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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2部【王都 前編】 1章 王都アイゼルンに向かって

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報酬

 ナドゥ川の川幅が少しずつ広くなり、その周辺に点在する小さな宿場に泊りながら王都への旅路を進める。

 面白いのはラベルク村ではあまり見られない様々な種族に出会うことだった。基本的にファルナート王国はフィーム族が多い国。しかしどうしてどうして! 街道沿いですれ違う熊やウサギ、虎といった獣人達の商隊や、髭を生やしたずんぐりむっくりの低身長のドワーフたち。エルフと思わしき冒険者のコンビ、翼を背中に生やした険しい顔つきをした種族、岩石のような固い皮膚を持つ大柄な種族が通りかかったりと見ていて全く飽きない。


「羽の生えた種族はハーピィ族。固い皮膚を持っているのはトロール族よ。六陸共和国の中の住民たちね」


「ちょっとトラジ! 星流人だから仕方ないのは分かるんだけど、おのぼりさんそのままの表情だとこっちが恥ずかしいからさ。少しは自重しなさい!」


 フィリナの丁寧な説明を聞きながら、エレノールはその横で尖った耳をちょっと下げ気味に嫌そうな顔をしている。


「しょうがないじゃないか。異世界感たっぷりで、それを楽しまないのは無理があるってもんだ」


 ベルガが大笑いしている。その時キャビンの中でガチャガチャと何か固い物が箱の中で跳ねるような音が聞こえて、俺ははたとその存在を思い出した。


「そうだよ。村長さんから貰った報酬のこと、すっかり忘れていたよ!」


 そういえばそうね、と言いながらフィリナがキャビンの奥に転がっていた木箱を持ち、抱えるようにして座り直した。ベルガが山羊の手綱を引き、街道の端に停車する。


「それでフィリナ。結局どのくらい入っていたのよ!」


 いかにも打算的なエレノールの視線だ。興味津々とばかりに木箱が開けられるのを待っているのは、とても神秘的な種族エルフとは思えない。


「えっと……すごい! 全部で3万ガルはあると思うわ。確かに今回は大変な戦いだったけど少し貰い過ぎなような気がする」


「3万ガル!! なかなか入っていたわね……いいじゃない」


 エレノールが腰を浮かせる。完全に目の中が木箱に入っていた2枚の金貨に魅入られているような気がする。

 そうか、3万ガルか! 3万……ガル?


「へい、相棒! お前エリュハルトの貨幣価値分からないだろう」


 グリューンにすぐさま突っ込まれて、ぐうの音も出ない。

 そうなんだよ。そういう説明って全く受けていないからさ。


「星流人という存在はある意味大変だな、同情するぞ……フィリナ頼む。うまくトラジに説明してやれ。このまま王都に入ったら大変なことをしでかしかねん」


 ベルガがため息をつくような声を出した。

 フィリナは「もう慣れたものなんだけど」と、にこやかにベルガに返している。


「エリュハルト、特にファルナート王国での貨幣は通常『ガル』という単位が使われるの。もちろん他国に行くと独自通貨も存在するのだけれども……」


 フィリナが木箱に入っているくすんだ赤色の丸い貨幣を見せながら、説明を始める。


「基本的にはこの銅貨がわたしたちの日常で使う貨幣ね。でもそれだと不便な時も多いからちょっとした買い物に使うのは『鉄貨』を使うわ。鉄貨10枚で銅貨1枚分の価値ね」


 鉄貨に銅貨があるのか。10円硬貨とか100円玉とかそんな感覚なのかな。それに木箱の中には金貨が2枚入っているのは確認している。


「銅貨100枚で銀貨1枚の価値となるわ。そしてこっちに入っている金貨。これは銀貨100枚分の価値になるの」


 ふむふむ、つまりだ。

 銅貨は普段使いの貨幣ということだな。それ以上の銀貨、更に金貨となると貨幣価値がぐっと上がる計算。

 金貨1枚が銀貨百枚。

 そして銅貨だと金貨1枚で一万枚も必要な訳か!


「金貨での取引は一般的な庶民の感覚ではあまり見かけないの。Bランク以上の高額クエストとか、貴族から持ち込まれた難解なクエストを引き受けない限りは報酬としては不釣り合いなものね」


「そうなのか! その金貨が2枚も入っているって……ラベルク村の皆かなり無理をしていたんじゃないか!」


「たぶんそう、だと思う。魔王軍を退けたから払い過ぎとは言えないのかもしれないけど。あぁ……こんなことなら村を出る前に一度確かめれば良かったわ。失敗した」


 済まなそうに頭を抱える真面目なフィリナ。

 ベルガも白い髭を気まずそうに撫でながら、聖なる山の方向に目を馳せる。


「貰っちゃったものはしょうがないじゃない! ここはトラジが有効利用していつかラベルク村に返すという方向性でいくしかないわね」


「言っていることは正しいんだけどさ、エレノールが言うとどうしても別の解釈が……」


「何よトラジ! 別の解釈って!」


 金貨から目を離さない、どこか俗物的なエレノールに食って掛かられてもなぁ。


「トラジにわかりやすい例えを言うと……パン1個がだいたい2ガル程度。ギルドでの麦酒がだいたい5ガル。庶民向けの宿の1泊の値段が80ガルくらいかな」


 う~ん。だんだんと分かりづらくなってきたぞ。頭の中でガルを円の単位に直して換算しようとしているからなんだけど。

 1ガルが100円くらいの感覚でいいのか?

 パン1個が200円くらい? 麦酒が500円、安宿代が8000円となる。

 それぐらいで考えると何となく合ってくるような気がするんだが。


「こりゃあ駄目ね。トラジ、頭がショートしそうになっているわね」


 面白そうにエレノールが唇の端を上げるようにようにして、どこか上から目線で見つめてきている。


「ひひひ。相棒は習うより慣れろ派だからな。王都で使ううちになんとかなるだろうさ」


 なんだか楽観的なグリューンに、肯定するように頷くベルガ。


「トラジは危なっかしいの! 王都に入ってもあたしやベルガ、フィリナとなるべく一緒に行動すること! これは鉄則ね」


 癖のある金色の髪がナドゥ川からの風に吹かれて、綺麗な曲線を描いていた。



今回は貨幣形態について触れていますが、難しいことは考えずに……なんかこのくらいなんだな、という感覚で読んでくれると有難いです。まさか円にするわけにもいかないので、雰囲気だけでも伝わってくれればと思っています。

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