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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 1章 王都アイゼルンに向かって

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東門

 俺たちは見晴らしの丘を下りると、そのまま東門へと足を進める。さすがに王都のすぐ近くということもあり、かなりの旅人や商隊、魔導師たちとすれ違う。特に獣人たちが多いような気がして、隣に座るベルガを仰ぎ見てしまう。


「東門近くには『獣人街』と呼ばれる区画があるのだ。そこはダーザルヒルムからの移民が多い地区。だから東門から入れば、自ずと多くの獣人達を目にすることになるのだ」


 ベルガは王国の獣人隊長ということもあってか、すれ違う人たちや兵士たちから手を振られたり、挨拶をされたりすることが多い。彼も慣れたものなのだろう。

 しかし横で見ているとよく分かるのだが、どこか表情が硬く眉毛の間の皺も深い。やはり騎士団本部での報告の件を気にしているのは間違いない。


「ベルガ。このまま俺は東門をくぐっていいのか? 確か王都に初めて入る際には入都検査があるって言っていたよな」


「おお、そうだった。すっかり自分の想いに耽ってしまって、トラジの入都検査の件を失念していた。すまんな」


 やはりそうか。苦労性のベルガらしいな。

 しっかりとした石畳の街道沿いに、小さな店や屋台が並んでいる。周囲を行き交う人たちも東門を目指して進んでいるので、自分たちの山羊蹄車(カーフ)も周りに合わせて速度を落として進行中だ。俺はおのぼりさんよろしく、キョロキョロと荷台から顔を覗かせていた。エレノールのうんざりした顔は見ないことにする。


「へい相棒。ちょっと腹が減らねぇか。少しくらい腹ごしらえしていこうぜ」


 グリューンがとても魅力的な提案をしてくれているが、フィリナとエレノール、更にはミンミにまで首を横に振られる始末だ。


「トラジ。先に入都検査済ませちゃいなよ。グリューンも冒険者ギルドの周りにも美味しいお店はいっぱいあるから、がっつかないの」


 いつも生魚をかぶりつくように食べているエルフ娘には言われたくないなぁ。

 それでも美味しいお店というワードに期待を膨らませる。

 東門の前に広がる広大なナドゥ川の支流。それを渡すようにして大きな橋が架かっている。フィリナ曰く『冒険者橋』と呼ばれているとのことで、その橋の手前に石造りの堅牢な建物が建っているのが見えた。


「ベルガ、一旦この車を預けて降りよう。わたしたちだけだったら東門を通過できるけど、トラジは詰所で止められてしまうわ」


 その瞬間にエレノールが街道に飛び降りる。ミンミが嬉しそうにカバンから出て彼女の肩によじ登った。


「エレノール! ずるいぞ、お前先に行く気だろ」

「ごめんトラジ! 先にギルドに行ってお酒飲んで待っているから」


 颯爽とウィンクを返すと、飛ぶような勢いで東門に駆けていくエレノール。門の前の兵士たちに指輪のようなものを見せると問題がなかったようで、あっという間に人波に紛れて見えなくなってしまった。

 ベルガが呆けている俺の頭を上から押さえつけるように手を置いた。


「全く、エレノールもしょうがないな。あ奴を見ていると、エルフと言うのは自由奔放が常だと実感するわ」


 エレノールだけの印象かと思っていたら、エルフ全体がアレなのか?

 確かに一番隊のタリカってエルフの魔導師もかなり自由な振る舞い……というか自分勝手な印象だったことを思い出す。

 既に先に行って詰所の列に並んでくれているフィリナのところに走っていく。

 改めて前を見てみると人、人、人の長い列に俺は肩を落とす。グリューンも何か言いたげに唸るだけ。


「そんな顔をしないでトラジ。今日はまだそれほどは多くないかな……それでも1時間くらいは掛かると思うわ。ベルガ、一応聞くけど貴方も先に行かないでいいの?」


 ベルガはその言葉に一瞬躊躇し、伸びた白いあごひげをポリポリと軽く掻くような仕草をしながら白い歯を覗かせる。


「いいのかフィリナ。そのう……騎士団にはあとで顔を出せばよいであろう。先にワシは竜汗の湯に浸かって一杯やりたいのだ」


 右手を口の前に持っていき、酒をあおるような仕草。

 フィリナがため息をつく。


「なんだ、その竜汗の湯って。まさか風呂があるのか?」

「そうだな。星流人は知らないのは当然だな。トラジ、フィリナ。すまぬ。先に行っているぞ」


 そう言って済まなそうに頭を掻くベルガ。

 おっさんがそんな表情をしてもかわいくないわ。

 そのまま詰所の列を離れると、どこか嬉しそうに東門に向かっていく。兵士たちから、「ベルガ三番隊隊長殿! お戻りになられたのですか!」「ザイール・ファルナート! ご無事でなによりです」と持っている剣をかざし敬礼されている。

 今でも時々信じられないのだけど、あの白い獣人のおっさんは騎士団隊長なんだよな。どうしても俺には、酒好きのただの白毛玉おっさんにしか見えなくなってしまっている。


「相棒! さっき言っていたのって温泉じゃないのか? オイラも入りたいぜ」


 風呂と聞いて急に饒舌になってきているグリューンも王都への期待に胸を膨らませているようだ。

 その時だった。

 長い列に並んでいた俺たちのところに、白いロングドレスの上に薄手の黒いロングコートを羽織った綺麗な女性が近づいてきていた。胸元にはシャウザ・ニークの神官を示す紋章が縫い付けてある。

 茶色の瞳にくっきりとした二重。形のよい唇に、さばさばとしたショートヘアの黒髪。


「フィリナ姉さん! 会えてよかった……心配したんだからね!」



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