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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 2章 冒険者ギルド『古龍の息吹』

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わたしは性格が悪いの

「タリカ副隊長殿。判定の水晶球がおそらく壊れていたか、不良品だったのではないかと思われます。取り急ぎ新しい物をもってきますがゆえ、このままお待ちください」


 タリカは自慢げに大きな胸を反らしながら、口元に妖しい微笑を湛える。

 副隊長。まさかそんなに位が上だったのか。

 確かエレノールよりも魔導師としての等級が上だって話だったよな。ということは、結構強いってことになる。


「その必要は無いですわ」


 彼女の着ている紫のローブが、満たされていく魔力の波動で揺らいでいる。

 薄い、赤みがかった水のようなベールがタリカの全身を覆うようだ。

 フィリナがぎりりと拳に力を入れる。

 詰所内に相対する魔力のせめぎ合いが起こり、静かな風の動きが小さく渦を巻く。

 机の上に置かれた書類がその風によって飛ばされそうになり、「ヒィ!」とネズミ獣人が必死に押さえ込んでいた。


「ここで水晶球が来るのをただ待っているだけではつまらないですわ! どうでしょう。わたくしがトラジ様の御力をこの場で試すと致しましょう。騎士団副隊長でもあり、魔導協会α級としても名高い、このタリカ・リーベルナックの一存であれば、入都するのも問題はありませんわ」


 タリカのこの物言いや無駄な自信の表れとでも言えばいいのか、面倒くささ爆発の発言はどうにかならないものなのか。ベルガがいればイライラと尻尾で机をひとつくらい吹き飛ばしそうだし、エレノールだったらそのままドンパチ魔導合戦が始まりそうだ。


「ひとつ腑に落ちないことがあるの。いいかしら」


 フィリナがタリカに挑むように胸を張る。胸の大きさ勝負ではタリカには敵わない……いやいや、そういうことじゃないだろう。うん。

 肩の上にいるグリューンと目が合い、痛々し気な眼差しを俺に向けた。

 考えが分かってしまったのか。


「別にタリカさんと勝負をする必要はないわよね。水晶球が壊れたのはトラジのせいかもしれないけど、それとこれとは話が違うわ。どうして必要以上にそうやって私たちを煽ってくるのか聞きたいのだけれど」


 ピリピリとした緊張感の中、フィリナが詰め寄るようにタリカに言葉を叩きつける。


「あーあ。こうなったら姉さんって威圧感半端ないからね。大変だ」


 セリナの言葉にタリカは、大きな声で笑いながら長杖の柄を床に叩きつけた。

 ガシャンという乾いた音が詰所内の壁に反射して、兵士たちが肩をすくませる。


「知っているでしょう? わたくしは性格が悪いの。ベルガ隊長といい、ハーフエルフのエレノールといい、気に喰わない奴にはちょっと邪魔をしたくなるのですわ。だって楽しいじゃありませんか……フィリナさんでしたかしら? 貴方が思っているほど大した意味が無くてごめん遊ばせ」


(ラベルク村でも感じてはいたんだが、こいつは明らかに性格が最悪じゃないか)


 俺はタリカの底意地の悪さを全く隠しもしない物言いに、段々とイライラが募ってきていた。それはフィリナもセリナも一緒だったんだろう。肩の上でグリューンの爪が喰いこむのが分かった。


「水晶球を待っている時間が惜しいのはお互い様ですわ。この扉の向こうがちょっとした兵士の訓練場になっておりますので、そこでトラジ様の力量を測るとしましょうか」


 タリカが勝ち誇ったように視線を合わせてくる。そしてそのまま視線を奥の扉に向わせてニヤリと微笑んだ。


「測るもなにも、そうしなきゃ入都出来ないんだろ。だったら早く始めようぜ。俺はこんな茶番さっさと終わらせて、冒険者ギルドに向かいたいんだよ」


 ✛ ✛ ✛ 


 俺とグリューン、フィリナとセリナは隣の訓練場と呼ばれる広間に通された。

 そこは20畳ほどもある訓練をするには充分な広さを兼ね備えた場所のようで、壁際に沢山の武器が立てかけてあり、その横には簡易的な盾や皮鎧などもきれいに並べられていた。


「それでどうやったら入都審査を通過になるんだ? まさかお前に勝ったらとか言わないよな」


 戦意むき出しに一番隊副隊長に敬意も何も示さないからか、兵士たちがざわざわとなにやら小声で呟いている声が聞こえる。流石に知ったことか。


「まっさか、そんなことは言いませんわ」


 小バカにしたような物言いは慣れることはない。ぐるぐると器用に長杖を回しながら、舞うように訓練場の中央に歩み寄るタリカだ。


「元々入都審査は、対象者の魔力の質を図るためのもの。判定の水晶球はそういった性質を簡易的に測れるように造られておりますわ。ですので同様の検査と考えればわたくしがトラジさんと模擬戦を行う中で、貴方の魔力の質を測らせて頂きます。問題が無ければ晴れて合格となり、入都出来る運びとなりますわね」


 俺は腰の焔刃を強く意識する。素早く包丁ケースから引き抜くと、俺の心情を反映するように大きく燃え上がった。


「焔刃の力を使って問題ないんだよな。まさか反則なんて言わせないぞ」


「別に構いませんわ。本気で来て頂いて問題ありませんことよ。逆にその方がこちらとしても都合が良いですわ!」


 しかしまずは、敵を知らねば百戦危うからず。腹に力を籠めるようにして、いつもの魔法を唱えようと意識を巡らせる。女神様、タリカのことを教えてくれ


情報処理(スフェア・バイト)


 焔刃の銘が静かに光り、女神様の言葉が意識に流れ込んでくる。


【タリカ・リーベルナック:王国騎士団一番隊副隊長でもあり、魔導協会所属α級魔導師も兼ねています。炎の魔導を得意とするようですよ。

 レベルは42。なかなかの強さを秘めています。性格に多大なる難あり。わたしはこの手の者は嫌いです! 魔導協会マスターとの繋がりもあるので注意なさい】


 不敵な笑みを口元に浮かべるタリカ・リーベルナック。

 俺はこんな時の為にと考えていた、新しい攻撃方法を試したくてうずうずしていた。



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