわ。魔導協会で待っていると。マスターもエレノールの帰還を喜んでおられたと」


 グリューンが俺の肩の上であからさまに舌を出して、何事か言いたげな表情をする。

 俺はジルベニスタに改めて向き直ると、こう付け加えた。


「落ち着いたら改めて氷雨兄さんに会わせてもらう。その時はもちろんお前が間に立ってくれるんだよな」


 そう言われることは予想の範囲内だったのであろう。ジルベニスタは考え込む様子もなく、すぐに答えを口にした。


「彼は魔王軍の重要人物。会うのはもう少し待って欲しい。ベルガの件も然りだが、様々なことが明らかになったら必ずお主にも連絡を入れるつもりだ」


 ああ、分かっている。そう俺は頷いてみせる。

 冒険者ギルドでの登録もしなくちゃならないし、ファーバンも探さないといけない。やることはたくさんあるのはこっちだって同じだ。

 俺はフィリナの手に引かれ、セリナに背中を押されながら、大きな東門を潜り抜け王都の中に足を踏み入れたんだ。



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